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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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6話 湖畔で過ごす時間

 湖畔の散歩はのんびり馬を進めているせいか、僕の前に座っているアスカの様子がよく見える。きれいな銀の長い髪に銀の髪留め。髪留めにはひまわりの飾りが付いている。



「アスカもひまわりが好きなの?」


「ヘアカフスのことですか?はい、ひまわりは大好きです。このヘアカフスもこの湖で買っていただいた物なんです」


「母さんもひまわりが大好きな人だったよ。騎士様からプレゼントされたひまわりのブローチを、一生大切にしていた」


「私もこのヘアカフスだけは、お父様から贈られた初めての品なので、大切に使い続けていきます」


「僕とアスカもお父様の結婚の許可をいただけたら、何か結婚記念の品を作りに行こう」


「はい、楽しみにしています」



 おしゃべりに興じていると、あっという間に目的地の宿屋街に到着した。僕たちが宿泊している宿屋の対岸の街には料理専門の店もあり、魚のおいしい料理店もあったそうだ。アスカに案内されて早速料理店へ入る。店は空いていて、アスカはテラス席を頼んでいた。席に着くと、もちろん魚料理を注文した。



「前回もお父様とこの席に座りました。お金を始めて見せられて、自分で支払いもしてみました……そうです、ここはレモネードもおいしかったのですよ」


「では、レモネードも注文しないとね!」



 僕は店員さんにレモネードも2つ追加注文した。


 料理とレモネードが運ばれてきて、早速2人で食べ始める。アスカは食事のとき、とても幸せそうな顔をしながら食べる。ここまで喜んでもらえると作り甲斐がある。僕も旅の途中でもついつい腕を振るいたくなっていた。



「アスカは食事をしているとき、とても幸せそうな顔をしているんだよ。そんなアスカも大好きだ!」


「……」



 アスカは真っ赤になってうつむいてしまった。食事の時は普通の会話をしないと可哀そうだ(笑)




 食事を終えて散歩を再開。アスカはボートに乗れる店があると言っていたけど見つけることができない。たまたま見かけた木こり?のおじいさんに聞いてみると、何年も前に店主が亡くなって、店もボート施設も撤去されたそうだ。アスカはがっかりしていた。



「お父様にヘアカフスを買っていただいた店だったのです。釣ったお魚もご馳走してくれたのに残念です」


「思い出の店が無くなったのは残念だったけど、アスカの中の思い出が消えるわけでもないし、そう残念な顔をしないで。せっかくの美人が台無しだ」


「……今日の旦那様は意地悪です。恥ずかしいことばかり言います」


「ごめんごめん、でも本当にアスカは美人だと思っているよ」


「……もう何も言いません!」



 アスカは他所を向いてしまった(笑)




 ボートはお預けとなり、仕方がないので早めに宿へ戻った。宿まで戻っても時間はまだあるので、馬を預けた後に昨日行った湖畔にまた行くことにした。


 湖畔にベンチを見つけたので、そこへ2人並んで腰かけることにした。よい機会なので僕はアスカに聞いてみることにした。



「アスカ、少しまじめな話しをしてもいい?」


「はい、何でも言ってください」


「アスカは剣士を続けたいんだよね?」


「続けられたら嬉しいです。でも私の本心を言えば、やはり旦那様のそばにいたいです」


「僕がアスカについて行くことはできそう?」


「できると思います。そして皆さんに感謝もされると思います。でも旦那様を連れて行くにはとても危険な場所です」


「でも、そんな危険な場所へ、僕は奥さんを1人で行かせることになるの?」


「……ごめんなさい、うまく伝えることができなくて。私にとっては危険な場所ではないのです。子供の頃からダンジョンに行っていましたから」


「ダンジョン?何かの本で読んだことはあるけど、詳しくは知らない。そこがアスカが戦っている場所なの?」


「はい、王都の隣にある地下の空間です。地下は何十階層もあります」


「お父様や仲間の人たちとそこへ戦いに行くんだ」


「はい、お父様のクランに所属しています。そのクランの参加メンバーと一緒にダンジョンに行って魔獣の討伐をしています」


「冒険者クランと冒険者ギルドだったかな?それも本で読んだだけの知識しかないけど」


「お父様のクランは王国内では有数の強い有名なクランです」


「それなら、アスカがクランから抜けると、お父様も他の人も困ってしまうのでは?」


「……正直どうなるかは分かりません。確かに戦力ダウンにはなります。でも、クランが持つ戦力で戦うだけのことかもしれません」


「僕がアスカについて行きたいと言ったらどうする?」



 アスカは今にも泣きだしそうなほど、心配そうな悲しい顔になった。



「旦那様が私のために危険な場所へ行くのは、私には耐えられません」


「でも、僕もアスカを1人だけダンジョンに行かせるのは嫌だよ」


「ですから、私が剣士を辞めます。それでお許しください……」



 アスカはついに堪えきれず泣き出していまった。僕はアスカの肩を抱き慰める。



「アスカを困らせたくない。でもお父様もクランの皆さんも困らせたくない。だからアスカが僕を連れて行っても不安にならないくらい、僕のことを鍛えてもらうのではダメかな?」


「……」


「ねえ、アスカ。アスカが僕と結婚することで、何かを諦めることになるのは、僕は耐えられないよ。もし僕がアスカと結婚するために何かを犠牲にしたら、アスカだって反対するでしょ?」


「はい、私と結婚するために旦那様が何かを諦めるなんて認められません」


「それと一緒。だからアスカにも一緒に考えて欲しい。僕がダンジョンに一緒に行ける方法を」


「分かりました。クランの皆さんも含めて一緒に考えます」


「ありがとう、アスカ。やっぱり僕はアスカが大好きだ」



 僕は初めてアスカにキスをした。アスカはきょとんとした顔をして固まってしまった……


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