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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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26話 父上の思惑

 リイサさんの店に着いた。席に座ればすぐにビールが運ばれてきて、アスカがつまみと料理も頼んでくれる。そして乾杯!一気飲みは父上とセイラさんの2人だけ(笑)



「グラン、ダンジョンはどうだった?」


「はい、怖いところでした」


「俺にはグランは落ち着いているように見えたが……」


「父上もアスカもいましたから」


「グランが討伐に参加することで、これからの戦いはがらりと変わる。もう小人数で無理なボス戦をやる必要はない」


「お父様、どういうことですか?」


「後衛は必要最小限を連れていけばいい。荷物持ちが目的の人は不要だ。危険な場所には戦わない者を連れていく必要がなくなる」


「でもお父様、回復には白魔法士の同行が必要ではないですか?」


「ポーションを大量に持って行けばいい。ポーションを飲む時間も見据えて人を割り当てて戦うんだ。例えば俺とアスカでチームを組んでいるとして、俺がボスと戦っている間に、アスカが俺の後ろでポーションで回復。回復が終われば俺と交代し、俺がポーションで回復する。こんなチームを5組用意して挑むなら、33階層のボスを倒すのも問題ない」


「お父様、それほどのポーションを用意するとなると、相当な金額になるのではないですか?」


「ああ、店で買ったら大変なことになる。だからリサとグランに作ってもらおうと思う。リサが基本的なポーションを作って、グランが純度を上げればいいのだろ?ミスリルの純度をあげられるのだからポーションも問題ないと思いついたのだ」


「敵の前面にレベル15の3チームを盾にして、後方にレベル14以下のチームで常に攻撃する……お父様、理想的な形だと思います」


「年内に準備をして、来年早々に出発できればと思う。まずは他のクランの高レベルの者たちに声をかけてみる」



 父上とアスカはワクワクしながら話しを続けていた。僕はセイラさんと相談事だ。



「セイラさん、今回ダンジョンに行って分かりました。献立は地上で決めて、下ごしらえも地上で済ませていく方がいいです」


「ダンジョンでのお料理は大変でしたか?」


「3人分だけなので調理が面倒ということはなかったです。でも、献立を考えるのは大変でした。戦闘の後に料理となると頭の切り替えがついていけなくて」


「ダンジョンに行かれる人に、前もって献立表をお渡ししておくのもいいかもしれませんよ。自分好みの調味料やお酒やジュースを用意される人もいるかもしれませんから」


「なるほど、それは良い考えですね。それと今度は大人数になるようなので、料理を作る人も何人か必要そうです」


「リサさんはお料理はできますよ。アスカさんは……戦力にはなりません。後衛の方は女性が多いでしょうから、お料理ができる人もいるでしょう」


「この辺のことも父上も交えて打ち合わせをしてみたいです」


「料理についてはリイサさんにもご協力いただくといいかもしれませんよ」




 こうして、いつもとは違う雰囲気の飲み会は終わった。父上たちと別れたところで、アスカが僕と手をつないでくる。屋敷まではすぐだけど、やはり2人でいるときは手をつないでいたい。屋敷に戻ると、お風呂にはいってすぐに眠ることにした。隣にいるアスカをギュッと抱きしめた。2人でくっついて眠るのが、僕にはとても嬉しく幸せだ。




 翌朝は朝の訓練とお風呂を済ませると父上の屋敷へ行った。朝食を食べながら戦利品の換金に行きたいと父上にお願いする。父上は了解してくれた。その後もガデンさんの店で指輪。ライザさんの店でドレス。そしてキツカ様に会いに行きたいことも伝えた。父上はキツカ様は日中なら国務院にいるだろうと教えてくれた。


 食事が終わると、換金のためにマイルさんの店に向かった。すべての戦利品を渡すと鑑定士の人が驚いていた。今回の戦利品は品質がとてもいいらしい。父上は一撃で倒した魔獣が多かったからかもしれないと話してくれた。割増も含めて21ゴル!4等分して、僕とアスカはお金を王都民証に受け取る。父上もクランの分は受け取ったが、自分の分はグランとアスカに半分ずつ渡してくれと、マイルさんに頼んでいた。



「父上、それでは父上がタダ働きではありませんか!」


「今回は結婚祝いとでも思って受け取っておきなさい。屋敷の準備や結婚の準備で金がかかるからな」


「父上、ありがとうございます」


「お父様、ありがとうございます」



 父上とはマイルさんの店で別れた。父上は昨夜のクランの合同討伐の話しを早速しにいくそうだ。僕とアスカはここからすぐなので、ガデンさんの店に指輪を受け取りに行った。


 ガデンさんは個室に案内してくれて、何やら道具を持ってくるようにお店の人に指示もだしていた。


 ガデンさんは早速指輪を手渡してくれる。僕もアスカも左手の薬指に指輪をはめる。僕の指輪は若干きつくて、アスカの指輪は若干ゆるい。ガデンさんはすぐに調整をはじめてくれた。するとゲイテさんがお茶を持ってきてくれた。ゲイテさんもソファーに腰かけて僕に質問してきた。



「この間の魔法装備はどうでした?」


「はい、詠唱速度も魔力消費量も魔力回復速度も、少しずつ改善されている感じです。僕はもともと魔力量が少なく詠唱速度は速いので、その2つはあまり恩恵を受けませんが、魔力回復速度はとても助かります」


「魔力量が少ないのに回復速度の改善がありがたい?どうして?」


「僕の魔力は杖に溜めるようにしています。魔法も杖の魔力から使っています。なので回復速度の改善はとてもありがたいです」


「なるほど、では回復速度に特化した装備や魔道具ができたり見つけられたら、グランさん用に取り置きしておきましょう」


「はい、ありがとうございます」



 ガデンさんの指輪の調整が終わる。今度は僕もアスカもぴったりだ。ガデンさんは豪華な指輪のケースも渡してくれた。指輪をケースにしまうと、何やら文字が掘られている。『with you』僕たちにぴったりのメッセージだ。


 僕とアスカはガデンさんとゲイテさんにお礼を言ってお店を出る。2人も見送りに出てきてくれた。



「アスカさん、細剣はもう少し時間をくれ。ただし最高の細剣を渡すことは約束しよう」


「ガデンさん、年内に出来上がりますか?お父様の話しでは、来年早々に33階層のボスの討伐をするそうなので」


「年内だな、必ず間に合わせる。アスカさんにはその剣で、必ずボスを討伐してもらう!」


「はい、期待してお待ちしております」



 僕たちはお2人に会釈して、店を後にした。


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