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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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44話 ダンジョンでの訓練へ

 リサが暴走した夜の翌朝、アスカと朝の訓練をしていると、リサが俺たちのそばまで歩いてくる。



「グリムさん、私、昨夜のことが断片的にしか記憶にないのですが……やらかしましたよね?」


「ああ、やらかした。ダンジョンへ行くことになったのも覚えてないか?」


「……ごめんなさい」


「謝ることはない。それより今日からダンジョンへ行く。リサは黒魔法士の装備を着ていけばいいのか?」


「いいえ、初歩的な装備は魔法学校の物を持っているので、それを着ていきます」


「足は速いか?」


「?……どういう意味ですか?」


「ダンジョンの往復に何日かかるか知りたいのだが」


「魔法学校の体育の授業で習う程度の速度です」


「それなら近衛兵団の授業と同じか?」


「たぶんそうだと思います」


「分かった。今日からガンズの足に合わせて移動してみるので、無理なくついて行けるか教えてくれ」


「はい、分かりました」


「リサのリュックはマルスが古いのを持ってきてくれるから、荷物はそれに詰めて行ってくれ。10時には出発する。頼んだぞ」


「はい」




 3人で建物に入り、俺とアスカは風呂に入る。リサはダンジョンへ向かう準備を始めたようだ。セイラさんはリイサさんから聞いたレシピでカルパスを焼いてくれている。朝食を食べ終える頃には、ガンズとマルスもここに来るだろう。いよいよメンバー総出でダンジョンへ向かうことになる!




「セイラさん、予定では5日で帰ってきます。すみませんが、ガデンさんの店に伝言を届けておいてください」



 俺は1通の書置きをセイラさんに託す。それと拠点に必要な物を揃えるのと、セイラさんの生活費を含めてお金を渡した。俺から1ゴルを受け取ったセイラさんは、驚いていた(笑)




 5人が揃ったので、いよいよ出発だ。



「セイラさん、留守をお願いします。5日で帰ってきますので」


「はい、皆さんお気をつけて」


「はい、行ってきます」




 俺はいつものようにアスカを肩車。その横にガンズ。後ろにマルスとリサが並んでついてくる。ダンジョンへの門を通過した後、皆が俺たちに注目している。冒険者レベルのトップランカーが知れ渡ったのだろう。近衛兵団の出張所を通過するときは、軽く挨拶だけしておいた。



「おはようございます。今日から訓練で数日ダンジョンに潜ってきます」


「人数が増えましたね、お気をつけて行ってきてください」


「はい、行ってきます」




 そしていよいよダンジョン内へ。ガンズを先頭に急いで21階層に向かうよう指示した。その移動ペースでも、リサは問題なくついてこれるようだ。そして俺はアスカにも指示を出す。



「アスカ、今回からは、戦いが始まったらリサのそばにいてくれ」


「お父様?」


「どうした、アスカ。何か分からないことでもあるか?」


「アスカは戦わないの?」


「今回は訓練だから、いきなり強い敵のところへ行く。アスカにはまだ無理だ。だが、リサの横で皆の戦いをしっかり見て覚えて欲しい」


「はい、お父様」




 俺は道すがらリサに確認する。



「リサ、ブラインドの詠唱はどのくらいかかる?詠唱もアグリさん仕込みか?」


「はい、アグリさんには及びませんが、即詠唱できますよ」


「分かった。俺たち3人がリサに声をかけたときは、敵にブラインドを詠唱すると思っていてくれ。リサの魔法から戦闘開始がほとんどだとは思うがな」


「はい、了解しました」




 道中は魔獣が出てきても、ガンズが切り伏せながら進んだ。それでも21階層の入り口についたのは2日目の夕方だった。俺たちは20階層で野営して、翌朝から21階層で訓練することにした。アスカを毛布でくるんで寝かしつけ、皆の話しに参加する。



「リサ、ここまでの歩きに問題はないか?スタミナも含めてだ」


「はい、ガンズさん。問題ないですよ。このペースなら、まだまだ何日も歩けると思います」


「なら、足が遅いのは俺か。俺のペースで移動だな」


「ガンズだって、普通の冒険者に比べたら早い方だろ?」


「ああ、今までのクランでは足の遅さを気にしたことはなかった」


「このクランは無駄がまったくありませんからね」


「マルスのいたクランでも若手や低レベルの冒険者もいたのか?」


「ガンズのところと一緒で、荷物持ちや戦利品持ちが目的の人がついてきてました。俺にはクランを大きくしたいって感覚が理解できなんですよ」


「俺も同感だ。クランを大きくするメリットがあるのか?」


「名声が欲しいのではないでしょうか?大きなクランに所属していると、それだけで立派な人に見えますから。私だってこのクランにいるので、他人からどれほどの魔法士と思われていることか……」


「名声は冒険者レベルで決まるだろ。王国もそれで冒険者の強さを判断しているんだし」


「そうですね。でも、冒険者レベルが上がらない冒険者は、大きなクランに所属しているって、プライドを持ちたいのではないでしょうか?」


「そんなもんか。グリム、お前にはクランを大きくしたいって気持ちはないんだよな?」


「俺は強くなって、下層の探索に役に立つのなら、どちらでも構わん」


「グリムはぶれないない(笑)」



 そろそろ寝るかとなって、皆が眠りについた。いよいよ明日からこのメンバーでの戦いが始まる。リサが早く慣れてくれると安心なのだが……


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