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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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32話 リサさんと魔法の訓練

 3人で拠点の庭に移動した。どうもリサさんはお互いの魔法をここで披露しながら確認するつもりのようだ。アスカには盾を構えさせて威力を確認させるのかな?アスカに怖い思いをさせるなんて恐ろしい女性だ!



「まずはグランの魔法の手ね。アグリさんのと同じやり方なの?」


「やり方が一緒かは分かりません。ただ、僕は母のようにはできません。まずはお見せします」



 僕は右手を突き出して、いつもの魔法の手をだす。



「ずいぶんと細いのね。材料は土かしら?」


「はい、糸のイメージで出してます。僕の場合は最初は最低限の魔力で出して、敵を倒すまで魔力を上げていってます。ただ、魔力量の20%までで撃ち止めにしています」


「なるほど、それで24階層の魔獣までと限定しているのね」


「はい、それに魔法の手で討伐できない場合は、前衛の支援魔法に切り替える必要がありますから」


「うん、いい心がけ。支援の魔法は、私は目くらましの黒い霧と、足元の土を溶かして、魔獣の足が沈んだところで溶かした土を固める魔法を使っているの」


「リサさんが目くらましを使っているのを聞いて、私もダンジョンで使っていました。動きを止める魔法は父上とアスカの説明を聞いても分からなかったので、魔獣の目を狙っての魔法の手で攻撃をしてました。土を溶かすですか……なるほど、やってみます」



 僕は足元の少し先を柔らかい粘土にするイメージを持って魔力を込める。そしてその部分をつま先でつついてみる。ぷるぷるゼリーのように柔らかい。魔力を止めて、もう一度つま先でつつく。今度は元通りに硬い。



「リサさん、こんな感じですか?魔獣の重みで沈めればいいですよね?」


「もう覚えたの?私はこれを会得するのに何年もかかったのよ」


「はい、新しいことを探すのは大変ですけど、人のを真似るのは簡単ですから(笑)」


「私も魔法の手を出せるかしら?」


「意識は手の平から出すイメージでやってます。イメージしにくければ、最初は指を伸ばすのがイメージしやすいですよ」



 リサさんは何やら試行錯誤していたが、何も出なかった。



「リサさん、最初は単純に」



 僕は人差し指のはらを上に向け、その上に小さな土の山を発生させる。



「リサさんも、これならいけますよね」



 リサさんも僕と同じように土の山を発生させる。



「ほら、リサさんだってできるじゃないですか!後はその山をどんどん高くしていきましょう」



 リサさんはみるみる土の棒?を伸ばしていった。



「後は訓練して、向きや太さやどこから出すかを頭と体になじませるだけです。すぐにできるようになりますよ……ことによると、リサさんの方が魔力量が豊富なので、25階層以降もリサさんなら遠隔討伐が可能かもしれません!」


「いいえ、25階層くらいからは前衛に任せた方がいいのよ。前衛も徐々に体慣らしをした方が、いきなり強敵と戦うよりいいの。準備体操みたいなものよ」


「リサさん、もう1つ教えてもらっていいですか?リサさんは雨を降らせるようにお湯を降らせることができると聞きました。何をイメージしてますか?」


「私は単純に雲をイメージしている。でも、私の場合、頭上に雲をイメージし続ける必要があるから、裸の男性が視界に入るのよね(苦笑)」


「なるほど、それなら僕にもできそうです」



 僕は道端に生えている雑草の上に雲をイメージして、その雲から雨が降るイメージを思い浮かべる。続いて魔力を込める。しっかり雨が降った!今度は雨が熱湯のイメージ。ちゃんと湯気が出ている。魔力停止。次は大きな木の1枚の葉っぱから雨が降っているイメージ。魔力を込める。葉っぱから雨が降った。魔力停止。



「グランは水も火もなくても自由自在なのね」


「リサさんもやってみてください。空気から湿気を取り出すイメージ」


「ごめん、さすがにそれは無理そうだわ。水は小瓶で持ち歩くことにしている。火は魔道具をクランで買ってもらったのがあるから」


「水が必要なら僕に声をかけてください。女性のシャワーはリサさんにお願いして大丈夫そうですね」


「グラン、ダンジョンでシャワーを浴びさせてあげるつもり?」


「はい、自分も浴びたいじゃないですか!僕はダンジョンで洗濯もしていましたよ」


「お風呂に洗濯……グランと2人でなら気軽に対応できそうね。採用です!」



 魔法の確認が終わったので、次はアスカに頼んで攻撃の威力を見てもらうことにした。アスカに盾を構えてもらって、踏ん張ってもらう。



「アスカ、いくよ!」


「はい、旦那様」



 掛け声と同時に魔力20%で魔法の手を細い糸のようにだした。アスカの盾がガツっとなり、アスカが踏ん張っているのが見えた。魔力停止。僕とアスカがそろってリサさんのところへ駆け寄る。



「今のが20%の魔力による攻撃です。これが最大の破壊力です」


「分かった。私も練習しておく。糸のようにしているのは魔力の節約と、魔石だけを狙うのが目的なのよね?」


「はい、魔石だけ狙ってます。……そうだ、もう1つリサさんにお伝えすることが。でもこれは王国の機密らしいです」



 僕はリュックからサンストーンを出した。



「サンストーンね、ダンジョン以外で見るのは初めてだけど」


「あれ、サンストーンはご存じでしたか?」


「冒険者の、それも魔法士なら、年に1度くらいなら見かけるから。見つけても、消えてなくなるから誰も気にしないけど」


「私はこれを対象にサーチの魔法を使ってます」


「なるほど、それで魔獣の存在を確認していたのね。でも残念。サーチの魔法は私も使えないし、使える魔法士を聞いたことがないの。グランはそれも、アグリさん仕込みでしょ?」


「はい、母から教わりました」


「アグリさんはとにかく規格外なの。アグリさんができたからと言って、皆ができると思ってはだめよ!」



 こうして魔法の訓練は終わった。ついでにと帰りに市場へ寄って晩御飯の材料の買い出しもした。リサさんと寄ったのは、セイラさんとは来たことがない庶民的な店だった。いい店を紹介してもらえて得した気分。久しぶりにたっぷり野菜を食べよう!


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