表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/336

19話 歩行訓練開始!

 1階に戻るとスミスさんとはここで別れた。私はグリムさんに車いすを押してもらい自室へ戻った。部屋にはミリンダさんが待っていてくれた。



「奥様ともお話ししたのですが、お洋服を着るか今の服を着るかになるとのことでした」



 それを聞いて、どうしよう?と悩んだが、解決策はすぐに思いついた!



「ミリンダさん、厨房はもう昼食の準備で人がいらっしゃいますよね?」


「はい、掃除や洗濯を終えて、次の大仕事は昼食の準備ですから……」


「ミリンダさん、厨房へ案内をお願いします。それとグリムさん、厨房へ寄った後に庭で歩行訓練をしますので、一緒に来てもらっていいですか?」



 2人揃って了解してくれた。




 厨房は忙しい時間で車いすでは邪魔になると思い、グリムさんにお姫様抱っこをお願いした。厨房へ入ると皆が驚いた顔で見ていたが、近くにいた料理人の女性が声をかけてくれた。



「ご用件はなんでしょう?」


「割烹着をお借りしたいのですが」


「割烹着?……あぁ、以前フィーネ様が使用されたあれですね!」


「はい、それです!」



 女性は奥の部屋へ向かい、しばらくして3着の割烹着を持ってきてくれた。



「お借りしても大丈夫ですか?」


「お使いになるのはフィーネ様だけですから」



 女性は可笑しさを抑えるのに苦労している感じで手渡してくれた。確かに侯爵家のご令嬢が割烹着は可笑しさ満点です!割烹着を手に3人で庭に出た。そしてグリムさんにお姫様抱っこされながらミリンダさんに割烹着を着せてもらい準備完了!


 まず立ち上がることから始めたいので、グリムさんに杖を左手に持たせてもらった。次は魔手。立ち上がることを目的とすると、立った時でも手のひらが地面についているくらい大きい方がいい!可動部分は手首と肘と肩。手首から先はがっちり大地を掴めるように、物語に出てくるドラゴンの足みたいな感じで大丈夫かな?よし、イメージは固まった、詠唱、「ハンド!」


 私の右腕の代わりに、半透明な白い手のようなものが現れる。思ったより太くてがっちりしていたので、割烹着の右袖はビリリと破けてしまった。



「ミリンダさん、ごめんなさい。割烹着破いてしまいました!」


「いえいえ、お気になさらず。必要があればまたお作りしますので」



 割烹着はミリンダさんが作っていたのね(笑)ミリンダさんにお許しを得たので破れるのも気にせず、魔法の右手を動かしてみた。肩の部分を回してみたり、肘や手首を曲げ伸ばししたり、指を開いたり閉じたり……まるで自分の手のように自由に動く。次に右手を地面についてみた。人の手のような強い感じはないけど、やんわりと手をついている感じは伝わってきた。手が大きいので安定感もある。次に左手。こちらはもう何の心配もしていない。杖は抜群の安定感でバランスを取る必要もなく、まっすぐ立たせておきたければ、立たせて微動だにしない。私は何の心配をすることもなく、ゆっくり立ち上がってみた。そしてあっさり立ち上がることができた。でも、この立っているは安定した両手で立って、胴体や足はぶら下がっているような感じでとても立っているとは言えない……


 足にはしっかり感覚はあり、麻痺しているような感じもない。不足しているのは……筋力ですか!自分自身の筋力は鍛えながら徐々に戻していくことになるけど、まずは鍛える!を実現できるようにしないと。足で歩くのは大前提だけど、ふらついたり転びそうになっても転ばない安定感が必要……あれ、今でもできてる?私は足を引きずるように1歩前へ出してみた。だが足首が安定しないとダメみたい。



「グリムさん、申し訳ないのですが、私の両足を揃えて立たっている感じにしてもらえますか」



 グリムさんが両足首の辺りを持って足を揃えてくれた。



「こんな感じで大丈夫ですか?」


「はい、ありがとうございます」



 そして私はその場で軽い屈伸運動のような動きを始めた。これは私にとっては相当つらい運動だった。それでも頑張って伸ばして縮めてを何度か繰り返した。もう全身汗でびっしょり!見かねたミリンダさんが止めに入る。



「アグリさん、少々休憩にしましょう」


「はい」



 返事をすると、今度はグリムさんが側に来る。



「車いすに座りますか?」


「いいえ、立ったままで大丈夫です」



 私は体内の魔力の残りを感じ取るように確認。残量はまだまだたっぷり!左右の手に魔力を供給しているとは思えない燃費の良さ!きっと杖の影響なのでしょう!




 屈伸と休憩を何度か繰り返すと、もう私の足の筋肉は限界。



「グリムさん、車いすに座りたいです」



 グリムさんは車いすを私の真後ろに配置してくれた。



「立つより座る方が難しいですから、焦らずゆっくり座りましょう」



 グリムさんは私がいつよろけても支えられるような体制でいてくれた。私は手の力だけで肘を曲げるように体を下げていき、お尻がイスに触れたところで手の力を抜いた。お尻がすとんと落ちて、着陸完了!という気分です。


 私が車いすに座れてホッとしていると、グリムさんが私の前にひざまずき、片足を両手で包むようにマッサージを始めてくれた。



「騎士学校直伝の筋肉痛予防マッサージです。でも残念ながら明日は筋肉痛になりますね」だそうです(涙)




 この日、屈伸運動とマッサージの繰り返しを何度か行った。本日、最後の屈伸運動を終え、グリムさんのマッサージを受けていると、フィーネさんとクリスさんが学校から帰ってきた。汗だくの私の姿を見て驚くフィーネさん。



「アグリさん、無理は禁物です!ゆっくり回復を心掛けてください」とお叱りを受けた。



 しばらくマッサージを受けながら5人で雑談を続け、マッサージが終わったところで屋敷へ戻った。部屋に戻った後、ミリンダさんが体を拭いてくれて、着替えもさせてくれた。初日にして思ったのは、まだまだ時間がかかりそうということ……(涙)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ