22話 初めてのボス戦
翌日は22階層に降りた。敵の姿が見えないので歩いて探している。
「アスカ、グランを攻撃に参加させるのか?」
「お父様、私は旦那様には後衛をお願いするつもりでいます。今回は旦那様の攻撃力の確認だけが目的で、攻撃をお願いしたいとは思いません」
「俺も同じ考えだ。そうなるとグランには護身の意味しかない。今回の目的はもう達成しているのではないか?」
「父上の言われているとおりです。後は攻撃に使う魔力量だけの話しなので、私も目的は達成していると思います」
「そうなると、後衛で何をするかの確認をした方がいいか。この先の魔獣での攻撃の確認は、クランの全員で来た時に頼んだらいい」
「旦那様のサーチ?は、とても便利で無駄な探索の時間が省けます。これだけでもかなりのメリットになります。しかもこちらが必ず先手を取れます」
「ああ、確かにな。そして遠距離からの魔法攻撃で倒せてしまえば、下層へ向かう時間も相当節約できる……グランの無理のない範囲で攻撃を頼んだ方がいいのか?」
「私の攻撃が通じる間はどんどん先に進んで、通用しなくなった後はいつもの戦い方をしてはどうですか?私は後衛の魔法に専念しますから」
「リサには目くらましの魔法と、時には足元を固めて動きを鈍くしてもらっている。後方支援としてグランは何ができそうか?」
「……ごめんなさい。今のところ思い浮かびません。後衛として戦ったことがないので」
「それもそうか。リサもそうだった。俺とアスカで戦ってみるので、グランは何ができるか考えてくれ」
「はい、分かりました」
「お父様、そうなると今までのように旦那様の魔法によって下層へ進むのですか?」
「そうだな、今回は24階層までこのままの感じで進もう。25階層は戦い慣れぬグランでは厳しいだろう」
僕たちは先へ進むことになった。サーチと魔法の手による攻撃は続けて進む。魔法の手は魔力量を20%を限度にすることにした。討伐失敗の後も魔法の支援をしたかったからだ。
その後も24階層へ向かうことを第1目的に、進路の妨げになる魔獣だけを討伐しながら23階層へ降りた。
24階層入り口近くの23階層で昼食にする。昼は簡単に済ませる。昼食を終えて休憩をしていると、僕は嫌な胸騒ぎを感じる。サーチで辺りを見ると、まだかなり距離はありそうだが、見たこともない強い光をみつけた。
「アスカ、ちょっとこっちに来て」
僕はその方向に向けて指をさす。
「何か強い魔獣がいるみたい」
「旦那様、私には見えませんが、23階層のボスかもしれません。お父様、23階層のボスのようです」
父上も側へ来てくれた。でも父上にもまだ見えないようだ。
「アスカと2人なら問題はないが、どうするアスカ?」
「お金を稼ぐという点では魅力です。魔法の支援がなくても、お父様となら討伐可能です」
「では、今までどおりで、グランからの遠隔攻撃でスタートするか」
「はい、父上、アスカ。魔力を半分まで使ってみたいと思います」
僕たちは魔法の有効範囲まで近づく。魔獣にはまだ気づかれていないようだ。その魔獣の姿は、今までとは比べ物にならないくらい大きな魔獣だった。
「旦那様、やはりボスです。魔法の攻撃後もここから動かないでください。私の指示があったら、22階層の入り口の方へ全速で走って逃げてください」
「分かった。それでは攻撃!」
僕はサーチと魔法の手を詠唱。魔力の出力を上げていく。残念だけど討伐できそうにない。
「魔法では無理そうです。2人は攻撃に向かってください」
「了解」
2人が走り出す。僕は目くらましの魔法を詠唱する。そして魔法の杖の魔力回復にはいる。
アスカと父上が戦闘にはいった。僕はもう少し近づいて、魔獣の顔がはっきり見える場所まで移動する。
今度は魔獣の目を狙って魔法の手を詠唱。出力を上げていくと片眼を潰すことに成功する。魔力消費は20%程度。もう片側の目も潰す。その後はアスカに言われた場所まで後退。今度は普通に魔力回復にはいる。
視界を失った敵の攻撃は適当になり、2人は隙をみての攻撃は頻度が増えていた。そして、アスカの連続した突きが魔石を狙って行われ、敵が消えていった。父上とアスカは戦利品を確保して僕の方へ戻ってくる。リュックに戦利品をしまうと、皆で水を飲みながらボス戦についての話しとなった。
「グランの目くらましの魔法は有効だった。それと、目を潰してくれたおかげで、かなり楽な討伐となった。アスカはどうだった?」
「はい、私も目を潰す攻撃は有効だったと思います。両目を失ってからは危険度はほぼ無いに等しかったです」
「32階層のボスも目を潰してもらうのは効果的かもしれんな。たとえ1つの頭だけでも、危険度が下がるだろう」
「1つでも潰す?」
「ああ、32階層のボスは頭が3つあるからな」
「父上、最初の魔法の攻撃は効果はありましたか?」
「あんな細い糸のような攻撃だと、穴が開いていたかどうかの見分けがつかなかった。アスカは?」
「旦那様、私も見て判断ができませんでした。ごめんなさい」
「分かりました。ボスには魔法の手は効かないと判断します。他の魔法で支援することにします」
とりあえず、昼食を食べたところまで戻って、父上とアスカに冷たいレモネードを用意した。2人は喜んでくれた。少し休憩をとって、24階層に向かうこととなった。




