41話 国王陛下への謁見2
食事をいただきながら、国王陛下とのお話しが再開された。
「魁は冒険者レベル13が3人おるそうだな」
「はい、今回の討伐の遠征後に3人が13になりました」
「伯爵の話しでは、次回の討伐で30階層のボスは討伐可能だとか?」
「はい、大言壮語と思われるでしょう。しかし、実際にボスと3人で対峙してまいり、無傷で戻ってきております。次回は黒魔法士のリサも参戦しますので、討伐に不安はありません」
「他国と張り合うつもりはないが、わが国でも31階層にたどり着いてくれると、王国としても気分は悪くない」
「是非とも討伐の様子を国王陛下にご報告し、たっぷりとご褒美を頂戴するつもりでおります」
「うむ、報告を楽しみにしておる。ただ、褒美は今回もたっぷり与えねばなるまい。それだけ魁の王国への貢献は大きい。冒険者レベル13の褒美は屋敷となるが、地図の作成と弟の遺品の回収はどうするか……」
すると兄上が国王陛下にご意見される。
「国王陛下、冒険者はダンジョンで得た物は自分の物とする取り決めがあるようです。アズミ公爵様の遺品を国王陛下がお引き取りになるのでしたら、魁の皆に剣と装備を新調してやってはいかがでしょう?」
「なるほど、そなたらはそれでいいのか?……そうだ、魁はトップクラスのクランだったな。特別にミスリルを使用することを許可してやろう。それで武器や装備を作れ」
ミスリルは近衛兵団の装備にのみ使用されている最高級最硬度の金属だ。これを一般人に使用を許可するなど、どれほどの深謝の表れだろう!
「国王陛下、過分なご褒美とは存じておりますが、ありがたく受けとらえていただきます。これで皆の身も守れますので」
「そうだな、皆の命が大事だ。遠慮なく自分に合った装備を作成し励んでくれ」
「はい、かしこまりました。そして国王陛下、地図のご褒美については次回にさせてくださいませ。次回お会いするときには、ボスの討伐報告と30階層の地図もお持ちしますので」
「よい、王国としても其方らが驚くような褒美を考えておこう。今回は借りにしておく」
「はい、よろしくお願いいたします」
国王陛下は公務があり、食事の後は皇太子様とフィーネ様に任せると言われて退席された。
「国王陛下がミスリルで装備を作る許可を与えるとは驚いたな。それだけ叔父上の遺品が戻ってきたのがよほど嬉しかったのだろう」
「お悦びいたたけて良かったです。担いで帰ってきたかいがありました。しかしミスリルとなると、冒険者を始め、ご貴族様からも恨まれそうで怖いです」
「あはは、なるほど。まあ、国王陛下が認めた最強クランとなるので、些細なことは気にするな」
話しが落ち着くと、今度はフィーネ様がお話しをされた。
「リサ、あなたもグリムのクランに所属したのですね」
「はい、就職先が見つからないところを拾っていただきました」
「魔法学校の卒業生で就職先がないことはないでしょ?」
「いいえ、フィーネ様。世の中が平和になったことで、黒魔法士の仕事はとても少ないのです。おまけに私は一般生ですので……ただ、そのおかげで強いクランに所属できたので幸運でした」
「アスカも少し大きくなりましたね」
「はい、フィーネ様。アスカは元気です。伯父様の家でお留守番もしました」
「そうですか、それでは私からご褒美をあげましょう」
フィーネ様はバストンさんに何やら渡され、バストンさんがリサさんとアスカにそれを渡す。
俺はそれを見た途端、目に涙がいっぱいになってしまう。
「グリム、気付きましたか。アグリさんから先日届きました。グランと元気に過ごしているようです。花嫁衣装も無事に作り終え、結婚式でも好評だったそうです。グランはすっかり歩くようになり、目が離せないとも書いてありました。アグリさんは幸せに過ごせています。安心なさい」
「はい、フィーネ様。お聞かせいただき感謝します」
「あなたのことは私からは一切知らせていません。私はそこまでお人好しではありません。近況は自分で報告しなさい」
「はい、いずれアグリさんに託されたことを果たしたときには、必ず自分で報告します」
こうして食事会は無事に終わった。皇太子様からは、近衛兵団の契約鍛冶職人に話しを伝えておくとのことで、明日にでも店に行くことにしよう。それと帰り際にフィーネ様からお願いされた。グリス侯爵家の使用人のセシルさんが俺に頼みがあるらしい。今日の帰りにでも寄って帰るか。
王宮での食事会を終え、馬と馬車は兄上の屋敷に向かい、そこで解散となった。明日は11時に拠点に集合と伝えて、俺はグリス侯爵家に向かった。侯爵家の門でセシルさんを呼びだしてもらう。しばらく待つとセシルさんが屋敷から出てきた。守衛が気を利かせてくれて、侯爵家の庭のベンチを勧めてくれた。
「フィーネ様に聞いて、セシルさんのところへ伺いました。どうされましたか?」
「実はグリムさんにお願いがあります。今度、王国からお屋敷を賜り、お手伝いさんが付けられますね。そのお手伝いさんに私の姉を雇っていただけないでしょうか?」
「セシルさんのお姉さま?それなら侯爵様にお願いされてはどうです?」
「まずは事情をお話しします。以前は姉もこちらでお世話になっていました。その後、服飾の職人だった義兄と出会い、侯爵様のお許しを得て結婚したのです。ですが、先日火災に巻き込まれ、夫と娘を亡くしました。姉には侯爵様にお願いするから、侯爵家に戻って欲しいと説得したのですが、一度身を引いた者が恐れ多いと固辞するのです。そんな中、グリムさんとアスカさんのことを伺って、相談してみようと思いました」
「私の方はセシルさんのお姉様なら安心です。ただ、アスカがいるので辛くなったりしませんか?」
「私はアスカさんがいるから、姉の生きがいになってくれるのではと思ったのです」
「了解しました。では、明日の10時の鐘に拠点へ来るよう、お姉様に伝えてもらえますか?本人の意思を確認してみます」
「分かりました。そのように姉に伝えます。無理なお願いをしてしまい、申し訳ありませんでした」
セシルさんと別れた頃は、もう夕方になっていた。アスカとそのままリイサさんの店に行くことにした。




