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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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43話 奥さんとしては当たり前!

 朝の訓練を終え、お風呂に入りながらアスカと話しをする。



「昨日はリイサさんと会う約束をしていたけど、無断でサボってしまった。リイサさんにお詫びをしないと」


「それならセイラさんにお願いして、リイサさんには旦那様が体調不良で今日に延期をお願いしました」


「アスカ、ありがとう。それは助かった」


「そのくらいでしたら、奥さんとしては当たり前です!」


「あはは、それは頼もしい。それに昨日は沢山アスカに迷惑をかけて、本当にごめんなさい」


「いいえ、私は旦那様にとても大切にされていると知って、嬉しかったですよ」


「僕もアスカに抱きしめてもらって、とても安らいだ気分になれたんだ。子供の頃に母さんに抱きしめられて安心したのに近い感覚だった」


「いつでも抱きしめてあげますから、落ち込んだときや寂しいときは言ってくださいね」


「それなら、今お願いします!」


「今はダメです。旦那様がいやらしいお顔になっていますから」



 僕はそんな冗談が言えるほど元気を取り戻せていた。本当にアスカに感謝しなくては!




 せめてもと思い、今朝はアスカの好きなプレーンオムレツにトマトのソースをかけた朝食を用意した。パンも軽く炙って、バターを塗る。コンソメスープも用意して、僕なりのアスカへの感謝の気持ちを込める。食堂へ運んで、2人で朝食を食べ始めた。



「今日は遅い昼食になるから、パンをもう少し食べる?」


「いいえ、オムレツもあるので大丈夫です」


「アスカ、ダンジョンの1階層に行ってスライムのことを調べたいと言ったら、今日でも寄ってこれるかな?」


「1階層の往復なら1時間あれば十分です。後は旦那様がスライムを調べる時間だけです」


「なら、時間がありそうならお付き合いをお願いしたい」


「はい、かまいませんよ。念のため剣だけ持っていきましょう」


「そうしてもらえると助かるよ。また、魔石だけ切り出してもらうかもしれないから……食事のときにする話じゃなかったね、ごめん」




 食事が終わると、いつものようにお互いに家事をこなす。外出してしまうから、洗濯物は魔法で乾かしてしまおう。昼食の準備がないので、僕は紅茶とクッキーを用意して、居間のソファーへ向かった。紅茶をいれていると、アスカも掃除が終わって居間に来た。



「アスカ、僕はこれからエコで調べ物をさせてもらうよ」


「はい、それなら私は編み物をしています」



 アスカは部屋に戻って、編み物の道具が収められている籠を取りに行った。



「アスカは編み物が好きだと言っていたけど、作りたいものが何かあるの?」


「はい……でも恥ずかしいのでお教えできません!」


「編み物で恥ずかしがるようなもの?どうしても教えてくれないの?」


「いいえ、どうしてもということではありませんが……」


「それなら、ぜひ聞かせて欲しいな」



 アスカはうつむいて真っ赤な顔をしていたけど、教えてくれた。



「赤ちゃんができたときに、着せてあげる服を作りたいです……」


「なるほど、それはいい趣味だ。今から練習をするのはちょうどいい」


「私は赤ちゃんが生まれたら、どうなるのでしょう?」


「どうなるって?剣士を続けるかってこと?」


「はい、私は続けられるのでしょうか?」


「アスカが続けたければ続ければいいし、子育てに専念したければ、辞めるなり休むなりすればいい。僕は子供をおぶってダンジョンへ行ってもいいと思ってるよ」


「赤ちゃんをダンジョンにですか?」


「もちろん、生後すぐは無理だろうけど、1歳くらいからは問題ないと思う。母さんも僕を抱えて、山に1人で素材を取りに行ったそうだよ」


「まあ、お母様はそんなにたくましい女性だったのですか!」


「そうだよ。おまけに片腕だからとても苦労したと思う」


「そうですね、お母様がそこまでできたのでしたら、私も冒険者を続けていきたいです」


「うん、僕ももちろん協力するから、心配しないで大丈夫。父上もダンジョンの中で、孫を肩車してくれるだろうし(笑)」



 アスカは心配事が無くなったからか、がぜん編み物のやる気を出していた。僕もエコで調べ物を始める。



『エコ、サンストーンを利用した加工品の文献はある』……『該当しません』


『エコ、サンストーンについて書かれている文献のジャンルをすべて教えて』……『3件該当しました。石の標本、日記、神話です』


『エコ、サンストーンについて書かれている日記を見せて』



 頭の中にページのイメージが浮かんでくる。だが、この日記には神話を読んだことしか書かれてなかった。



『終了。次はサンストーンについて書かれている神話を見せて』



 頭の中にページのイメージが浮かんでくる。これは石板か何かかな?ところどころ崩れて読めない。サンストーンの辺りは……聖杯に血を満たし……サンスト……聖杯に……ダメだ読めたもんじゃない!でも、血とサンストーンで何かが起こりそうだ。何やら起こりそうなら、これもダンジョンでこっそり試してみようかな。



『終了』



 最後に気になっていた石について調べてみた。それは僕の両親が残してくれたブレスレットの石。誰もなんという石かも知らなかった。



『エコ、僕の見ている魔石の鑑定をお願い』……『はい。名前がありません』


『エコ、名前がないとはどういうこと?』……『はい、名称がまだ決められていません。国務院の受付番号が6502です』


『エコ、国務院の受付番号が6502についての文献を見せて』………『1件該当しました』



 頭の中にページのイメージが浮かんでくる。これは国務院の受付証だ。その時、アスカが僕の肩を軽くゆすった。



『終了』



「アスカごめん、夢中になってて気付かなかった」


「そろそろ、リイサさんのお店に行きましょう」



 調べ物は、また今度。急いでリイサさんの店に向かった。


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