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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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9話 国王陛下との謁見

 王都に着いた翌日は朝から忙しかった。僕は魁という冒険者クランに所属した。このクランに所属していれば貴族街に出入りできるそうだ。もちろんアスカもこのクランに所属している。


 朝食が終わると早速外出。まずはライザさんのところへ行って、制服に着替える。この服装なら王宮に出入りしてもおかしくない服のようだ。僕が今までに着たこともないきっちりした服装で、より緊張感も高まる。


 支度が整い店を出た後は、貴族街の門を通り向けグリム様の兄上であるガルム伯爵様のお屋敷へ向かう。お貴族様のお屋敷は驚くほど大きい。僕が住んでいた静養所など比べようもないほどの大きさだ。お屋敷の門を通過し玄関の前へ。マチスさんという執事の方が待っていてくれた。そのまま執務室へ向かうことになるが、アスカは別の部屋で王宮へ向かう支度を整えるそうで、別行動になった。


 執務室に入ると僕は臣下の礼をとる。



「ガルム伯爵様、お初にお目にかかります。アグリの息子のグランと申します。末永くよろしくお願いいたします」


「グラン、母上のことはお気の毒であった。弟が母上を護衛していた縁で、何度かお会いしたことがあったのだ」


「はい、母からも聞かされておりました」


「兄上、昨日も簡単にお伝えしましたが、グランとアスカが結婚することになりました」


「ああ、そのようだな。しかし、2人がばったり出会うとは、本当に運命としか言えんな。もちろん儂も大いに祝福しよう」


「ありがとうございます。兄上、本日はアグリ殿のことと合わせ、グランとアスカの結婚のことも国王陛下へお伝えしたいと考えております」


「そうだな、さすがに王国最強剣士の結婚ともなれば、国王陛下に報告せぬわけにもいくまい」




 アスカの支度が整ったところで、王宮へ向かうこととなる。しばらく待っていると、髪を整えてもらったアスカが戻ってくる。髪を結われたアスカも清楚な雰囲気でとてもきれいだった。


 4人は馬で王宮へ向かう。王城の門では僕に魔法の許可証のネックレスが用意されていたので、その場でネックレスを着用した。王城の敷地内を進んで王宮の玄関に到着。バストンさんという方が待っていた。僕は挨拶をするとフィーネ様へ渡すように母さんから預かった荷物をバストンさんへ預けた。


 謁見の間に案内された僕たちは、国王陛下と王妃様が来られると係りの人の掛け声に合わせて、臣下の礼でお出迎えをする。すぐにお二人が謁見の間に来られた。伯爵様が僕を紹介してくれる。



「本日は、アグリ殿のご子息のグランを連れてまいりました。グランご挨拶を」


「はい、アグリの息子のグランと申します。お初にお目にかかります。長く静養所をお貸しいただきありがとうございました。母と穏やかに暮らすことができました」


「まずは席に座れ、王妃がいろいろ話しを聞きたいであろうからな」



 国王陛下のお言葉で、僕たちは席につく。バストンさんがワゴンに乗せた母さんから預けられた品を王妃様のそばへ運んできた。王妃様は中身を改めながら、すでに目に薄っすら涙を浮かべていた。



「グラン、アグリさんの最後は白魔法士の光の昇天でしたか?」


「はい、母は光の粒になりまばゆいばかりに光った後、消えてしまいました」



 僕もその光景を思い出して、自然と涙がこぼれてしまう。



「白魔法士の伝承の儀式も行ったのですか?」


「はい、母からはそのように言われています。ただ、私には伝承の儀式がどれにあたるのか分かりませんでした」


「2人で満月を見上げた夜があったはずです。直接伝えるものではなく、自然と伝わっているものなのです」


「私は魔法に関しては母の足元にも及びません。そして私は白魔法士になれるほどの魔力もないと思います」


「白魔法は使えるのでしょ?」


「はい、母の理論で、白魔法も黒魔法もユニーク魔法も違いはないと教わりました。白魔法も使用することはできます」


「アグリさんは残念ながら魔法学校は卒業できず、白魔法士としての伝承の儀式も行っていませんでした。でもご自身の努力でしっかり白魔法士となっていたのですね」


「はい、生涯エコと対話し、多くの知識を得ていました。そしてそれらの知識を生活に活用していました。魔法は万能とでも言わんばかりに」


「アグリさんらしいですね。最後の私へのメッセージを送った頃には、もうかなりお悪かったのですか?」


「はい、もう1人では王妃様へメッセージが送れませんでした。私が手助けして魔力と思念を母へ送って、王妃様へようやくメッセージを送ることができました。ただ、その後はもう魔法を使うことも思念を送ることもできなくなり、ベッドで横になる生活となりました」


「それほどお悪いのに、わざわざ私にメッセージを……」


「はい、どうしても王妃様に最後の言葉を送りたいと、必死になっておりました。ですので、送り終えたときにはホッとしておりました」



 王妃様は耐えきれずに涙を流された。しばらく沈黙が続く。言葉を続けたのはグリム様だった。



「王妃様、アグリ殿が身に着けていた、白い魔石のブレスレットは、グランに母の形見として渡しました。ご了承ください」


「あれは私の母からアグリさんに贈られたものです。グランに持っていて欲しいです」


「国王陛下にもご報告がございます。グランとアスカが結婚することとなりました」



 その言葉に国王陛下と王妃様も驚かれた様子。グリム様はざっと事の経緯を説明された。国王陛下も王妃様も「運命だ!」と発言されていた。


 この日は急な謁見で時間もなく、ここで失礼することとなった。王妃様はもっと母さんのことを聞きたいと言われ、また王宮に呼び出すとのことだった。


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