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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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50話 初の31階層

 幸いボス戦の後は敵と遭遇することなく、29階層の安全な岩場にたどり着けた。ガンズとマルスは座るなり眠ってしまった。精魂尽き果てたのだろう。起きている3人は昼飯にした。俺は腹が減っていたので、今回は気にせず食べまくることにした。俺がガツガツと食事をしている姿にリサとアスカが驚いていた。食事を終えて落ち着いたところで、リサと話しをすることにした。



「明日は休暇にするか?」


「私は平気ですけど、お2人はお休みした方がいいかもしれませんね」


「了解」


「グリムも眠ってください。何かあれば起こしますから」


「いや、俺は大丈夫だ。近衛兵団で鍛えられてたからな。それよりもリサこそ眠っていいぞ」


「いいえ、私は魔法を使っていただけで、ボス戦はあまり忙しくなかったです」


「それは良かった。リサが忙しい状況なんて苦戦している証拠みたいなものだ」


「そうですね、皆さんの連携が息ぴったりでお手伝いの間がありませんでした」


「そうか?ボスの剣を取りに来る辺りは、冷静な判断だと感心したぞ」


「はい、ありがとうございます。怖かったけど、アスカちゃんと2人で頑張りました」


「アスカもボスの剣を持ったのか?」


「うん、リサさんと一緒に引っ張った」


「ことによると、アスカも討伐に参加したことになるかもな(笑)」




 リラックスムードでのんびりしゃべっていたら、ガンズが目を覚ました。腹が減ったと言って食料と酒をちびちび始めた。俺も付き合うことにした。ガンズは意外に冷静で30階層の地図についてや31階層に降りることを考えていた。30階層のボスは通過点としか考えていないのだろう。しばらくしてマルスも目を覚ます。ガンズ同様に腹減った!だった。皆で揃って飲んで食べて笑った。



「地上に戻ったら、そろそろ引っ越しだな。どれほどの家が貸し与えられるんだ?」


「3階建ての家で、作りは拠点に似てます。1階に食堂や厨房やお風呂なんかがあるようです。2階と3階は部屋でした」


「マルスはそんなところに1人で住むのか?」


「俺もそろそろ1人で住むのが辛くって……お手伝いさんよりお嫁さんを紹介して欲しいです」


「リサの同級生で誰かいないのか?」


「無理です。皆さんお貴族様ですから」


「リサはダメなのか?」


「私がマルスさんのお嫁さん?うーん、考えたこともなかったです」


「俺って対象外なのね(涙)」



 話しがひと段落ついたところで、俺は皆に聞いてみた。



「他国が31階層の攻略にてこずっているのはなぜなんだ?」


「あまり他国の攻略状況は公開されてない。あくまでも噂だが、31階層は魔獣もボスも桁違いに強くなるらしい」


「魔獣もか……戦ってみないと分からんが、厄介な話しだな」


「俺たちもメンバーを増やすか、他のクランと連携するか考える時期かもしれん」



 その後も食べて飲んでゴロゴロしてと、とても30階層のボスを討伐してきた英雄には見えない酷いだらけ振りで過ごした。


 そろそろ夜の時間かという頃、俺の横でアスカが眠そうにしているので、俺とアスカは先に寝ることにした。アスカに毛布をだしてやりくるんでやる。気持ちよさそうに眠っている。普通の家に引き取られたら、こんなところで眠ることも無かったろうに。少し気の毒になる。俺はアスカをそばへ抱き寄せくっ付いて眠った。




 アスカと朝の訓練を終え皆の元へ戻る。俺は全員が起きたところで今日は休暇にするか確認した。全員が休暇より地図の作成を進めたいとのことだった。ボスが再出現する前には終わらせたいのが全員の本音。29階層と同じように壁伝いに右回りで進むことにする。


 地図の作成開始から4日間を使い地図を作製は完了した。30階層は29階層に比べかなり広かった。おまけに30階層は何もないが正直な感想だ。野営に使えそうな岩場が数か所あっただけで、あとは特に何もない。ボスが強い階層なだけにさっさと素通りするのがいい階層のようだ。地図を作製し終えた俺たちは、いったん29階層に戻った。水の補給と比較的安全な場所でゆっくり眠りたい気分だったからだ。




 30階層のピリピリした雰囲気から解放されて、29階層の安全な場所で眠ったことで、皆がすっきりした表情に戻った。31階層に初めて降りてみるには、いいタイミングだ。皆の意志を確認しても、いざ31階層へ!だった。早速出発だ。30階層では何度かの戦闘になったが、予定通りに昼前には31階層の入り口に到着した。少し早いが昼食を兼ねて休憩を取る。皆初めての31階層を目前に落ち着きがない。俺は方針を皆に話した。



「これから31階層に降りるが、30階層入り口付近で敵を探索する。今回はどんな魔獣がいるのかの探索が目的と覚えていてくれ。それとリサは状況により自分の判断で30階層に戻って欲しい。俺たちも順次撤退してくるよう動くので心配しなくていい。では出発!」


「了解!」




 マルスを先頭に警戒態勢でゆっくり進む。今回は急ぐ必要はまったくない。とにかくこちらに有利な形で会敵したい。しばらくの探索で見たことのない魔獣を発見する。トカゲのような人型の魔獣、リザードマンと呼ぶことにしよう。1匹ということで討伐してみることにした。ガンズは大盾で守備重視、俺とマルスが両脇から攻撃を仕掛ける。3人は並ぶようにリザードマンの前に出た。


 リザードマンは大剣をガンズに向かって振り下ろす。スピードも力強さもそれほどでもない。少し拍子抜けだ。俺とマルスは早速突きを加える。しかし、攻撃が通った感じがない。リザードマンは驚くほど固い外殻をしていた。何度も場所を変え突いたり、一点を集中して突いたりしたが無駄だった。どうしたものかと攻めあぐねていると、意外なところから声を掛けられる。



「お父様、目!」



 俺はアスカの叫びを聞いて、リザードマンの左目に渾身の突きを打つ。攻撃は通った。マルスも続いて右目を突く。マルスの攻撃も右目を貫いた。これでリザードマンは視界を失い、やみくもな攻撃は俺たちを捉えることはできない。3人は少し距離をとり、じっくりとリザードマンを観察する。するとのどを鳴らすためか、のどの部分の皮膚は比較的柔らかいようだ。俺はリザードマンののどを突いてみる。攻撃が通って、リザードマンは光の粒になって消えた。戦利品はてこずったうろこが何枚か落ちていた。まずは皆で集合して認識合わせが必要だ……


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