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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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42話 新しい出会い

 朝の日課と朝食を済ませて、拠点へ戻ってきた。10時の鐘にセシルさんのお姉さんが訪ねてくるからだ。外でアスカの剣の訓練に付き合っていると、門の外に1人の女性が現れた。セシルさんにとても良く似ている美人さんだ。



「失礼ですが、セシルさんのお姉さんですか?」


「はい、セイラと申します」


「どうぞ、お入りください」



 俺は門を開け、拠点の食堂へ招き入れた。お茶とクッキーを用意して、3人でテーブルに座る。



「セシルさんのお話しですと、私どもの家にお手伝いにきていただけるとか……セイラさんのご意志と思って良いのですか?」


「正直迷っています。今の私でお2人のお役に立てるのかどうか……」


「役に立っていただかなくてもかまいません。私もアスカも寄り添うように生きているだけですから。セイラさんもご一緒にどうかと思って引き受けたまでです」


「グリムさん、どういうことでしょう?」


「私はある女性の護衛任務中にその女性の身を傷つけられてしまいました。その女性は結婚することも子供を授かることもあきらめ、王都を去っていきました。私は自分の落ち度を許せずに近衛兵団を退団し、庶民になりました。娘のアスカは両親が魔獣に殺され、村から1人で逃げてきたところを私が保護して、今は娘として育てています。2人で支えあって生きています。ですので、セイラさんも良ければ一緒にと思いました。セイラさんのお力を借りて、アスカの将来を明るいものにしてやるお手伝いをお願いできませんか?」



 セイラさんは泣き続けた。セイラさんの気持ちは分かる。自分だけが救われる苦しさ。でも生きている人は乗り越えないと。死んでいった人たちに申し訳ないから。俺とアスカはセイラさんが落ち着くのをずっと待った。




 ようやくセイラさんが顔を上げる。涙でぐちゃぐちゃな顔だ。アスカが昨日もらったハンカチを手渡す。



「アスカちゃんは、ずいぶんと立派なハンカチを持っているのね」


「はい、フィーネ様からもらいました」


「それじゃ使う訳にはいかないですね」


「ううん、使ってあげないとハンカチが可哀そうです」



 しばらくハンカチをじっと見ていたセイラさんが、おもむろにハンカチを使い始めた。そしてさっぱりした顔をして俺たち2人を見つめる。



「アスカちゃんのハンカチを洗って返さないといけませんね。これからはこちらでお世話になります」


「よかった。セイラさん、今後もよろしくお願いします」


「はい、お2人と一緒に頑張って生きていきましょう。そして必ず皆で幸せになりましょう」



 決心をしたセイラさんは強い女性に見えた。その後はお茶を飲みながら世間話をしていると、集合の時間になり皆が集まってきたので、セイラさんを皆に紹介した。ガンズとマルスも、「お手伝いさんを探さねば……」となったので、セイラさんが知り合いに声をかけてくれることになった。



「では、セイラさん。屋敷を賜ったらすぐにご連絡するので、引っ越しの準備をしておいてください」


「私は焼きだされたので、知人の家に泊めてもらってます」


「それなら、今日からここへ住みますか?学生寮だったので部屋はたくさん空いてます」



 セイラさんはどうしよう?という雰囲気で悩んでいたが、「お世話になります」となった。俺はセイラさんの入場許可を与えていつでも自由に出入りしてくださいと伝えた。


 セイラさんとは夕方にここで合流して、リイサさんの店で歓迎会をすることを伝え、皆で拠点を後にした。




 リイサさんの店で昼食を食べ、貴族街へ向かう。以前アスカと行った道具屋だが、今回は国王陛下からの賜りものだけに貴族側の入り口から入ることにしている。店に入ると、店員はすぐに気付いて、応接室へ案内してくれた。その後、俺の顔見知りの店員といかにも気難しそうな鍛冶職人風のご老人が入ってきた。老人が口を開く。



「国王陛下のご命令で、皆の分の装備を整えろとのことだ。今の装備を見せてもらおう」



 ガンズ、マルス、俺、アスカの順に防具と剣を見せる。剣については構えたり、振ったりもさせられた。リサさんについては黒魔法士で、まだ自分の装備を持っていないと伝えた。



「ゲイテも呼んでくれ。こちらのお嬢さんはゲイテに任せる」


「では順に話していこう。ガンズの大剣はもう少し重いほうがいいだろう。ミスリルで作る。装備も今の物を基本にミスリルで作る。他に希望の物はあるか?」

「俺は次のボス戦で盾と剣も使う。盾は大盾、剣はオーソドックスなものがいい」


「ボス戦?なんのことだ?」


「ダンジョンで30階層のボスと戦うんだ」



 この一言に老人が驚いた。



「お前ら、深層探索のクランか?本気で30階層のボスと戦う気なんだな?」


「当たり前だ、そこらの金稼ぎクランと一緒にするな!」


「分かった、俺も本気で防具や剣を作ってやる。この王国も他国に負けていないと見せつけてやらねばな!」



 この後は、老人ともああだこうだ言いながら装備のことを決めていった。そして一通りの話しが終わる。話が終わったところで、ようやく名前はガデンと教えてくれた。



「お前らに1つだけ注意がある。今回の材料は王国から支給されるが、今後の修理や改造にはミスリルは自分たちで集める必要がある。王国管理の物を使えるのは今回限りと思っておけ。特に嬢ちゃんはこれから大きくなるから、覚悟しておけよ。まあ困ったことがあれば俺のところに相談に来い」


「ああ、30階層のボスの討伐の話しを聞かせにきてやる」



 どうもガンズとガデンさんは気が合ったようだ……(笑)




 リサさんもゲイテさんと戻ってきた。魔法士のローブと魔道具を一式揃えてもらったらしい。少々裾を直すローブ以外は持ち帰れるそうだ。最後にガデンさんに質問された。



「いつ、ボスの攻略に行くんだ?」


「ガデンさんの装備が出来上がったらすぐに」


「分かった、3日後に取りに来てくれ。工房の全員で突貫工事で作ってやる。その代わり、1か月後にはボス討伐の報告に来い」


「無茶を言うおやじだな!だがその依頼は受けてやる」



 どうもガンズとガデンさんはさらに気が合ったようだ……(大笑)


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