52話 30階層ボス討伐報告1
今朝はアスカに起こされた。アスカはすっかり俺との立ち合いも朝の訓練になっているようだ。今のアスカは硬い殻を破って外に出たがるひな鳥のように見える。危うさも感じさせるが、それ以上に成長への躍動感が凄まじい。殻を破ったアスカが、どのような成長を見せてくれるのか楽しみだ。
朝の用事をすべて済ませ、10時にギルドの前に到着。もう30階層のボスを討伐した噂は広がっているようで、祝福8割、やっかみ2割といったところだ。皆が揃ったところでギルドの事務所へ入る。今日はまっすぐ案内係のところへ行き、ギルド長がいれば面会したいと伝えた。受付の女性はすぐに事務所奥へ確認に行ってくれ、戻ってくると応接室へ案内してくれた。ソファーへ座る間もなく、ギルド長が部屋へ入ってきた。
「魁のみなさん、よくぞやってくれました!」
「ありがとうございます。ギルドの献身的な支援に感謝いたします。今日は30階層のボスの討伐のご報告と31階層へ足を踏みいれたご報告をしに参りました」
ギルド長は秘書から受け取り、俺に何かを差し出した。
「これが30階討伐の標識です。30階層の入り口付近へ立ててください」
俺が標識を確認すると、討伐者がマルス、討伐クランが魁と書かれていた。これでマルスの夢も叶った!逆に俺はリュックから取り出し、ピンクのクリスタル、リザードマンのうろこ、マンティスの鎌をテーブルに置いた。
「ギルド長、右から30階層ボス討伐の戦利品、31下層リザードマンのうろこ、31階層マンティスの鎌になります。少ないですが、うろこと鎌はサンプルにギルドへ献上します。それと31階層には赤いワーウルフもいて、なかなか骨の折れる階層のようでした」
「ご丁寧にありがとうございます。サンプルまでご提供いただけるとは感謝します」
「今回は31階層にあまり長居できなったので、次回はご要望があればもう少し多くご提供します」
ギルド長は話しを変えて、俺たちの新居について話してくれた。
「お3方に提供予定の家はほぼ決まっています。ただ、今回のボス討伐による王国からの報酬も考えてまだ決定していません」
「国王陛下へピンクのクリスタルは献上させていただきます。その後に住まいの提供をお願いします」
「了解しました」
ギルドを出た後は、貴族街の門を通り、兄上の屋敷に伺う。門にて兄上に午後の予定を聞いてもらうと、夕方までは在宅とのことで、用事が住んだら屋敷に伺うと伝えてもらった。兄上への伝言を済ませた後は、マイルさんの店に向かう。
貴族街側の入り口から現れた俺たちの姿を見て、マイルさんはすぐに個室に案内してくれた。部屋までの移動の最中は、お互いに多くを語らなかった。部屋に入ると俺は、リュックから取り出し、ピンクのクリスタル、リザードマンのうろこ、マンティスの鎌をテーブルに置いた。
「30階層のボスからはピンクのクリスタル、これは国王陛下に献上します。31階層のリザードマンからはうろこ、31階層のマンティスからは鎌を戦利品として獲ました。うろこと鎌はマイルさんにサンプルとして差し上げます」
マイルさんは目をキラキラさせながら、3つの品を品定めしている。特にピンクのクリスタルは見たこともない品なため、小さな宝石鑑定用拡大鏡まで使って覗いていた。
「次の30階層のボスの討伐から、ピンクのクリスタルはこちらにお持ちくださるですか?」
「はい、マイルさんのところに必ずお持ちします。我々の提携先ですから」
「ありがとうございます。うろこと鎌も店の者に使い道を検討させます」
「クランの装備のメンテナンスをお願いしている、ガデンさんの店にもうろこと鎌は提供してきます。マイルさんとガデンさんがお付き合いがあれば情報交換をしてください」
「はい、ガデンさんの店には、当店からも仕事をお願いすることが多いですし、材料は当店から仕入れていただいております。ガデンさんとも話しをしてみます」
「次回からはマイルさんのお店にうろこも鎌も持ってきますので、そのこともガデンさんに伝えておきます」
「はい、よろしくお願いします」
マイルさんへの討伐報告の後は、他の戦利品の換金を済ませ店を後にした。
続いてガデンさんの店に向かう。こちらも個室に案内してもらうまでは挨拶のみと控えめな態度で接していた。しかし、ガデンさんは個室に入るなり、俺の両手をがっしり握った。
「よくぞ30階層のボスを倒した!まさに有言実行だな。お見事だ」
かなり興奮気味だ。後から部屋に入ってきたゲイテさんが普段通りなのが救いだった。俺は早速、リュックから取り出した3つの戦利品を披露する。
「30階層のボスからはピンクのクリスタル、これは国王陛下に献上します。31階層のリザードマンからはうろこ、31階層のマンティスからは鎌を戦利品として獲ました。うろこと鎌はガデンさんに差し上げます。リザードマンのうろこは剣では傷をつけられませんでした。ガデンさんにも分析をお願いしたいです」
「了解した。何か分かれば連絡する」
「はい、よろしくお願いします。それと、今後はマイルさんの店に戦利品は卸すことになるので、何かあればマイルさんと話してください」
「おう、それは助かる。俺のところは素材はマイルさんから仕入れているからな」
そんなやり取りをしているが、ゲイテさんはピンクのクリスタルの上に手をかざしてじっと眺めている。そして時折、リサとこそこそ話しをしている。俺にはただの石なのだが、魔法士には魔力か思念にかかわる何かがあるのかもしれない。
挨拶を無事に終え、俺たちはガデンさんの店を後にする。もうそろそろ昼食の時間となるが、貴族街で食事をすることもできず、皆で拠点へ戻ることになった。そしてセイラさんを連れてリイサさんの店に昼食を食べに行くのだった。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
次話が2章の最終話になります。1章最終話と同様に、2章の最終話、2章の後日談、3章の1話をまとめてアップします。
3章は子供たちメインの家族の繋がりとダンジョン攻略のお話になります。ようやくタイトルとジャンルに偽りなしの物語となります(笑)
引き続き、読んでいただけたらと思います。
ここ数日、PV数がとても増えました。その数、日ごろの数倍!
特に作品の紹介をしていることもないので、お知り合いの方に紹介してくださった読者がいるのかと、感謝をしております。ありがとうございます。
ブックマーク登録が3人、評価が1人、総合評価が16ptと、相変わらずの不人気作品ですが、読んでいただいている人がいる限り、頑張って執筆と掲載を続けていきたいと思います。
今後もよろしくお願いいたします。




