64話 シャワーの実演
クラン連合の説明会で、セルシスのセルスさんが壇上にあがる。
「この後、この場で壮行会の立食パーティーを開催する。グランの用意したテーブルとイス、食器セットはそのまま置いておくので自由に見てみてくれ。また、庭でグランがシャワー?の実演をするので、興味がある者は見に行ってくれ。では、セルシスのメンバーはパーティーの支度を頼む。以上だ」
僕とアスカが庭に向かうと、リサさんも一緒に出てきてくれた。僕はセルシスの人に、ここでお湯を出しますと断って魔法で雲を出す。そしてお湯を降らせた。
周りの人がオオッと驚きの声があがる。リサさんが雨の中に手を当てる。
「皆さんもどうぞ、触ってみてください。実際には女性は1人が入れる試着室のような場所でシャワーを浴びてもらいます。男性は数人で入れる天幕の中でシャワーを浴びてもらいます」
皆が次々と手を出して、さらに驚きが広がる。魔法士の人はどうやって?という顔をしていた。パーティーの席で質問攻めにされそうだ。
手を出す人がいなくなったところで、僕は魔法を切った。リサさんが皆に声をかける。
「では、皆さんパーティー会場へ戻りましょう」
皆がぞろぞろ拠点の中に戻っていった。アスカが僕の隣に戻ってくる。
「旦那様、お疲れ様でした。とても立派なご説明でした」
「アスカもお手伝いをありがとう。のどが渇いたね。パーティーへ行こう」
僕とアスカは並んで拠点へ戻る。残念だけど、手をつなぐのは遠慮した。
パーティー会場に戻ると、もうテーブルが真ん中に集められ、テーブルクロスがかけられていた。イスは壁際に並べられて、すっかり立食パーティーの形が整っていた。
僕とアスカで用意したテーブルとイスにも、人が興味を持って見にきていた。テーブルに名前を書き終えた紙とペンも置かれていていた。僕はペンと紙を回収。名前の書き漏れとダブりはないことを確認した。すると僕のところに女性がきた。
「グランさん、初めまして。LHのチャミと申します。お話し伺ってよろしいですか?」
「はい、何なりと聞いてください」
「このテーブルとイスを持って、実際にダンジョンへ行かれたことがありますか?」
「はい、今回のクラン連合の締結前に、試験的にダンジョンへ行ってきました」
「ダンジョンでお料理もされたのですよね?」
「はい、料理をしていました。ちょっと待ってくださいね」
僕はリュックからかまどを2つと、寸胴鍋とフライパンも出して、皆に見てもらえるように置いた。
「チャミさん、お料理のお手伝いに志願してくれていましたね。これが料理のときに使う道具です。食器セットの大きな皿にメインの料理とパンを置きます。スープは大きい方のカップに注ぎます」
「ダンジョンでもこれをしていかないといけませんよね。私もずっとどうするべきかを考えていました。グランさんが実現してくれて嬉しいです」
「私もまだ試行錯誤なので、チャミさんとも情報共有して改善していきたいです」
「はい、今後もクラン連合ににかかわらず、ぜひお付き合いしてください。アスカさんもぜひ、仲良くしてください」
「こちらこそ、女性同士、仲良くしてください」
チャミさんは会釈して離れていった。するとそれを待っていたように、3人の女性が近付いてきた。
「セルシスのヒナノです。お話しを聞かせていただいていいですか?」
「はい、何なりとどうぞ」
「ありがとうございます。こちらは、前衛のアサとシオです。私は魔法士です」
「私はグランです。魔法士です。隣は妻のアスカです。ご存じですよね」
「はい、アスカさんを知らない冒険者はいませんから。それでお聞きしたかったのが、テントで簡易ベッドで寝れるってお話しでしたね」
「はい、ちょっと待ってください」
僕はリュックから組み立て式の簡易ベッドを出して、組み立てて見せた。毛布も出した。
「テントはまだ用意していないのですが、ダンジョンへ行くまでには用意する予定です」
皆さんは簡易ベッドに手をついたり、座ってみたりして確認していた。
「ダンジョンの中で、こんなに快適に眠っていいんでしょうか?」
「私もアスカもダンジョン内でこれで眠っています。それに心配はいらないですよ。王国内最強の人たちがこれだけ揃っているのです。これほど安全に眠れる場所はありません」
「確かにそのとおりです。私が心配し過ぎでした。支援魔法についてもお話ししたいと考えています。後ほど、魔法士が集まってお話しさせてください」
「はい、よろしくお願いします」
するとアスカも挨拶した。
「アサさんとシオさんも前衛同士、仲良くしてください」
「名前を憶えていただいて光栄です。こちらこそぜひ仲良くさせてください」
3人で手を取り合って握手して、解散となった。
「野営に興味があるのか、アスカと挨拶したかったのか分からないね。でも、すべての女性と挨拶できて安心できたでしょ」
「はい、でも皆さん有名な人なので、お名前は知っていました。女性にはそうとう快適なダンジョン攻略となるので、興味があったのだと思いますよ」
セルスさんにグラスを持つように言われて、皆がテーブルに置かれたグラスに手を出す。僕とアスカもグラスを手にする。シャンパン?超豪華!
「3つのクランの連合を提案してくれた、魁のグリムに感謝する。そして、参加に同意し協力してくれたLHのランゼンに感謝する。俺は今回のクラン連合が大成功に終わり、今後もこの連合で攻略をすることが定例になると信じている。皆とともにダンジョンへ行けることを楽しみにしている。乾杯!」
「乾杯!」
皆はグラスをかかげるだけだけど、僕とアスカは小さな声で乾杯と言って、小さくカチンとグラスを合わせた。そしてシャンパンを飲み干す。うーん、おいしい。テンションあがります!




