表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
142/336

48話 30階層を目指す2

 27階層の岩場で寝ていると、アスカに起こされた。



「お父様、朝の訓練」


「分かった。ちょっと待ってくれ」



 俺は目をこすりながら水を一口飲む。そして剣とアスカを担いで水場の辺りへ移動する。



「アスカ、ここでいいか?」


「うん、あの岩を目印にする」



 早速、アスカは構えては突くを繰り返す。1突き1突きが真剣そのもので、目の前の想像の敵を突いているのだろう。大したものだ。



「赤いワーウルフは早かったか?それともちゃんと見えてたか?」


「見えてた。魔石も見えた。だから一撃」


「父と立ち会ってみるか?」


「立ち会う?立ち会うって何?」


「父と訓練で戦ってみることだ。やってみるか?」


「うん、やってみたい」


「よし」



 俺とアスカは少し距離を取り、向かい合って立った。お互いに剣を構える。対峙してみると、アスカの構えはなかなか隙がなくていい。俺は様子見に仕掛けてみることにした。軽く突きを打つと、アスカは横にステップする。アスカは俺の戦い方をずいぶんと見て覚えたようだ。アスカは反撃に出るか迷ったようだが、構えのままこちらの動きを待った。俺はまた突く。アスカは同じようにステップして避ける。しかし、俺はアスカの移動した方へもう一度突く。アスカは一瞬厳しい表情を見せたが、後ろに大きく下がることを選択をした。いい判断だ。時間を稼ぐことを選んだようだ。アスカは下がった位置のまま俺の動きを待っていた。望みどおりに動いてみる。俺は距離を縮めるようにゆっくり歩く。するとアスカが大きく跳ねるように突いてくる。俺はアスカをまねて横にステップしてよける。アスカは俺の方へ体を向けるが、俺はアスカを抱きかかえ、そのまま肩車してしまう。



「どうだった、アスカ。人と立ち会うのは難しいだろ」


「はい、お父様は強いです」


「アスカも一生懸命訓練しているのがよく分かった。とても強くなったな。次はまたアスカと2人でダンジョンに来よう」


「はい、お父様」



 皆のところへ戻ると、皆はだらだら過ごしていた。ガンズはすでに酒を飲んでいた。



「ガンズ、朝から酒とは優雅だな」


「今回はたんまり持ってきた。失敗すれば死んじまう可能性だってあるから、酒ぐらいは好きに飲むのさ」


「ああ、いつでも俺たちは死と隣り合わせのようなものだ」


「お2人とも縁起の悪いこと言わないでください。私はせめて魔法学校の卒業式には出たいです」


「リサは危なくなったらさっさと逃げろ。時間は稼いでやる」


「ガンズさんを死なせたりしません。私だって黒魔法士なんですから!」


「リサ、よく言った。褒美に1杯飲ませてやる」


「……ありがとうございます?」



 これでリサもぐうたらな1日が確定だ。



 俺とアスカは朝食を食べた。その後、アスカに何かやりたいことはあるか聞いてみた。答えは「訓練」だそうだ。さすがに続けて訓練するのもよくないので、訓練はお昼ご飯を食べ終えてからと言った。俺は迷った挙句、アスカに字を教えることにした。俺はアスカを肩車して、剣の鞘を持って立ち上がる。大きくアルファベットを横に書いていく。



「アスカ、これは文字だ。見たことあるか?」


「伯父様のお家で本で見た」


「読めるのか?」


「うん、伯父様が教えてくれた」


「それじゃアスカの好きな卵は?父を動かして当ててみよう!」


「うん、えーと、Eだから右に行って!」


「了解」



 俺は1文字1文字ステップするように歩いた。Eの前に来た時にアスカが「ストップ!」と言って俺を止める。



「お父様、Eです」


「はい、最初はE、次は何かな?」


「えーと、Gだから右に行って!」


「了解」



 俺はまたステップするように右側に歩いた。



「お父様、Gだから止まって!」


「了解、Gだな。EGを選んだぞ。次は何かな?」


「Gだから……そのまま?」


「了解、またGだな。アスカはEGGを選んだぞ。次は何かな?」


「終わりです。EGGです」


「はい、正解です。では、正解したアスカには、自分でEGGと書いてもらいましょう」



 俺はアスカを地面に降ろして剣の鞘を渡す。アスカは大きくEGGと地面に書く。俺は再びアスカを肩車して、上からアスカが書いた字を見せる。



「どうだ、アスカ。自分で書いた字は正しそうか?」


「うん、ちゃんと書けてる」


「そうだな、ちゃんと書けてる」



 午前中はこれの繰り返して過ごした。昼食を済ませてからアスカを少し昼寝させ、起きてからまた訓練した。訓練の終わりに、また、立ち会ってやった。立ち合いも日課にしよう。その後、ポットにためておいた水を使ってアスカの体を拭いてやった。頭も洗ってやりたかったが、水がもうなくなった。


 そろそろ夕食となる頃、昼寝をしていたガンズとリサも起きてきた。マルスは1日見かけなかったが、どうも1人で狩りをしていたらしい。ボス戦を前に元気なことだ。



「アスカ、今日は干し肉がいいか?ソーセージがいいか?」


「ソーセージ!」



 するとリサが自分の分もソーセージを取り出し、ポットの中に入れる。



「ソーセージを茹でたい人はポットに入れてください」



 皆が1本ずつ入れて、リサに任せる。リサは少し離れた場所にポットを持って行き「ボイル!」と詠唱。お湯たっぷりのポットを持って帰ってきた。しばらく待つと、リサがフォークに刺して1本ずつ皆に取り分ける。



「リサさん、ありがとう」


「はい、アスカちゃん召し上がれ」



 やはり温めるとプリっとしておいしい。俺はパンとチーズとケチャップを取り出し、アスカの分はホットドッグにしてやった。アスカは大喜びだった。3人はもう酒を飲み始めていたので、俺も少し酒を飲むことにした。こうして休暇は終わる。アスカの勉強のことも地上に戻ったら考えてやろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ