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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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37話 冒険者になりたい

 朝の訓練を終え、いつものようにお風呂と朝食。アスカは朝食を終えると、掃除をしてくれるようになった。僕は朝食の後片付けと洗濯。アスカはまだ掃除から戻ってこないので、僕は昼食の準備も始めることにした。


 僕は昼食を作りながら考えていた。土の矢を攻撃ばかりではなく、防御にも使えないかということ。土の矢を離れた場所に飛ばすことはできる。これを盾の代わりに剣に叩きつければ攻撃を防ぐことができるのではないか?攻撃も防御も黒魔法なら魔力の消費はかなり減らすことができる。うーん、試してみたい……



「旦那様、何か悩み事ですか?」



 考え込んでいた僕を見て、掃除から戻ってきたアスカに声をかけられた。



「今朝練習して、土の矢はできたけど、今度は土の盾を作ろうと思って」


「旦那様は、今まででも盾は出せていましたよね?ええと、魔法の手と言われていましたか」


「うん、魔法の手。それをもっと魔力を節約できるようにしたいんだ。アスカ、悪いけど僕に協力してくれる」


「はい、ご協力はかまいませんが、私は何をすればよろしいですか?」


「僕が出現させた盾を、剣で突き壊してくれるかな」


「はい、それなら簡単です」




 昼食の後、アスカが付き合ってくれることになり、再び庭で訓練となる。


 僕は左手に杖、右手に細剣、頭の中は僕の正面少し前に土の盾を出してみた。土の盾と言ってもコイン1枚分程度の小さな盾だ、雲の代わりに盾を出すなんてふざけているけどね!それでも僕とアスカの間にちゃんと小さな土の盾が出てきた。魔力を送っている限りは空中のその場に留まっている。僕は細剣で突いてみる。びくともしない。今度はちゃんと構えて突いてみる。今度は土埃になって消えた。魔法も消費されなくなる。どういう仕組みでこうなるのかは分からない。でもこうなることは分かった。今はこれで良しとしよう。


 次に倍の厚みで盾をイメージした。僕でも構えて突けばぎりぎり壊せる。されに倍の厚みでイメージ。やはり今度は壊せない。もう1度しっかり構えて全力で突く。手が痛いだけだった。



「アスカはこの土の塊は壊せそう?」


「やってみましょう」



 アスカが構えて突いてくれた。あっさり壊れた。では倍の厚み。アスカは目の前に土の塊が現れると突いてくれた。今度は1度目では壊せなかった。2度目はしっかり構えて力の限りに突くようくな感じで壊せた。



「さすがのアスカでも、さらにこの倍の厚みになると壊すのは無理そうだね」


「はい、今ので精いっぱいでした」


「突きはアスカと父上ではどちらが強いの?」


「お父様の方がお強いです。でもこの倍の厚さは壊せないと思います」


「それなら、昨日の立ち合いの中で、アスカの剣筋上にこれを出せれば、アスカの攻撃を防ぐことができそうなんだ」


「はい、可能だと思います。旦那様、私との立ち合いでこれを出していただくことは可能ですか?」


「すぐには難しいけど、いずれは思い通りに出せると思うよ」


「ぜひ、お願いします。私はこういう立ち合いを待っていました」


「それなら試しにやってみる?僕も練習になるから」


「はい、お願いします」



 そして2人は少し距離を取る。アスカが構える。そして突いてくる。僕はそれに対応して剣筋上に盾をだす。アスカの突きがはじかれる。僕ははじいた瞬間で魔法を切る。アスカが次の突きを繰り出してくる。また剣筋上に盾を出す。これもしっかりはじき返す。アスカは半歩ほど下がって、連続突きを繰り出す。いくつかは対応できたけど、全部は無理だ。僕は大きな盾を出して広い範囲を防御した。これにはアスカが驚いていた。アスカは大きく下がって身構える。僕も魔法を切る。僕は面白いことが頭に浮かんだ。ハチの巣!壁の部分を盾ての厚さにすればいい。アスカの突きがくるのを見計らい、大きなハチの巣をだしてみた。剣の部分は通り過ぎるけど、剣のガードの部分は通らないはずだ。僕はその盾をアスカの方へ押し出す。アスカは引かざるを得なかった。僕は魔法を切った。



「どう、アスカ。今のは使えそうかな?」


「はい、突きに対してはとても有効だと思います」


「そうか、僕はアスカとばかり立ち会っているから、突きのことしか知らなかった。剣で振り下ろされたらイチコロだ」


「いいえ、旦那様。突きは構えてから撃ってくるまでが最も早いです。振り下ろしは大きな動作で遅いので、手首を抑えてしまってもいいかと思います。旦那様ならその余裕はあると思います」


「今度、父上に協力してもらって試してみるかな」


「はい、旦那様。ぜひ挑戦して世界最強を目指してください」


「無理無理、アスカや父上に勝てるわけがない!」


「そんなことはありません!旦那様なら叶えられる夢かもしれません」


「ううん、僕はそれを望んでいない。この王国で一番強い人をお嫁さんにもらったんだもの、前衛は奥さんに任せて僕はサポートがいい」



 そんな冗談を言い合って、すっかり戦闘モードは終了だ。


 アスカは立ち合いが終わると、スッと鞘に剣を収める。その動作がとても美しい。そしてその動作によって、戦う女の子から普段の女の子に戻る瞬間。小さく息を吐いて、アスカ自身も気持ちを切り替えたように見えた。それがアスカが僕の奥さんに戻る瞬間にも思えた。僕は何だかとてもアスカが愛おしくなってしまい、アスカをギュッと抱きしめた。



「戦っているときのアスカは凛々しくきれいで大好きだ。でも、剣を収めてホッとするいつものアスカも大好き。でもこれじゃ、僕はアスカのことがいつもで大好きってことになってしまうかな……」


「急にどうされたのですか、旦那様?私はギュッと抱きしめていただけるのは嬉しいのですが……」


「結婚式の後、訓練ばかりに力を入れていたから、少し申し訳ない気持ちになった」


「冒険者となるよう、頑張られているのですよね。そのお気持ちが伝わってきていましたから大丈夫です。私の言葉を真剣に受け止めていただいた証拠ですから」


「アスカと約束したからね。だからこれからも自分にできることを一生懸命やっていくよ」



 アスカとしばらく抱き合っていた。僕がアスカを守ってあげられるようには一生なれないかもしれないけど、それでもアスカを守れる人になりたいな。


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