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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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36話 兄上への報告

 兄上のところへ3人揃ってダンジョン探索の報告へ伺う。屋敷に到着すると、すぐに執務室に案内された。



「兄上、昨夜3人で無事に帰って参りました」


「皆ご苦労だった。グリム、少し痩せたか?」


「はい、ダンジョン内は野戦より食料事情が厳しいですから」


「ダンジョン内では補給もできないか……」


「兄上には2人をお預かりいただき、ありがとうございました。ガンズの奥方の容態はいかがですか?」


「かなり回復されて、庭の散歩を日課にされている。アスカの面倒もよく見てくれているそうだ。話しが終わったらお呼びしよう」



 俺たち3人はダンジョンでの話しを兄上に始める。今回は書記役がメモを書き残している。時折動作を交えたり、陣形を紙に書いたりしながら説明をした。そして、次回の探索で30階層のボスは討伐可能だと、3人の考えが一致していることも伝えた。最後に作成した29階層の地図を兄上にお渡しし、クラン魁のマルスが作成したことも伝えた。兄上は国王陛下へ直々に報告してくれるとのことだ。これで報告については無事に終了。次は遺品をお見せすることにした。



「兄上、29階層に冒険者の白骨死体がありました。その中に高貴なお方と思われる遺体が1体ありまして、念のため剣と防具を持ち帰りました。兄上が見て何かお気づきになりますか?」



 マルスが俺のリュックから遺品を出して、ワゴンの上に乗せ、兄上のそばに運んでもらう。兄上は立ち上がり、鎧や剣を手にしながら隅々まで見ていた。



「儂も正確には答えられんが、アズミ家の紋章ではないかと思う。公爵様だ。これも国王陛下へお届けしてみる。本来はそちらの物になるゆえ、何か代わりの物を賜ることになるだろう」


「物はともかく、同じ剣士としてゆかりのある人の元へ遺品が戻ればと、担いで上がってきました。どうかご子孫をお探しください」



 そして最後に治療費のこと。



「兄上、奥方の治療費はいくらお納めすればよろしいでしょうか?」


「そのこと、金を受け取ることはできんだろう。これだけダンジョンの報告を受けてしまったからな。国王陛下へもご報告をするつもりでおる。おぬしらも一緒に来てもらうのがよかろう。なので、治療費は儂からの報酬と思ってくれ」



 しかしガンズは素直に受け入れられなかったようだ。



「伯爵様、妻を医者に診せていただき、お屋敷で静養までさせていただきました。この御恩はダンジョンのご報告程度では報いきれません。どうかお支払いをさせてください」


「ガンズ、次は30階層のボスを討伐するのであろう?それも報告に来てもらわなければならない。専属のダンジョン情報提供クランへの報酬と思え」



 さすがのガンズも兄上にこれ以上食い下がれない。諦めたようだ。



「伯爵様、今回はお言葉に甘えさせていただきます。今後も下層攻略に励み、伯爵様へ情報提供で恩返しさせていただきます」


「ああ、よろしく頼むぞ、ガンズ」



 ガンズは深々と頭を下げていた。




 しばらく話しをしていると、奥方とアスカが部屋に入ってきた。ガンズは奥方を、俺はアスカをしっかり抱きしめた。奥方は確かに顔色が良くなっており、回復されたように見える。



「伯爵様のご厚意で、こうして回復しました。私は何か良くない病原菌に感染していたとのことです。でも、今ではすっかり治療が終わりました。ようやく健康にもどれました。長年支えてくださり、ありがとうございました」


「ああ、やっと昔のお前のように元気な姿が見れた。すべて伯爵様のお陰だ」


「ガンズ、お主は今夜はここへ泊って、明日に奥方と帰るがよい。奥方の帰り支度があるからな。アスカはどうする?」


「お父様と帰ります」


「分かった。また遊びにくるのだぞ」


「はい、伯父様、また剣を教えてください」


「ああ、父に教わり毎日の訓練を怠るな」


「はい」




 ガンズを屋敷に残し、俺とアスカとマルスは屋敷を後にした。帰りにマチスから大きなリュックを渡される。兄上がアスカに買い与えてくれたものが入っているらしい。次にお会いした時にお礼を言わねば。おれが担いできたリュックはマルスが持ってくれて、3人で帰り道を進む。アスカはもちろん肩車だ。自分の指定席のように安心して喜んでいる。



「マルス、拠点に荷物を置いたらリイサさんの店に行くぞ」


「親子水入らずのところを悪いですが、ご一緒させてもらいます」


「遠慮はいらん、お前も家族のようなものだ」


「うん、マルスさんも一緒が楽しい」



 拠点に荷物を置き、少し早いが食事に向かう。店に入ると、リイサさんのところに挨拶に行く。



「今日、アスカが帰ってきました。またこれから親子でお世話になります」


「よく帰ってきたね、アスカちゃん。元気そうでなによりだよ」


「はい、リイサさんも元気そう!」



 俺たちはいつものテーブルに着き、俺とマルスはビールとつまみ。アスカは……



「リイサさん、チキンソテーとスクランブルエッグ」



 やはり兄上の家でおいしい物を覚えてきてしまったか……(笑)



「マルスは今夜は家に帰るのか?」


「はい、そのつもりです。明日もお休みします」


「それは構わないが、用事か?」


「はい、そろそろ家の荷物を片付けておこうかと」


「引っ越しでもするのか?」


「冒険者レベルが13に上がります!」


「大きな家がもらえると言ってたな」


「はい、お手伝いさんもつけてもらえます。やっと掃除も洗濯も辞められます」


「そんなに嫌なら自分でお手伝いさんを雇えば良かったろ」


「でも、今回のように1月もダンジョンにいると、雇っているのももったいない気がしてました」


「なるほど。ガンズのところも奥さんのお手伝いがいる方が安心かもな」


「そうですね、お子さんも欲しいと言ってたから、女性が家にいるのは助かるでしょう」


「冒険者レベルの更新は明後日か。ガンズも明日はのんびりしたいだろうからな」


「そうですね、明日はグリムもアスカちゃんとのんびり楽しんでください」



 今夜は早めに解散することにした。帰り道もアスカを肩車して歩く。ようやく家に帰ってきたように感じた。


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