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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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66話 魔法の実演会

 リサさんが僕の作った土の塔に向かって右手を突き出す。



「まず、上の方に目くらましの魔法。いくよ」



 リサさんの詠唱によって、塔の上の部分に黒い靄が現れる。



「これが目くらましの魔法。次は下の方を見てて」



 そして今度は土を溶かす魔法だ。塔がいきなり傾き倒れそうになる。リサさんは魔法を止めると、倒れかけの塔がその場に留まる。



「これが土を液化して、その後元の土に戻した魔法。私はダンジョンで主にこの2つを使っている」



 皆が大きな拍手をした。室内にいた前衛の人たちも、面白がって外に出てきた。



「次はヒナノでいい?グラン、悪いけど立て直してくれる」



 僕が塔を立て直すと、ヒナノさんが塔に向かって杖を突きだす。



「私は、火の玉、水の玉、風の剣をお見せします」



 ヒナノさんの杖から火の玉が打ち出され、塔の上の方を砕く。次に水の玉が打ち出され、さらに塔の上の部分を砕く。最後に杖を振り下ろし、風の剣を飛ばし、塔を斜め切りした。風の剣は近距離なら有効そうだ。僕もやってみよう。


 またまた、大きな拍手が起こる。



「チャミもせっかくだから、何か皆に見せてあげたら?」


「はい、私も空気を使ったものをお見せします」



 僕が塔を立て直して、チャミさんが塔に向かって右手を突き出す。



「いきます」



 チャミさんの右手から、風の玉?が打ち出される。塔の上の半分が吹き飛ばされる。


 派手な壊れ方で、皆が大喜びだ。



「次はグラン、糸でいい。皆さん、このグランまでの4人が魔法士としてクラン連合に参加します。それとグランのは危険が少ないので、盾を持った前衛の人が受けてみません?」



 すると少々生意気そうな若い人が出てきた。今回の参加メンバーではないようだ。



「俺が受けましょう。クラン連合に参加するお強い魔法士さんのお手並み拝見だ」


「グラン、遠慮しないでお相手なさい」



 ううっ、リサさんあおるあおる。



「では、行きます」



 僕は盾をめがけて土の糸を飛ばす。ガツンと音がして盾に弾き飛ばされる。



「上級の魔法士様でも、こんなものですか?」



 それを聞いたリサさんが、カチンときた。



「グラン、熱湯。熱湯をかけて目をさましてあげなさい」


「でも……本当にごめんなさい」



 僕は深々と頭を下げたあと、魔法の雲を出して少々熱めのお湯を降らせる。もちろん若い人は熱い熱いと転げまわる。



「ヒナノ、熱いようだからお水をかけてあげたら」


「了解です」



 ヒナノさんも悪乗りして、水の玉を若い人にぶつけた。若い人は転がって動かなくなった。そしてヒナノさん決め台詞!



「あら、上級の剣士様でも、こんなものですか?」



 この言葉に大歓声があがる。魔法士は後衛だから、剣士から格下にみられているのかな?それにしてもヒナノさんも怖い女性だったのね。


 念のため、チャミさんが回復魔法をかけて、仲間に担がれて奥に運ばれていった。僕は続きをするため、塔をたてた。


 その後は、数人の魔法士が魔法を披露してくれたけど、大体の人が空気を使う魔法だった。あるものはすべて使うというスタイルの僕やリサさんが異端な魔法使いだったと知りました。


 皆の魔法のお披露目が終わると、リサさんがセルスさんの側へ行ってひそひそ話し。セルスさんは嫌な顔をしたけど、渋々了承。リサさんが皆の前に戻ってきた。



「セルシスのリーダーのセルスさんさんが、皆さんの魔法に大変感銘を受け、特別に秘蔵のワインを3本提供してくれました。あなた、あなた、そしてあなた。前へ出てきて。この3人はきっと毎日一生懸命訓練を続けている人です。魔法を見れば分かります。だから、きっと近いうちにクラン連合のダンジョン攻略にも参加してくれます。激励の気持ちを込めて、セルスさん秘蔵の高級ワインをプレゼントします。皆さん、拍手拍手」



 大盛り上がりで無事に魔法のお披露目会は終了した。だけど肝心の支援魔法の話しがまったくできてない。仕方なく明日のランチを皆でリイサさんの店で食べながら話すこととなった。この会やる必要あったのかな?




 その後は僕とアスカも会場に戻り、のんびり料理とお酒を堪能。お料理を楽しみながら時間を過ごしていると、僕たちが待ちに待っていたデザートが登場。デザートもカラフルで見栄えもよく、とてもしゃれていておいしそうだった。おまけに周りは剣士様ばかり。お酒は飲んでも甘いものは食べない人がほとんどです。女性陣と僕はデザート食べ放題状態で、とても幸せな時間を過ごせました。大満足なパーティーでした。


 パーティーの締めの言葉は、LHのランゼンさん。



「今までのクランは張り合うことがあっても、協力することはあまりなかった。でも、今回の連合は違う。力を合わせたからこそ、より地下へ進めると思う。そして協力するメリットの大きさを知ることになると思う。皆で力を出し合って、行けるところまで進もう!」


「おう!」



 ランゼンさんは父上とセルスさんも壇上によび、3人でがっしりと握手した。いいパーティーだった。




 翌朝はぐっすり眠れて気持ちのいい朝だった。かまどの火とお風呂のお湯入れを済ませて、朝の訓練に向かう。


 柔軟体操と素振りから訓練を始める。素振りを終えると、僕は昨日見せられた空気の塊を投げる練習をしてみた。もともと風を吹かせることはできていたので、それほど難しくはない。


 素振りが終わったアスカと立ち合いを始める。今朝も僕は剣士スタイル。糸の攻撃だけど、この攻撃に風も混ぜてみた。風を受けてバランスが崩せるのかどうか。アスカはやりずらそうだった。それでも連続突きを仕掛けてくる。僕は盾で防ぐと共に、盾からも風の攻撃を加えた。これはアスカとの距離も近いからか、アスカを下がらせる効果があった。


 立ち合いを終えてお風呂に入り、朝食をいただく。最近は自分で料理をしていない。少し寂しい。僕の料理をおいしいと言って、アスカが嬉しそうに微笑んでくれていたからな。



「アスカ、今日はガデンさんの店に寄ってから、リイサさんの店に行く予定なんだ。今日も付き合ってくれる?」


「もちろんです。旦那様の行かれるところには、常にご一緒しますよ」


「ありがとう、アスカ。それじゃ早速、ガデンさんの店に行くよ」



 いつものようにアスカの手を握り、僕とアスカは屋敷の外に出て行くのでした。


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