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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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2話 2人の旅

 河原へ着いてリュックを降ろし、ようやく落ち着く。そして僕はまだ挨拶もしていないことに気付く。



「初めまして、グランと申します。すぐ近くの家に住んでいましたが、母が亡くなって王都へ向かう途中でした。今は王都へ向かう前に、薬草を摘むように母に言われていたので、その薬草を探しに森へ入ったところでした。ラビツに襲われたのもそんな矢先だったのです」


「ご丁寧にありがとうございます。私はアスカと申します。王都からある鉱石を探しに来ました。先ほど近衛兵団ですれ違いましたね。お母様のことを報告されたのですか?」


「はい、その通りです。母と所長が顔見知りだったようで、念のため母のことを報告してきました」



 挨拶を済ませると、僕は早速調理にかかる。アスカさんは川での水浴びをしたいそうだ。僕はリュックから一番上等なタオルと母さんと作った香りのよいハーブの入った石鹸を出して、アスカさんへ差し出す。



「長旅だったのでしょ?良ければ水浴びで使ってください。覗いたりはしないので安心してください」


「では、お言葉に甘えて行ってきます。荷物はお願いします」


「はい、気を付けていってらっしゃい」



 アスカさんと別れた僕は、とりあえず組み立て式のテーブルと組み立て式のイスを出す。それと携帯用のかまどに薪を出し、自慢のコンソメスープをビンから鍋に注いで温める。もう1つの鍋には魔法で熱湯を注ぎ、大きなウィンナーを温める。さらにもう1つの鍋にはラビツの皮と灰を入れ、魔法で熱湯を注ぐ。


 そろそろ頃合いとなりウィンナーをお湯から上げお皿へ盛る。コンソメスープも温まったところでかまどの脇へ鍋を置き、かまどの上ではパンを炙った。


 その頃になるとアスカさんがさっぱりした表情で戻ってきた。


 僕はイスへ座って待ってもらい、最後の料理の準備をする。炙ったパンとトマトのソースをウィンナーのお皿に乗せ、コンソメスープもお皿に注いだ。そして2つのお皿をアスカさんの前へ置く。



「お待たせしました、どうぞ召し上がってください」


「こんなにしっかりしたお食事は、この旅では久しぶりです。ありがたくご馳走になります」



 いろいろな話しをしながらのんびり食事をした。アスカさんは1人で王都からここへ来たそうだ。ここへは鉱石を探しに来たついでに、ここから1日程度の距離の生まれ故郷の村も見たいと言われていた。僕は鉱石が気になって聞いてみると、実物の鉱石を見せてくれた。



「ミスリルですね。これは確かに探すのが大変だ!」


「グランさん、ミスリルをご存じなのですか?一般の人では使ってはいけない鉱石なのですけど?」


「そうだったんですか!僕は使ってはいけないことを知りませんでした。でもアスカさんのこの鉱石は純度があまり高くないようです。代わりに僕のを差し上げますから、この鉱石は加工してみていいですか?」


「はい、かまいませんが……」


「それと、アスカさん。これだけは約束してください。今日見たことは絶対に人に話さないでください。母からの遺言で人前では絶対に使うなと言われた魔法を使いますので」


「そんな貴重な魔法を私に見せてしまって良いのですか?」


「何をおしゃいましか!アスカさんは命の恩人です。僕もアスカさんのお役に立ちたいのです」


「分かりました。決して誰にも話さないことをお約束します」


「ありがとうございます。ではミスリルをお預かりしますね」



 僕は預かったミスリルを左手で握り念じる。そして右手には黒い砂粒がぽろぽろと出てくる。頃合いをみて、僕は左手のミスリルをアスカさんへ手渡す。2周りほども小さくなってしまったミスリル。それを手渡されたアスカさんは驚いた顔をされていた。



「グランさん、小さくなりましたが、とても純度が高い物になってます!」


「はい、余計な物は魔法で取り除いたのです。だから残ったミスリルは純度がとても高いです」



 僕はさらにリュックから自分の持っているミスリルを取り出し、左手に乗せる。そして心の中で魔法を詠唱する。すると小さいミスリルが右手に現れる。これにもアスカさんが驚いた顔をされた。僕は右手に現れたミスリルをアスカさんへ手渡す。



「左手のこの塊ほどの大きさでこの純度のミスリルだと、3日に1つが精一杯のようです。アスカさんはこの大きさくらいのミスリルがいくつ必要ですか?」


「ええと、10個くらいは欲しいです」


「分かりました。僕が王都へ行ったときに、アスカさんへお届けしましょう」


「!……いえいえ、こんなに高価な物をいただくことはできません」


「そんな遠慮しないでください。見ての通り僕は魔法でこの山からかき集めているだけなので、お金はタダですから」


「うーん、そうは言われましても、ただいただくのも心苦しいです……そうだ、私がグランさんを王都へ着くまで護衛をします。これでも剣の腕には自信があります。魔獣も盗賊も問題ありませんから」


「ええっ、アスカさんが僕の護衛?そんな恐れ多いです。どう見ても、アスカさんは高貴なお方ではないですか!僕など、ただの庶民で王都民証すら持っていないのに!」


「それならなおさらです。王都民証や許可証が無ければ王都に入れません。私が保証人となります。王都ではどなたかをお尋ねになるのですよね?その方とお会いするまでは、私が責任をもってお連れします!」


「アスカさん、本当にお言葉に甘えてしまっていいですか?」


「はい、私も確実にミスリルが手に入るので安心です。持ちつ持たれつということでお願いします」



 こうして、王都までの2人旅が決まりました。


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