53話 倉庫街へ出発
朝起きてかまどに火をつけて、お風呂にお湯をいれる。そして庭で訓練開始。今朝の訓練は通常メニューで切り上げてお風呂に向かった。厨房の横を通ると、セリエさんが料理を始めていた。
「おはようございます。いい匂いですね。先にお風呂に行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」
僕とアスカはいつものように、湯船に並んでのんびりする。
「セリエさんが朝食の支度をしてくれるから、お風呂がのんびりできて幸せだ」
「今までお疲れ様でした。セリエさんの朝食は何がでてきますかね、楽しみです」
今まではお風呂からあがると、そそくさと厨房に向かったが、今日はのんびり支度をする。アスカの支度が終わるのを待って、2人で食堂へ向かう。セリエさんは僕たちの姿を見かけてから、スープをよそって持ってきてくれた。パンとスープとベーコンエッグ。ボイルした野菜も添えられていた。おいしそうだ。
「セリエさん、調味料は厨房にありましたか?」
「はい、いろいろ揃っていましたよ」
「それは良かった。私はリュックから出してばかりなので、厨房のものは使っていなかったのです」
3人で朝食を食べ始める。僕の料理より少し濃いめの味付けかな?気になるほどではないけど。アスカには馴染みのある味かもしれない。セイラさんと同じ味付けだろうから。
「セリエさん、カルパスの作り方を知らなかったら、私たちがいない間に、セイラさんに教えてもらってください」
「カルパスですか……食べたことはありましたけど、作ったことはありませんでした。姉に聞いて作れるようになっておきます」
「お願いします。セリエさんが生活に慣れたら、たくさん作ってもらうことになると思いますから」
食事を終えた僕とアスカは、ダンジョンへ行くときの装備に着替えた。王都の外は野盗も魔獣も出ることがあるらしいので。
「では、セリエさん、留守をお願いします。困ったことがあれば、父上なりセイラさんなりに相談してください」
「はい、お気をつけていってらっしゃいませ」
僕とアスカは王都の門まで歩いていき、門横で馬を借りる手続きをした。すぐに1人の騎士様が馬を引いてきてくれた。僕とアスカは騎士様にお礼を言って馬を預かった。2人で馬にまたがり、ゆっくり歩かせる。門を通り抜けるとき、守衛さんに会釈して王都を出た。分かれ道で右の方へ進む。こちらの道は初めてだった。
「馬の旅は気持ちがいいね」
「はい、旦那様にお任せしている私は、景色をのんびり楽しむだけなので快適です」
「そんなことないよ。僕もアスカにぴったりくっついていられて幸せだもの」
「旦那様のエッチ!」
馬を歩かせ1時間も経たないうちに、もう倉庫街が見えてきた。大きな建物が多い。僕はポケットから地図を取り出し、アスカに手渡した。地図には門の正門からの道順が書かれているので、まずは正門を目指そう。
のんびり馬を進めていると正門が見えてきた。大きな門と小さな門がある。小さな門と言っても、王都の大きな門と同じくらいの大きさがありそう。ただ、王都と比べると壁はなく塀で囲まれている感じだ。僕は空いている小さい方の門へ行く。一度馬を降りて、守衛さんのところへ向かう。王都民証を確認したのか、すぐに中へどうぞと通してくれた。
馬に再び乗って歩き出す。アスカが指示をくれる。
「旦那様、次の道を右にお願いします」
「了解」
「旦那様、次の道を左にお願いします」
「了解」
「旦那様、ここです」
僕は馬を止めて、倉庫を見る。看板は見えないけど、地図では確かにここだ。僕とアスカは馬を降りて、馬の手綱を握り歩きながら倉庫の敷地に入っていった。すると、中に小さな受付のような小屋があった。僕とアスカはそこへ向かう。
「すみません、王都から来たグランと申します。荷物を引き取りに来ました」
すると小屋からお爺さんが飛び出してきて、すぐに係の者を呼んできますと言って走っていった。お爺さん大丈夫かな?しばらくするとがっちりした体格の女性が僕たちを迎えに来てくれた。
「初めまして、担当させていただきます、ボタンと申します。マイルさんから指示を受けています」
「初めまして、グランと申します。隣にいるのが妻のアスカです」
「アスカです。よろしくお願いします」
「ええと、グランさん。馬車はいつ来ますか?」
「馬車は来ません。私がこのリュックで運びます。このリュックは魔道具で、荷物はいくつでも入るのです」
「ええっ、そんな便利な道具が世の中にあるのですか!相当お高いのでしょうね」
「いいえ、売り物ではないのです。この世でこれ1つしかありません」
「そうでしたか……では、早速倉庫へご案内します」
3人で倉庫へ向かって歩き出す。僕は歩きながらボタンさんに聞いてみた。
「ボタンさん、今日はこの街に泊まりたいのですが、宿はありますか?」
「はい、宿は沢山あります。ですが、お2人には作業者用の宿は無理そうですね。支配人に手配させておきます」
「はい、よろしくお願いします」
そして大きな倉庫の入り口に着いた。中へ入ると巨大な棚に商品がびっしりと詰め込まれていた。ボタンさんはポケットから紙を2枚出し、1枚は僕に渡してくれた。僕が渡した仕入れ表だ。アスカは僕から預かっていた仕入れ表と商品と数が同じなことを確認してくれた。
「では、表の上から順にお渡ししていきます」
ボタンさんが先導してくれて、1品目の目的の棚へ向かった。




