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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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37話 親子の休日

 朝はアスカに起こされ目を覚ました。



「お父様、訓練です」



 2人で起きて剣を手に庭へ出る。軽く体をほぐして剣を振り始める。アスカは兄上に作ってもらった自分専用の細剣を振っている。伯爵様からの細剣と皇太子様からの短剣……装備だけ見ると超1流剣士だ(笑)ただ、笑ってばかりもいられなかった、この1月でアスカはかなり成長していた。兄上の訓練のたまものだ。



「アスカ、剣の突きがとても良くなった。兄上に教わったのか?」


「はい、伯父様が一所懸命教えてくれました」


「次のダンジョンはもう少し下まで行って戦えそうだな」


「はい、卵のために頑張ります!」



 子供の成長早すぎだ!




 訓練を終え風呂に入りまったり。風呂から出るとアスカが俺に聞いてきた。



「お父様、湖で買ってもらった髪留めをつけていい?」


「そうだな、アスカもずいぶんと髪が伸びた。朝ご飯を食べに行ったら、キキさんに着け方を聞いてみなさい」


「はい、お父様」



 支度を終えると朝食を食べに出かける。リイサさんの店に着くと、早速アスカはキキさんに声をかける。



「キキさん、これを付けたいです」


「何アスカちゃん?これは髪留めね。アスカちゃんはきれいなストレートだから似合うわよ」



 キキさんはアスカの髪をくるりと一回りさせて、輪の中に髪留めをはさみ込んで棒を差す。



「どお、アスカちゃん。できそうかな?」


「うん、訓練する」



 アスカには髪留めも剣も変わらないようだ(笑)




 朝食を済ませて、そのまま散歩することにした。もちろんアスカは肩車だ。



「アスカ、今日はお休みだから、アスカの行きたいところへ連れて行ってやるぞ」


「お父様、お馬に乗りたい!」


「馬か……」



 馬は近衛兵団に所属していたからこそ乗れていたが、庶民が気軽に乗れるものではなかった。もちろん今の俺にも難しい。



「アスカ、父は馬を持っていないので、今は乗れないんだ。今度、長い休みの時に馬で湖に行こう」


「うん、それがいい。楽しみ」



 結局2人で街中をあてもなく歩いた。すると神殿が見えた。アスカを連れて行ったことがなかったので行ってみることにした。


 神殿はステンドグラスに照らされる光がきれいでアスカも喜んでいた。


 俺はせっかく神殿に来たのだからと、神父様に娘への守護の祈りをお願いした。守護の祈りは、人生でたった1人にささげられる祈りで、主に剣士の無事を祈ることが多い。戦争中の戦いに行く剣士に、家族が念を送って無事を祈ったのが始まりらしい。効果のほどは分からないが、アスカを守ってやれるならそれに越したことはない。


 俺は神父様から預かったメダルにアスカの無事を念じる。そしてそのメダルをアスカの額に付ける。メダルが光の粒になり、終いには消えてなくなった。



「お父様、ありがとう」


「アスカが元気で暮らしていれば、父はそれで十分だ」




 その後は、アスカの好きなチョコレートケーキの店に行って、二人でお茶とケーキを楽しむ。1月しかたっていないのに、アスカは食べ方もさらに丁寧になった。親元を離れたのがいい刺激になったのかもしれない。



「アスカは少しお姉さんになったな」


「お父様?」


「少し大人になった。ケーキの食べ方もとても丁寧で綺麗になった」


「へへっ、お父様に褒められた」


「兄上には剣も作法も教わったのか?」


「はい、勉強も少し教わりました」


「勉強か……もう少し大きくなったら、アスカにも勉強を教えなくてはな」


「お父様は学校に行ったの?」


「ああ、騎士の学校に行った。アスカも学校に行くか?それとも俺が教えるのがいいか?」


「お父様が教えてくれるなら、学校は行かない。ダンジョンにも行くから」


「そうだな、ダンジョンに行くと、学校には通えないな。ダンジョンでも勉強できるように準備するか」


「はい、紙とペン。ペンは伯父様が買ってくれました」


「父の知り合いは、ペンで絵も描いていた。アスカも絵は描くのか?」


「お絵描きは好きだけど上手じゃない」


「絵も練習するとうまくなるんだぞ。何事も毎日の訓練だ」


「……それならもう少し訓練してみる」


「よし、それならアスカの練習用にスケッチブックを買ってやろう」


「スケッチブック?」


「絵を描くための紙の束みたいなものだ。持ち運びやすいし描きやすいぞ」


「うん、お父様買ってください」


「ああ、この後早速お店に行くか」




 その後も昼食を食べ、商店に買い物に行き、ぷらぷら街を歩いたが、拠点には早めに戻った。アスカとのんびり風呂に入ろうと思ったからだ。クランに戻ると食堂に書置きがあった。ガンズからだ。『明朝10時にギルド前に集合。マルスも来る』だそうだ。短いな(笑)


 風呂に薪をくべ、俺とアスカの着替えを準備し、ついでに風呂で洗濯してしまえ!となる。マルスの言う通り、お手伝いさん欲しいな。皆が言っていた、冒険者レベルが13になれば、家とお手伝いさんが用意されるのか?明日になれば分かるか!



「やはりアスカと2人で風呂に入ると、家に帰ってきたという気になる。父は気分がいいぞ」


「はい、アスカもお父様と一緒のお風呂好き」


「お屋敷ではお手伝いさんが洗ってくれたのか?」


「うん、でも途中からエイミさんと入った」


「エイミさんとは仲良くなれたか?」


「うん、大きくなったら裁縫を教えてもらうの!」




 こうして休日は何をするでもなく終わった。親子で過ごす時間はやはり格別だ。


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