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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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63話 クラン連合説明会

 父上がダンジョン攻略について説明を始めた。



「まず、24階層までは1度も戦闘をすることはない。だから皆は素早く移動することだけを考えてくれ。24階層までの戦闘は俺とアスカとグランで担当する。先陣にランゼンとガンズ。後陣にセルスとマルスがつく。残りの前衛は後衛を護衛する陣形で移動してくれ。最下層まで移動はこの陣形を変えずにいく。では、次に戦闘について説明する」



 父上は近くにあった棒を持ち、棒で指しながら説明した。魔獣の前面に丸が3つ。背後に3つの丸が書かれている。



「ボスの前面中央を俺とアスカ。右手をセルスとマルス。左手をランゼンとガンズで担当する。この3人は敵の前面に立ち攻撃を防ぐことを最優先にする。ただ、隙を見つければ攻撃もする。次に背面。メンバーの組み合わせはクランで決めてくれ。背面のチームはとにかく攻撃だ。前面のチームが常に魔獣の意識を引き付けるから、とにかく攻撃を頼む。そして注意点。後衛は前衛を回復しない。前衛は自分たちで回復してくれ。例えば、俺が攻撃を防いでいる間にアスカがポーションで回復する。回復が終わったアスカが攻撃を防ぎ、俺がポーションで回復する。どのチームもこれが回復方法だ」



 すると1人の剣士が手を上げた。



「ポーションでは回復が追い付かないのではないですか?」


「心配いらん。皆に渡すポーションは最上級のポーションで、いくつ使ってもらってもかまわん。グラン、ポーションは何本持って行くんだ」


「はい、予定では全部で4500本です」



 一同が驚きの声を上げた。当たり前だ。100ゴル以上かかる計算になる。


 別の剣士も手を上げた。



「武器や装備のスペアは自分で持って行くのですか?」


「すまない、そこが今回のクラン連合の最大の弱点だ。武器と装備は自分で管理を頼む。小さなものはこちらでいくらでも持って行くことは可能だが、剣と装備は各自で頼む」



 父上が辺りを見回す。質問がないようだ。



「これから野営の説明に入る。野営はがらりと変わるので、特に注意して聞いてくれ。それと、野営の説明が終わったところで質問を受け付ける。何なりと聞いてくれ。では、グラン。始めてくれ」



 僕は緊張しつつも壇上に上がった。



「では、野営についての説明を始めます。アスカ、献立表を皆さんに配って」



 アスカが前列に座っている人にまとめて手渡して、後ろの人に渡してもらった。



「この献立表が、ダンジョンで提供される食事です。もちろん温かいものが提供されます。水は必要な分だけ用意しますので、好きなだけ飲んでください。無くなれば私のところへ取りに来てください。ポーションも必要な分を取りにきてください。戦闘終了時でも、野営中でもかまいません。献立表の食事と水、ポーションの配給を1人1日10シルで提供します。これは申し訳ないですが、今回のクラン連合の参加費と考えてください」



 ここでまた、一同がざわつく。当たり前です。格安ですから。



「では続いて、女性メンバーですが、基本はテントで簡易ベッドで寝てもらいます。そして、女性は1日1回お湯のシャワーを提供しますので、ご希望の方は申し出てください。ただ、時間はこちらで決めさせていただきます。男性メンバーは、希望者にはテントを用意しますし、希望者は簡易ベッドも用意します。ただ、男性メンバーは自己負担になる可能性があります。それと男性メンバーもシャワーを提供しますが、男性は天幕で囲まれた中に数人で入ってもらう形になります。ご了承ください」



 僕はひと呼吸ついてから、話しを続ける。



「次に、持って行って欲しいものの注文を受け付けます。例えば晩酌をしたいので、酒を何本とか、酒のおつまみに何をいくつとか。お菓子やデザート、ジュースなどでもかまいません。市場価格よりは割り引いて提供できると思いますので、何なりとご注文ください。注文された分は私が責任をもってダンジョンに持ち込み、ダンジョンで希望されたときにお渡しします。もう時間もないので、明日の午前中までの注文受付とさせてください。私が各クランに注文を取りに伺います」



 皆さんは何のことだ理解ができていないみたい。質疑応答のときに答えることにしよう。



「最後に、これはお願いです。かまどで料理を温めてお皿に盛ったり、スープを温めてよそったりしてくれる方を募集します。ダンジョン内では料理はすべて鍋に入れられています。火は携帯型のかまどと固形燃料を使います。一番面倒な作業でも、フライパンで軽く温める程度です。ぜひ、ご協力ください」



 するとリサさんが真っ先に手を上げて志願してくれた。それを見て、他の女性3人が手を上げてくれた。すると男性も2人手を上げてくれた。



「6名の方のご協力感謝します。ダンジョンで私から何かお礼の品をプレゼントします。最後に皆さんにダンジョンで使う食器一式を見ていただき、食器に刻印する名前を書いていただきます。不明な点があれば聞いてください。野営からは以上です」



 僕は壇上から降りて、LHクランの人に食器のサンプルと紙とペンを渡し、刻印を見せて自分の名前を書いてもらった。後ろの人に回してもらうようにお願いして、壇上脇にもどる。


 父上が壇上に戻り、最後の説明と質疑応答を始める。



「報酬についてたが、すべての利益を参加人数に3を加えた数で割った金額を報酬にする。この3はクランの経費だ。ダンジョンへは年明け早々に出発する予定だ。俺からは以上になる。質問があるものは何なりと聞いてくれ」



 食器を見た人が手をあげた。



「食器を見せてもらったのが、ダンジョンでこれを使って食事ができるのですか?」



 父上が僕を見て回答するよう促す。僕はアスカと組み立て式のテーブルとイスを組み立てて見せることにした。



「野営のときは、このイスを人数分と数人に1つテーブルを提供します。これに座って食事をするなり、晩酌をするなり、のんびりするなりしてください。休養日以外は晩酌は夜だけでお願いします(笑)」



 皆さんは立ち上がったり、のぞき込んだりしていた。今度は魔法士と思われる女性が手をあげた。



「シャワーを浴びることができると説明がありましたが、どういう意味でしょうか?」



 また、父上が僕を見る。



「この後、庭で実際にお見せしますので、興味がある方は庭へ見にきてください」



 その後は質問は出なかった。



「では、説明会は以上だ。皆で世界最下層を目指そう。そして国王陛下からもギルドからも、名誉も金もたっぷりいただくことにしよう。俺からは以上だ。セルス、この後のことは任せる」


「了解した」



 説明会は無事に終了。ホッとしました。


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