7話 王都へ到着
湖畔で過ごした翌朝、宿で朝食を住ませ、支度が整ったところで宿屋を出発する。アスカの話しでは3日で王都に着ける距離らしい。2人きりの旅が終わるのも惜しい気もするけど、まずは剣士様とアスカのお父様にお会いしないことには始まらない。王都では何人か会って、母さんから預かった品を手渡す必要もある。アスカとの新生活のための準備もしなければならない。くよくよしている暇はない!
その後の王都へ向けての旅も順調で、予定通りに3日目には王都が見えてきた。僕はそのあまりの大きさに驚いた。おまけに白くてとても美しい。この世の物とは思えないほど立派な街だった。王都へ近づくたびにはっきり見えてくる王都の隣の壁。
「アスカ、王都の隣の壁がダンジョン?」
「はい、いつもあそこの地下で戦っています。大体1カ月地下に行って、その後、数カ月は王都で過ごすことが多いです」
「1カ月もアスカに会えないのは寂しいから、やはり僕も頑張ってダンジョンについて行けるようにならないと!」
王都の門へ無事に到着。僕たちは長い列の後ろに並んだ。もう一方の隣の入り口はお貴族様が通る門なのかな?順番を待つ人は誰もいない。僕とアスカがおしゃべりしながら順番を待っていると、アスカに気付いた守衛さんが僕たちに近付いてくる。
「アスカさん、こんにちは。どうぞ、こちらの門をお使いください」
「いいえ、今日はこちらのグランさんの一時入場許可をいただきますので」
「それも含めてこちらで手続きしますから安心してください。どうぞこちらへ」
「はい、ではお言葉に甘えさせていただきます」
それからアスカは守衛の騎士様と話し、書類に何やら書いていた。僕もビーゼ村から来たことを書き、グランと名前も書いた。アスカは僕の書いた字を見て驚いていた。僕の母さん譲りの字は、誰が見ても驚くと思う。何せ歴史に名を遺すほどの文字の達人並の字を書くのだから。
こうして王都への入場手続きはあっさり終わる。おまけに僕たちが乗ってきた馬は、守衛さんが厩舎に返しておいてくれるらしく、ずいぶんな好待遇だ。
無事に手続きを終えて門を通過して街へ入る。当たり前だけど村と違って人が多い。母さんが話してくれていたとおりだ。でもアスカに案内されながらしばらく歩いて先に進むと、人通りも落ち着いてきた。建物も立派なものが多くなってくる。明らかに一般庶民の住まいではないと思う。
僕が立派な街並みをきょろきょろ眺めながら歩いていると、アスカは1軒の立派なお屋敷の門の前に立ち止まる。慣れた手つきで門を開け敷地内に入っていく。
「アスカ、この立派なお屋敷がアスカの家なの?」
「はい、お父様の家です」
玄関へ着いて、アスカが戻ったことを伝えながら中へ入ると、1人の女性が迎えに出てきた。
「セイラさん、ただ今戻りました。お父様はご在宅ですか?」
「ご無事のお戻りで安心しました。お父様は自室にいらっしゃいますよ。そちらの方はお客様ですか?」
「はい、グランさんです。こちらはお手伝いさんのセイラさんです」
「初めまして、グランと申します。ビーゼ村から来ました。今後は王都で暮らしますので、よろしくお見知りおきください」
「セイラです。ご丁寧なご挨拶をありがとうございます。こちらこそ末永くよろしくお願いします」
「セイラさん、このままお父様のところへご挨拶に行ってきます。今日はグランさんには泊まっていただきますので、そのように支度をお願いします」
「はい、お部屋の準備をしておきますね」
アスカは荷物も置かずに階段を上がっていく。僕はセイラさんに会釈してアスカについていった。
3階まで階段を上っていき、フロアで一番手前の部屋のドアをノックした。
「アスカです。ただ今戻って参りました」
「お入り」
「はい、失礼します」
アスカの後に続いて僕も部屋へ入る。1人の男性が事務机に座って書き物をしていた。僕も部屋に入ってきたことに驚き、ソファーへ座るよう指示してくれる。僕とアスカが並んでソファーに腰かけると、ご自分もソファーの方へ移動してきた。
「お父様、こちらはグランさん、旅をご一緒してきました」
僕は立ち上がり、挨拶をした。
「初めまして、グランと申します。アスカさんには森で魔獣からお助けいただいた縁で一緒に旅をしてまいりました」
「そうですか。まあ、座ってください」
「はい、ありがとうございます」
僕が再び席に着くのを見計らい、セイラさんがお茶とお茶菓子をテーブルに置いてくれた。セイラさんが退室されたところで、お父様が話しをされた。
「アスカ、ミスリルは手に入ったのか?」
「はい、グランさんのお陰で純度の高い物が用意できました」
そう言って、アスカは自分のリュックから、ミスリルを並べて置いた。お父様は驚いて1つのミスリルを手に取りじっくり見つめる。
「こんな良質なものをこれだけ揃えるとは、いったいどんな魔法を使ったんだ?」
その発言には、僕もアスカも驚いて何も言えなくなってしまった。
「まあいい、詳しくはまた後でゆっくり。生まれた村へは寄ってきたのか?」
「はい、石碑が建てられていました。犠牲になった村民の名が書かれていましたが、どれが両親の名前かは分かりませんでした」
「そうか、今の村民もちゃんと供養をしてくれていたんだな、安心した。それでは最後に、グランさんをどのような用件でお連れしたんだ?」
「はい、私とグランさんは結婚するつもりでおります。それでお父様に許可をいただくためにお連れしました」
「なに、アスカが結婚だと!旅の間に出会ったのなら1月程度の付き合いではないか」
「はい、ミスリルを探し始めるときにお会いしたので、1月ちょっとのお付き合いです」
「……アスカ、お主は曲がりなりにもこの王国最強の剣士で、伯爵家の弟である、このグリムの娘だぞ。それを理解しているのか?」
その言葉を聞いて、僕は驚いた!
「お話の途中にすみません。今、グリム様と言われましたか?もしや近衛兵団のグリム様ですか?」
「今は近衛兵団ではないが、たぶん俺のことだと思う……」
その一言を聞いて、僕は目から涙がとめどなく流れ出し、うつむくと身動きができなくなったしまった。グリム様とアスカはそんな僕を呆然と見つめていた。




