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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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19話 いよいよダンジョンへ

 ダンジョンへ行く日の朝。最後の荷物の確認をしていると、アスカもリュックを背負っていることに気付いた。



「アスカも自分で持って行く荷物があるの?」


「はい、これでも女性なので、それなりに着替えも多く持って行くのです」



 確かに僕に預けられた荷物には食べ物や飲み物、ポーションや薬等で、着替えなどは預かっていなかったかも。



「アスカ、着替えなども僕のリュックにいれていくよ」


「どうしても汚れ物がでますから、旦那様にそれをお預けするのは心苦しいです」


「念のため言っておくけど、僕はダンジョン内でも洗濯はするよ」


「……旦那様、ダンジョン内は水は潤沢ではありません。飲み水すら節約する必要があるほどです」


「水が潤沢ではない?水なら魔法でいつでもどれだけでも出せるけど」


「リサさんは水を集める場所が決まっていますが、旦那様は場所に関係ないのですか?」


「ダンジョンへは行ったことがないので、はっきりしたことは言えないけど、問題があるとは思ってなかった」



 僕の認識が甘いのかな?ダンジョンとはそれほど過酷な場所なのだろうか?今回は念のためアスカの意見に従って、着替えは多く用意してもらった方が安全か。



「アスカ、今回は魔法で水が出せるか分からないから、アスカの用意した着替えは全部持って行くけど、その荷物も僕が持っていくよ。汚れ物も心配しないで。リュックに入れてしまえば汚れも臭いも関係なくなるから。僕のリュックに入れた食品も腐ったりしないのと同じで、汚れ物もそれ以上汚れがひどくなったりもしないんだよ」


「あら、旦那様のリュックはそんな点でも便利なのですね。では、お言葉に甘えてお願いします」



 僕は面倒なので、アスカのリュックをそのまま僕のリュックにいれてしまうことにした。これで準備が完了です。僕たちは父上の屋敷に向かいました。




 父上の屋敷で朝食をご馳走になり、いよいよ出発。



「セイラさん、留守中の大掃除。お願いします」


「はい、お任せください。生活雑貨も揃えておきますのでご安心ください」


「はい、よろしくお願いします」




 僕たちは門を通ってダンジョンの入り口にたどり着く。思ったより大勢いたので、中が混雑するのではと心配になる。でも中に入ればそんな心配も吹き飛ぶ。中はかなり広い。



「1階層にも魔獣がいるの?」


「はい、スライムならいます」


「確か弱い魔獣だったね」


「はい、冒険者なら踏みつけて倒す方が多いです」


「捕まえることはできる?」


「どうでしょう?やったことはありません」


「魔石を傷つければ倒せるのは知っているけど、魔石を傷つけないで本体を傷つけるとどうなるの?」


「生き物と変わりません。例えば腕は切り落としたりできます。血が出たりはしませんが」


「腕を切り落とすと、腕は光って消えるの?」


「はい、光の粒になって消えます」



 僕はここがとても気になっていた。母さんが亡くなった時も、光の粒になり消えてしまった。ひょっとすると魔力がある人は、体内に魔石があるのではないかと。そしてその魔石は同じものか、魔獣ごとに違うのか。同じ魔石なら探索魔法が使いやすくなる。それには手始めにスライム?の魔石をじっくり観察したい。



「父上は魔石に触ったことはありますか?」


「握り潰したことはあったが、手に取ったりはしたことはない。何か調べたいのか?それならスライムで試すのが安全だ」


「はい、スライムで試してみます」




 2階層に向かう道は冒険者が歩いているので、道をそれてもらった。ダンジョンと言えども魔獣がうようよいる訳ではなかった。しばらく歩いてようやくスライムを見つける。僕はアスカから借りている細剣を手に近寄ってみた。



「旦那様、魔石を傷つけないように切り刻めばいいですか?」


「うん、お願いできる?」


「はい、かしこまりました」



 アスカは何度か剣を振り、きれいに魔石だけにしてくれた。


 僕は魔石を手に持ち、じっくり観察した。



『エコ、僕の見ている魔石の鑑定はできる?』……『はい、可能です。純度の低いサンストーンです』



 僕はサーチの魔法で手にした魔石を見えるように調整する。その後、魔石の純度を上げるため移動魔法を使う。高純度のサンストーンは豆粒ほどになってしまった。サーチの魔法で見てみるとさらに明るい石として見えた。しばらくはサーチの魔法で他の魔獣も見えるか確認してみよう。



「お待たせしました。他の魔獣も見てみたいので、先へ進みましょう」


「グラン、お前が1番足が遅い。どうする?」


「ホバーを使って父上につかまって行くか、皆にホバーをかけて僕が引っ張るかです」


「ここは人目も多いから、俺につかまっていきなさい」


「はい、了解しました。父上、私はサーチの魔法を試しますので、視界が悪くなります」


「ああ、アグリさんもたまに使われていたな。何かあれば伝えるから心配するな」



 こうして僕は父上のリュックにつかまりながら、たまにサーチで魔獣の位置を確認する。魔獣を見つけるとアスカに伝えた。アスカが走って確認に行ってくれる。もちろんアスカは討伐するので、薄く光っていたものは、しばらくすると消えてしまう。


 2階層に降りても3階層に降りても、サーチで魔獣は見えた。今のところ、魔獣の魔石はサンストーンということになる。僕は気になったので自分のことも見てみた。心臓の辺りに小さな光が見える。やはり魔力はここから出てくるのだろう。


 7階層まで降りてきた。父上もアスカも全く疲れた様子がない。でも、この辺でお昼ご飯を食べることにした。僕はサーチで辺りを見回すけど魔獣の気配はなかった。安心して簡易かまどを出して、スープを温め始める。組み立て式のテーブルと組み立て式のイスを出して、組み立てはアスカにお願いした。テーブルができたところで各自のために用意した食器類の入った袋を取り出す。お皿とスープ皿、フォークとナイフとスプーン、それにグラス。僕は水差しに魔法で水を溜める。ダンジョン内でも水の確保は問題なかった。お昼は簡単にパンとチーズと干し肉とスープ。こんな食事でも父上もアスカも喜んで食べてくれた。ダンジョンでこの食事は考えられないらしい。食事が終わると食器類を洗うための寸胴鍋を出す。汚れた食器を入れてお湯で満たす。魔法の手でクルクルかき回せば汚れもしっかり落ちる。何度かすすいだ後、温風をかけて乾燥させる。これで食器洗いは完了。後は各自の袋に詰めてリュックにしまえば後片付けは終わりだ。


 しばらくイスに座ってまったりしていたが、そろそろ出発となる。アスカがイスとテーブルを片付けてくれるので、僕はかまどとスープの寸胴鍋を片付けた。



「2人はずいぶんと手際がいいな」


「はい、お父様。旦那様と1月以上旅をしましたから」


「アスカは、グランが隣にいれば、ダンジョンでも旅行気分のようだな(笑)」



 こうして午後も先へ進み始めた。


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