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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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30話 地図作り1

 朝になる。早くに眠ったこともあり、かなりすっきりした。朝食を済ませるとさっそく29階層の入り口の道へ向かう。途中でワーウルフの襲撃は受けたが、マルスの動きが早くなったことで討伐は安定はしている。しばらく進めば無事に入り口に到着。俺たちは壁を左手側にして右回りに進んでいく。壁伝いに進むのは左方向からは絶対に敵が来ない安心感がある。他の方向への集中力が増していいかもしれない。そんなことを考えながら進んでいると、右前方に巨大な岩の塊が見えた。いい目印になるので、壁の目印になりそうな場所まで進み、今度は岩の方へ向かった。


 岩に着いたが周りは平地が続いているだけだった。念のため岩を一回りすると、7体の白骨死体が転がっていた。



「寝込みを襲われたか?あまり抵抗したようには見えん。グリムはどうだ?」


「俺も同感だ。ワーウルフの群れに襲われたんだろう。ダンジョンではこういう場合はどうするんだ?」


「王都民証を回収して、後は使えるものはいただいていいルールだ」


「なら、ありがたく頂戴していこう」



 俺たちは王都民証を回収した。誰も知らない人たちだった。次に荷物を1か所に集め、必要なものを選別していく。あるリュックから手紙が出てきた。中を見るのも悪いと思い、そのまま持ち帰ることにした。また、1体の白骨死体の鎧と剣はかなり高価な物だと判明した。2人の意見も聞いてみたが同様だった。剣は細剣だったのでこの場で回収し、鎧は帰りに余力があれば持ち帰ることにした。小さく高価な戦利品を中心に拝借する。ガンズも盾と剣を拝借していくようだ。3人で手を合わせ元の壁に戻った。そして俺は岩の位置を地図に書き込んだ。


 また壁伝いの進行を再開する。何度かワーウルフと遭遇するが問題なく討伐する。そして休憩を兼ねて昼食にした。



「ここの階層は今のところ丸く壁が取り囲んいるようだな」


「円か楕円が多いです。あまり四角張った階層は記憶にないです」



 俺も念のため地図を確認してみると、確かに円か楕円ばかりだ。



「ダンジョンは魔道具で掘られたと聞いていたから、円か楕円は当たり前なのかもな」


「おいおい、グリム、魔道具で掘られたって本当か?」


「俺はそう聞いていた。今は亡き北限の国が、戦争中に敗戦濃厚となって、起死回生に開発し使用したらしい。穴を掘り、最深部に魔獣を生み出すコア?を設置するもののようだ」


「庶民は誰も知らないと思うぞ、そんな話」


「そうか?貴族の中では普通に語り継がれているがな」


「すると最深部のコアさえ破壊すれば、魔獣はもう出てこないんですね?」


「たぶんそうなのだろう……」




 昼食を終えて先に進む。しばらくすると右前方の地面の色が黒っぽく見える場所があった。



「マルス、あれは何だかわかるか?」


「いいえ、分かりません」


「俺も分からん」


「後で行ってみるか」



 俺たちは前回同様、目印になりそうな壁まで進んでから、目的地へ近づいた。驚いたことに大きな池だった。



「ダンジョン内で池はあったか?」


「あることはありますが、こんなに大きいのは初めてです。でもこれだけ大きいと何かいそうですね」


「確かに。池の周りを一回りしてみるか」



 俺たちは池の周りをゆっくり歩きだす。すると予想したように魔獣が出てきた、半魚人のような魔獣だ。まだ魔獣との距離はあったが、魔獣は泥のような物を投げつけてくる。俺は避けつつ魔獣に近づき、殴るように攻撃してきた魔獣をサイドステップでよけ、背中を一突きした。しかしダメージは無いようで、振り向きざまに俺をまた殴りにかかる。



「魔石がどこだか見えるか?」


「いいえ、見せません。俺は頭を狙います。ガンズは足をお願いします」


「了解」



 2人も攻撃を始める。頭の一撃で少したじろいだようだ。俺も後頭部を突き抜いた。頭に剣が刺さっても動き続けている。だが、やみくもに動いているだけだ。



「魔石の位置を確認したいな」


「そうですね、いろいろ突いてみます」



 マルスが上から下へ着き続けると、へその辺りで光る粒に変わった。



「魔石はへその辺りか」


「そのようですね」


「何かおとしたか?」


「ちょっと待ってください……ありました。薄い青色の石です。俺は見たことない石です。ガンズはどう?」


「俺も初めて見た。そもそも今回の魔獣が初めてだ」


「俺もです。新種発見ですかね。グリムは絵も描ける?描けるなら描いてください。ギルドからご褒美がでます」


「了解、少し待っててくれ」



 俺はペンと紙を取り出し、絵を描きだす。あまり上手いとも思えんが、雰囲気は出ているか。



「どうだ、こんな感じで?」


「はい、十分です。泥と殴りで攻撃と、魔石はへその辺りと書いてあれば十分です」


「了解」



 俺はマルスに言われるまま書き込み、紙はリュックへしまった。


 池の周りを1周する間に3匹討伐した。いずれも戦利品は同じ石だった。



「最大の関心はこの水が飲めるかなんです。ここでポットに汲んで安全な場所で沸かしてみたいです」


「了解」



 ひとまず目印のある壁まで戻る。マルスはここでもかまわないとのことで、壁近くに座り水を沸かしてみた。



「沸騰させて、変な臭いが無ければ、口に含んでみます。刺激がなければ飲んじゃいます」



 少々心配だが、この手のことはマルス頼みだ。しばらくすると湯が沸いた。マルスは水筒のふたにお湯を注ぎ、においをかぐ。そして少し唇に触れさえ、その後少し口に含む。最後に飲み込んでいた。



「たぶん大丈夫だと思います。少し様子をみますから、このまま休憩にしましょう」


「了解」



 俺とガンズは心配そうにマルスを見るが、マルスは気にする様子もない。それどころか。



「魔獣だけ気を付ければ、水浴びくらいはできそうですよ」


「確かにそれほど強い魔獣ではなかったが、水中に引きずり込まれたら助からないぞ」


「なるほど、確かにそうですね。でもあれだけの水、もったいないな」


「池から小さな水道を掘って、別の水たまりを作ることはできるかもしれない。だが、今回はあきらめよう」



 俺はこの休憩の間に地図に池をかき込んだ。


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