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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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13話 晴れて夫婦となる

 アスカの朝の訓練に、僕も付き合ってみた。アスカは僕に細い剣を貸してくれて、木を目印に1点を突く素振りをするように教えてくれた。僕は黙々と剣を突き続けた。剣を振っているとふと気付いた。魔法の手でもこれをやっておくべきだと。急ぎ部屋へ戻り杖を持ち、もう一度庭へ戻る。先ほどの目標に向かって右手を突き出し心の中で詠唱する。僕の右手の手のひらから、土の塊の棒状の物が目標に向かって真っすぐ高速に伸びる。母さんに聞いていたとおり、自然界に存在する物を材料にする黒魔法は、魔法の消費量がとても少ない。杖の魔力はほとんど消費せず、あっと言う間に再充填される。


 僕は魔法の消費量を確認するために、100回繰り返してみた。棒状の物が作られ、その棒状の物が煙のように消え、さらにその煙がまた集まって棒状の物になり……同じことを何度も繰り返した。そして100回を終える。杖を確認すると1割程度の消費量かな?僕は自分の魔力は供給せず、杖の魔力回復力を確認する。はっきり言って数呼吸で再充填完了。全部を使い切っても大した時間はかからないで杖の魔力は満タン戻る。これは確かに侯爵家の家宝になるほどの恐ろしい杖だ。杖の魔力回復中は僕の魔力を使って魔法を使うでも、杖に僕の魔力を注ぎ込んで再充填の時間を短くするでも、それなりにリカバリー方法も考えられる。ブレスレットの魔石は思念の増幅をすると聞いていたから、これを経由して魔力を杖に送れれば、さらに時間短縮が可能かもしれない。


 僕も毎朝の訓練をすることにしよう。



「旦那様の魔法はどのくらいの威力があるのですか?」


「僕にも分からない。魔獣に関して確認できているのはアスカも見ていた、ラビツくらいだよ」


「もっと強力な攻撃もできそうですか?」


「うん。ただ、魔力の消費が大きくなる。純粋に魔力だけを使用した攻撃なら、かなりの敵を貫けると思う。でも、使えるのは1度きりで、次はしばらく待たないと魔法が使えなくなる。最悪は僕の魔力不足で倒れてしまうかもしれない」


「そんなに魔法は危険なものなのですか!リサさんは攻撃と魔力回復を上手にされていたのですね」


「そうだね、リサさんは魔法学校も卒業されているし、もうベテランだろうから。魔法の使用は自由自在なんだよ」


「旦那様もそうなるのですか?」


「分からない。でもアスカと毎朝一緒に訓練をしようと思っているよ」


「はい、一緒に頑張りましょう!」




 お風呂と朝食を終えて、3人で国務院へ向かう。父上が同行してくれたのは2人の結婚の証人となってくれるためらしい。書類を記載し3人で窓口へ向かう。窓口では女性が書類を確認し、3人の王都民証と記載内容が一致することを確認した。



「正式にご夫婦として登録されました。ご結婚、おめでとうございます」


「ありがとうございます」



 こうして2人は正式に夫婦になった。事務的なことだけだったけど、やはり嬉しい。アスカも嬉しそうだ。




 続いて、ギルドの事務所へ向かう。ギルドでは父上が案内係の女性に、ギルド長との面会をお願いしていた。女性は奥に確認に行き、すぐに奥へ案内してくれた。応接間に案内されると、ギルド長もすぐに応接間に現れた。父上が早速挨拶をする。



「ギルド長、ご無沙汰しております。まずはクランの新メンバーを紹介させてください。魔法士のグランです」


「初めまして、新しく魁に所属したグランと申します。今後ともよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「ギルド長、さらにもう1つご報告があります。グランとアスカが結婚しました」


「おおっ、それはおめでとうございます。そうなると新居の手配ですな。それはもう準備ができておりますよ」


「もうできている?ずいぶんとお気の早いことで」


「はい、グリムさんの屋敷の左隣の屋敷です。ギルドが持つ屋敷で最もグレードの高い屋敷です。まだ1棟しかありませんので、グリムさんのレベルが上がられても、もうご用意することはできません」


「いえいえ、ギルド長。今の屋敷でもギルドの過分なご厚意と感謝していますから」


「では、皆さん。早速書類を揃えますので、しばらくお待ちください」



 ギルド長は部屋を出て行き、しばらくすると書類を抱えて戻ってきた。書類を確認した後、アスカの前に書類を差しだす。アスカがいくつかの書類にサインして書類作成は完了した。



「アスカさんの王都民証で門と玄関が開きます。後はアスカさんが許可を与えた人だけが門と玄関を開くことができます。お手伝いの人を3人まで雇えます。費用はギルドから支払われます。最初は1人で、後から3人に増やすでも構いません」


「はい、ご説明をありがとうございます」


「魁の今後の活躍を期待しております」




 ギルドを出ると少々早いが昼食に行こうとなった。リイサさんの店に今日も行くらしい。どうもリイサさんの店とクランは特別な関係にあるようだ。


 リイサさんの店は朝と昼はキキさんが店を任されているそうだ。僕は早速挨拶することにした。



「キキさん、初めまして。新しく魁に入った。グランと申します。今後ともよろしくお願いします」


「リイサさんから聞いてます。アスカさんとご結婚されるそうですね、おめでとうございます」


「ありがとうございます。これからはお店にもちょくちょく顔をだします」


「はい、ぜひご贔屓にしてください」



 挨拶を終えると、僕たちは昨夜と同じ席につく。どうもこの席も魁のメンバー専用の席のようだ。


 お昼はランチメニュー1つだけで、お肉の料理が出てきた。僕は1口食べたが、食べたことのないお肉だった。思わず確認せずにはいられなくなった。



「キキさん、このお肉は何の肉ですか?」


「牛の肉です。王都以外ではあまり食べられていないそうですよ」


「はい、初めて食べました。肉汁の量といい、脂ののりといい、とてもおいしいお肉ですね。僕も料理をしてみたいです」


「あら、グランさんは料理をされる人なんですね。王都では市場で普通に手に入りますから、ぜひ料理してみてください」



 僕は新居に引っ越したら、すぐにアスカに作ってあげようと決心していた。


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