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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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25話 男3人、のんびり雑談

 物々交換をした日は24階層までたどり着いた。俺は皆に確認する。



「ここで稼ぐのがいいのか?下層へ進んだ方が稼げるのか?」


「この3人だとここではまだ余裕があるな。どう思うマルス?」


「そうですね、まだまだ下でも大丈夫です。でもこの下からは確認しながら進むのがいいと思います」


「それなら、ここから先も今までみたいな感じで進もう」




 24階層はあまり魔獣とも遭遇しなかった。上がってきた冒険者が狩場にしていたのか?早々に25階層に降りていく。確かにこの階層は何かピンと張りつめている感じがする。



「ここの階層は何か違うな」


「グリムにも伝わったか。25階層までくるクランは低層を目指すクランしかいない。強さのレベルが上がるからな」


「稼ぎ放題ということだな」



 だが、俺たちは結局、今までと変わらず気にせず下層へ向かうルートを歩くことになる。




 しばらく歩くと、マルスが待ての合図。



「ヨツンの赤い奴です。強いですよ。でも狩ります」


「了解」



 俺は前のヨツンの時と同じようにゆっくり近づく。大きく息を吸い込むのも同じ。もちろん俺は一突きいれいる。確かに前のヨツンに比べると固い。そして横へそれる動作も同じようにとった。後ろからマルスが切りかかる。これもヒットする。ただ、腕を振り回したので、ガンズは攻撃を見送った。確かに硬さ、速さ、力強さは今までのとは違う。でもそれだけのことだ。俺に背を向けたヨツンに魔石の辺りを数度突く。ヨツンは今度は俺に殴りかかる。今度はマルスとガンズが同時に切りかかる。そこで光の粒になって消える。



「危なげないな。マルスもガンズも敵が見えてて安心して任せていられる」


「そうですね、ガンズの間を置く辺りは老練な動きです」


「おやじ扱いするな、俺はまだ新婚だぞ!」



 冗談も決まったところで戦利品の回収。また氷結晶石は残っていたが、今回の物は大きい物の、何か所かひびが入っていた。



「傷はありますが、この大きさなら間違いなく高いです」


「それより、赤いヨツンでも短時間に狩れるのが分かったのがでかい。長引くと疲れのリスクもばかにならんからな」


「なるほど、ここからは休憩をはさんで、万全な体勢で挑むのも考慮が必要か」




 翌日までは25階層で討伐を繰り返し25階層で野営をする。そしてさらに翌朝からは26階層に行き2日間討伐をする。こうして7日目には27階層まで降りてきた。驚くことにほとんどダメージを受けていない。だが、マルスの話しでは、ここの階層から大剣を横に振る厄介な魔獣が出現するらしい。さすがにノーダメージとはいかないようだ。マルスもガンズも今までと違い、慎重に進んでいる。



「話しをしていた、アンタイオスがいました。試しに狩ってみますか?」


「俺は狩ったみたいが、どうだガンズ?」


「一度このメンツで対戦してみるか!」



 ガンズの返事を聞いて、俺はアンタイオスに近づく。体も剣もとにかくでかい。おまけに俺に気付いて腰をしっかり落とし、まるで居合抜きのような構えだ。ただ逆に太刀筋は読みやすい。『一度剣を受けてみるか……』そう判断した俺は左へ回り込むように動き、2人が背後を取りやすくする。頃合いとみて、魔獣の間合いに入る。魔獣は横に振りぬいてきた。俺は両手で剣を持ち、剣先を地面に突き刺す。ガツンとでかい音が響く。だが、相手の剣を止められた。2人がこの隙を見逃すこともなく、切りまくっている。魔獣は体を反転させその勢いで剣を横に振ろうとするが、俺がその剣を上段からたたき切る。体のバランスを崩した魔獣は尻もちを付く格好になり、俺たちの餌食となった。そして光の粒となり消える。



「グリム見事だ!アンタイオスの剣を叩き落したやつを初めて見た。討伐の参考になったぜ」


「いや、2人がタイミングよく切りつけてくれたから隙ができた。剣のスピードが最高速になる前に止めてしまうのが楽だな」


「そんな見切りができるのは、グリムだけですよ。それで皆が苦労しているんですから!」



 そして戦利品。今度は黒い金属の塊?が2つ転がっていた。



「これは漆黒鉱石です。黒い鎧を作るときに使う金属です。あまり実用的な金属ではないですが、一部のお貴族様は好まれるようで、そこそこの値段にはなります。お金で考えるとこれを狙うのが儲かりそうです。アンタイオスはこの階層にはうようよいますから」


「俺はガンズの考えに従う。どうするガンズ?」


「うーん、迷うな。どこまで行けるか試したい冒険者魂もうずくが、ここでコツコツ稼ぐのが本来の目的だ……」


「少し早いが飯でも食いながら考えてみてくれ。マルスもそれでいいか?」


「はい、了解です」




 今回も巨大な岩の裏に隠れて休憩する。カルパスも飽きてきたので、干し肉を多めで食べることにした。



「二人は携帯食が嫌になったりしないか?」


「なりますよ。カルパスなんて見るのも嫌です」


「同感だな。でもこれは軽いし日持ちもするから外せない」


「俺の知り合いが、違う味のカルパスを作っていた。重さも日持ちも普通のと変わらないと思うが……」


「グリム、それが本当なら、それで金が稼げると思うぞ」


「そうか?それならガンズの奥方が回復されたら、カルパスの研究をお願いするか」


「俺の嫁でも構わんが、人が増えたら拠点の掃除や料理を作る寮母さんのような人が必要になる。その人に頼んだらどうだ?」


「そもそも学生寮の建物は拠点として使うには不便なのか?」


「俺は拠点にはちょうどいいと思っていました。個室になっていて、2階が男で3階が女みたいな使い分けもできます」


「人数が増えればそんな使い方もできるのか……考えてみると人数増やす必要があるのか?かえってバランスが悪くなるような気がするが」


「金を第一に考えると、人数は必要だ。荷物持ちとしてな。ただ、万が一前衛が崩されるような敵と対峙した場合、大惨事にはなる」


「なるほど、戦闘員と非戦闘員のバランスも考える必要があるのか」


「そうなんです。だからどちらかに偏ってしまう。それで俺はここに所属しましたから」


「そうなるとマルスは一生楽はできないな(笑)」


「いつも言ってますよ、お金は後から付いてくるって。この3人の今回の稼ぎ、とんでもない金額になると思います」


「おれは医者の費用がどの程度のものか知らないが、奥方の費用が賄えればそれでいい」


「いやいや、今回はたまたま俺の嫁だったって話しで、誰かが金が必要になれば、また3人でくればいいだろ」


「確かにその通りだ」


「はい、俺もそう思います」



 結構話し込んでしまった。でもたまには本音で話すのも必要だ。長い付き合いになるのだろうから。


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