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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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48話 大忙し!

「アスカ、バタバタしていて疲れたかな?これからキツカ様のところへ行こうと思っているけど、その前にどこかで休憩する?」


「私は大丈夫です。旦那様がお疲れなら休憩でもかまいませんよ」


「では、キツカ様のところ行ってしまうね」


「はい、旦那様」




 僕はアスカの手を取ってキツカ様のいる国務院へ向かう。国務院では受付の女性にグランとアスカがキツカ様にお会いしたいと伝えてもらった。受付の女性は僕とアスカがキツカ様の関係者で登録されているのを確認して、応接室に案内してくれた。僕とアスカがソファーに座って待っていると、別の女性がお茶を用意してくれた。


「さすが国務院。良さそうなお茶が出てきたね」


「はい、キツカ様の面会者ということで、豪華なものを出してくれたのですね」



 お茶をご馳走になっていると、キツカ様が応接室に来てくれた。



「2人ともお待たせ。わざわざ訪ねてきてくれたってことは、何か発見があったんだね」


「はい、まずはこれをお渡ししておきます」



 僕はリュックから、赤いスライムの皮と白いスライムの皮をキツカ様に渡した。



「グラン、これはなんだい?ぷよぷよしているけど」


「それはスライムの皮です……私が勝手にそう呼んでいるだけなのですけど」


「グラン、スライムは戦利品は残さないはずだし、そもそもスライムに赤や白はいないよな?」


「はい、アスカに確認しても、ダンジョンで赤や白のスライムは見たことがなかったそうです」


「どうやって見つけた?」


「スライムの魔石に、サンストーンを魔法で投げつけました。たぶんその影響で魔力量が増大し赤や白のスライムに変化したいと考えています」


「魔獣には赤い亜種がいると聞いていたけど、赤の亜種がさらに白になるのか?白い亜種は聞いたことがなかったな。アスカさんはどう?」


「はい、私も白い魔獣は見たことも聞いたこともありません。ただ、赤いスライムに比べると、白いスライムはかなり強かったです」


「それとキツカ様、白いスライムにも、その後も何度かサンストーンを投げましたが、白くなってからは変化がありませんでした」


「そうなるとスライムは青から赤、赤から白に進化したって感じなんだな」


「はい、その通りです。それと、外部記憶装置で調べていたら古代の石板に書かれたいた神話に、聖杯に血をという言葉とサンストーンという言葉が刻まれていました。キツカ様のお役に立てばと思います」


「いろいろ情報をありがとう。このスライムの皮ももらってしまっていいのかな?使い道はともかく貴重品なのは間違いないけど」


「はい、どうぞ受け取ってください。僕たちはダンジョンですぐに手に入れられますから。それと、僕からキツカ様にお願いがあります」


「何だい?私にできることなら何でもするよ」


「国務院の受付番号が6502の石が何かをしりたいです」


「グラン、それも外部記憶装置から見つけた情報かい?受付番号6502って何十年どころか、100年以上昔の受付番号だと思うぞ」


「はい、私のブレスレットの石と同じ石ではないかと思っています」


「了解した。何か分かれば連絡する」


「はい、よろしくお願いします。今日はお時間をいただき、ありがとうございました」


「こちらこそ、貴重な情報をありがとう」




 キツカ様に見送られ国務院を出る。もうそろそろ夕方になりそうな時間だった。見積りも終わっているだろう。



「アスカ、マイルさんの店に行くよ」


「はい、旦那様」



 僕はいつものようにアスカの手を取って歩き始めた。マイルさんの店も国務院からそれほど離れていない。すぐに着いてしまった。


 お店に入るとマイルさんが待っていてくれた。早速見積書を手渡してくれた。僕は薬草とビンの値段は分からないけど、食材の料金はだいたい分かる。さて、妥当な値段かな?あれ、想像以上に安い。薬草の値段を確認すると、配達してもらった1回目の値段と、僕が取りに行く3回目の値段は驚きの半額だ!



「マイルさん、やはり配送コストは相当かかっているのですね」


「はい、馬車と馬と人。それにほとんどないとはいえ、野盗や魔獣もいない訳ではありませんから」


「なるほど、これからは、大量の品は私が取りに行くことにします。それで、お支払いはどうしましょう。倉庫から荷物を受け取ってからでもいいですか?」


「はい、倉庫から受け取っていただいて、受け取りのサインをしてきてください。お支払いはその後でかまいません。こちらが倉庫の地図です。グランさんの名前を言っていただければ、伝わるようにしておきます」


「倉庫に伺うのは、私の都合でいいですか?2、3日後になると思いますが」


「はい、かまいません」


「いろいろいお世話になりました。これで失礼します」




 さて、いよいよ最後のガデンさんの店。こちらもケインさんが僕たちを待っていてくれた。ケインさんはすぐに見積書を渡してくれた。これも僕には相場が分からないからお願いするしかない。



「ケインさん、名前の刻印はどのくらいの日数をみておけばいいですか?」


「余裕を持って1週間にさせてください」


「分かりました。それとケインさん、つかぬ事を伺いますが、寸胴鍋もお願いできたりします?」


「ええ、鍋も扱っていますよ」



 僕はリュックから鍋を取り出して見せた。



「これと同じものが欲しいです」


「はい、ご家庭用の標準的な寸胴鍋なので取り扱っています。いくつご入用ですか?」


「はい、余裕をみて320個です」


「ええっ、320個ですか……さすがに倉庫からの取り寄せになります」


「ケインさん、お店の倉庫は、マイルさんの店の倉庫と近いですか?」


「はい、共同で所有している敷地内の倉庫ですから、お隣のようなものです」


「なら、倉庫に取りに行くので、値段は安くしてください」


「ええ、もちろんです。お見積書すぐに書くのでお待ちください」



 僕とアスカは店内の品を眺めながら時間を潰していると、本当にすぐにケインさんが見積書を書いてきてくれた。値段を見ると驚きの6割引き!



「マイルさんの倉庫には、2、3日後に行くことになっているので、その翌日になりますか」


「はい、当店は商品が鍋ですから、いつでも構いません。倉庫で受け取りのサインだけお願いします」


「分かりました。いろいろご対応をありがとうございました。刻印する名前ははっきりしたら持ってきます」



 こうしてハードな1日がようやく終わった。



「アスカ、ごめん。今日の晩御飯はリイサさんの店でいいかな?」


「はい、これから帰って支度は無理ですからね」



 アスカのお許しを得て、僕たちは再びリイサさんの店に行った。驚いたことに、父上たちはまだ店で飲んでいた!(笑)


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