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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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54話 荷物の受け取り

 ボタンさんがリストの先頭に書かれていた小麦粉の棚へ案内してくれた。



「リュックにはどうやっていれるのですか?」



 僕はリュックを降ろして、リュックの口を開く。



「この口を通れば、入れることができます」


「この口を通すとなると、中袋がいいですね。そうなると35袋です」


「ボタンさん、このリュックに物を入れられるのは、私だけなのです。だから、リュックに入れるところは私がやります」


「はい、それなら私はリュックの横に袋を持ってきます。奥様は数の確認をお願いします」



 こうして受け取りが始まった。ボタンさんは袋をいくつも担いできたけど、僕は1つずつリュックにいれることになる。ただ、リュックの口に一部を入れてしまえば、手を離して落としてしまっても問題はない。リュックへの詰め込みは、思ったほど時間がかからなかった。


 作業を続けて、リストの上から3分の1ほど受け取ったところで、大きな鐘の音がなった。



「グランさん、奥様、お昼休憩の時間です。食事をしに出られますよね、少し待っていただいてもいいですか」


「はい、かまいませんよ。ボタンさんもご一緒してくれるのですか?」


「はい、食事に行く途中だと思うので、宿の場所もお伝えしようと思いまして」


「分かりました。倉庫の入り口辺りでお待ちしています」



 僕とアスカは倉庫の出入り口に向かって歩いた。ボタンさんは小走りで別の建物へ向かった。



「旦那様、お疲れではないですか?」


「僕も最初はどうなるかと思ったけど、思ったよりも楽だった。どうしても疲れたら、魔法の手を使うから心配いらないよ」



 僕とアスカは近くにあったベンチに座る。リュックからグラス2つとリンゴのジュースのビンを取り出しグラスに注いだ。ジュースを飲んで一息つくと、こちらに向かってくるボタンさんの姿が見えた。僕はグラスとビンをリュックに片付けてリュックを背負う。



「お待たせしました。行きましょう」



 ボタンさんが先導してくれて街を歩く。この辺は倉庫ばかりで敷地がとにかく広い。ただ、倉庫街を抜けると、広い敷地の中にきれいな建物が建てられていた。



「この辺が宿屋の一画です。特にここの一画は高級な宿屋になります。お2人は今夜こちらに泊まっていただきます」


「もう、部屋を予約してくれたのですか?」


「いいえ、商会で借りている部屋があるので、今日はそちらに泊まっていただきます」


「ボタンさん、もしかして私たちはVIP待遇ですか?」


「はい、VIP待遇です。お貴族様の下のランクで庶民では最上位ですよ。あれ、これってお客様にお話ししてよかったかな?」


「あはは、ここだけの話しにしましょう」



 宿屋街の隣の敷地にやはり広い敷地の中に、そこそこの店構えの店が立ち並ぶ。



「ここがレストラン街です。この街は肉体労働者が多いので、お肉が自慢の街なんです。お昼もお肉を食べに行きます」



 ボタンさんは迷うことなく、1軒のレストランに入っていった。ボタンさんの姿を見かけた店員さんが、ボタンさんとひそひそ話して、奥の部屋へ案内された。僕たちは個室に案内されたのだった。



「ボタンさん、ここもVIP待遇のたまものですね」


「はい、おかげで私も商会の経費で豪華なランチを食べることができます!」


「では、ボタンさんのおすすめを注文してください。アスカもそれでいいかな?」


「はい、ボタンさんにお任せします」



 ボタンさんは店員さんを呼んで注文をしてくれた。しばらく待つと、大きなお皿にいろいろなお肉が乗ったランチが出てきた。パンとスープも大きくて驚いた。皆でさっそく食べ始める。



「このペースだと、夕方までには受け取りが終わりそうですね」


「お2人は、明日も受け取り作業があるのでしたね」


「はい、ガデンさんのお店の倉庫から鍋を大量に受け取ります」


「ガデンさんの倉庫でしたか、今いる倉庫の隣の倉庫です。今日時間があれば、私がご案内しましょう」


「はい、ぜひお願いします」



 大量のお肉を食べて僕たちはまた、倉庫に戻って受け取り作業を再開した。僕がどういう荷物が受け取りやすいかを把握したボタンさんは、効率のいい荷物の並べ方をしてくれて、午後の作業はさらに時間がかからなかった。アスカのチェックも完了して、すべての荷物を受け取った確認ができた。僕はボタンさんにお願いされて、書類に受け取り完了のサインをする。



「まだ時間が早いので、ガデンさんの倉庫にも行きませんか?」


「ボタンさんの都合が良ければお願いしたいです」



 僕たちは隣の倉庫まで歩いて行き、倉庫の中へ入った。ボタンさんは辺りを見回し、1人の男性を手招きする。ボタンさんと男性が話しをすると、ボタンさんが僕たちを案内してくれた。



「こちらの鍋を350個で間違いないですね」


「はい、間違いありません」


「鍋とふたは別々でも問題ないですか?」


「はい、問題ないです。鍋は10個くらい重ねて持ってきてもらえますか」


「分かりました。準備をしますので、少々おまちください」



 ボタンさんが鍋を僕の近くに運び始めてくれた。すると、先ほどの男性が戻ってきた。



「ご挨拶が遅れました。この倉庫の担当のガンエと申します。今日はわざわざ荷物を取りに来ていただいてありがとうございました」



 挨拶を終えると仕入れ表を渡された。鍋は数を覚えているので問題はない。



「ボタンさんが鍋の準備をしてくれているようなので、私はリュックに入れて受け取り始めます。ガンエさんとアスカで数の確認をお願いします」



 僕は10個ずつ重ねられた鍋をリュックに入れていく。ガンエさんが最初は不思議そうな顔をしていたけど、その内慣れたようだった。鍋の受け取りもあっさり終わって、ガンエさんの用意してくれた書類にサインをする。ガンエさんにお礼を言って、僕たちは倉庫を後にした。



「ボタンさん、1日お付き合いしてくれてありがとうございました。お礼と言っては何ですが、ビールを飲みに行きませんか?やはりお肉にはビールですから!」


「はい、喜んでお供します。入り口近くで馬を受け取ってお待ちください」


「はい、了解しました」



 今夜はお肉とビールをたっぷり楽しみます!


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