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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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23話 冒険者の戦闘準備

 マルスとガンズに案内されて冒険者が使う道具屋へ着く。



「携帯食とポーションを考えているが、それで間に合うか?」


「念のためポーションは多めにお願いします。あと、ダンジョン内で水を調達するので、固形燃料も5つは欲しいです」


「グリムは相変わらずの軽装か?」


「それを2人に相談したかった。この後防具屋も付き合ってくれ」


「了解」



 こうして2人に言われるまま、買い物を済ませる。そして次は防具屋へ向かう。俺は貴族街の防具屋しか行ったことがなかったので、冒険者向けの防具には驚かされた。見たこともない防具がずらりと並んでいる。それに値段もとても安い。


「おい、やたら安いが大丈夫なのか?」


「当たり前だ、グリムが行っていた店はお貴族様向けの店だろ?ここの店の防具は飾りなんかはなく、実用性重視だ。ダンジョン内でもたまに変わった防具を着けているやつはいるがな」


「俺には近衛兵団長からいただいた軽装しかない。最下層に行くのに軽装でも問題ないか?」


「グリムの戦闘スタイルは昔のままですか?」


「ああ、相変わらずのヒットアンドアウェイが好きだ」


「それならスピードも必要だから、軽装か軽鎧ですかね」


「軽鎧?」


「グリムが近衛兵団で着ていた鎧を薄く軽くした感じか」


「中途半端だな、下層の魔獣の一撃なら軽装も軽鎧も変わらんな。軽装で行こう」


「グリムの剣は?」


「普通の直剣だ。ただ、父上の形見をいただいたので、凄まじい業物だ」


「ほう、それは頼りになる。それなら自分が使っていた剣をスペアにすれば問題ないか」


「2人は特に買い物はないのか?」


「勝手知ったるダンジョンだし、普段着で行きますよ」



 まったく頼もしい奴らだ(笑)




 店を出たところでマルスがガンズに話しかける。



「ガンズ、冒険者依頼は確認しましたか?」


「いいや、でも確かに冒険者依頼は見ておいた方が得か」


「すまん、2人に聞きたい。冒険者依頼とは何だ?」


「おいおい、グリム。冒険者依頼も知らずにダンジョンで金を稼いでいたのか?冒険者依頼はダンジョンで討伐して欲しい敵や集めてきて欲しい素材が依頼されていて、戦利品をギルドに売るよりは割がいい。特に下層になればなるほど、素材の依頼料は高くなる」


「なるほど、では早速見に行こう」



 こうして次の行き先は冒険者ギルドとなった。




 冒険者ギルドに行くと壁に大きな掲示板があった。そこにたくさんの張り紙がされている。近づいてみると左側に行くほど依頼が多いが金額は低い。逆に右側は依頼は少ないが金額は高い。俺の目に入ったものはミノタウロスの角が2ゴルとの張り紙。次回からは確認するか。


 マルスが俺の横に来て説明を始めた。



「見てのとおり、右に行くほど難易度が高く金額も高いです。ですからグリムは右だけ見てればいいですよ」


「見た感じだと一番右の掲示板は21階層より下の依頼のようだな」


「はい、ダンジョンに入る前に確認して、戻ってきて依頼が残っていればはがして戦利品と一緒に換金窓口に持って行きます。依頼が先に達成されていることもあるので、その場合は素材を持ち帰ったり、街の店で換金することもあります。ここで換金するより、街で換金する方が少し割がいいし、物によっては何倍も高く買い取る物もあります。クランと取引する店を決めて専属契約すると、安く買い物ができたり、高く買い取ってくれたりとメリットがあります。戻ってきたら紹介しましょう」


「ああ、頼む。俺は本当に何も知らない冒険者だったようだから……」



 しばらくして、ガンズが戻ってくる。



「お待たせした。戻ってくるのは1月後だから、残っているかは分からんが確認はしてきた」


「グリムは知らなかったそうですが、商店と専属契約をしたらどうかと考えたんです?ガンズどう思います?」


「そうだな、このクランなら高級店と契約できそうだ、メリットは大きそうだ。持ち帰ってきた戦利品を見せて度肝を抜いてやろう!」



 おいおい、2人が悪い顔になってるぞ……




 こうしてすべての準備が整い、リイサさんの店へ向かう。今夜はパッと前祝だ。いつものようにリイサさんに声をかけて奥の席に座る。ビールを6杯持って来てくれたリイサさんに、つまみをたっぷり頼む。


 そして盛大に乾杯!一気に飲み干して、2杯目に突入。ナイス、リイサさん(笑)



「この3人でダンジョンに向かえるなど、夢のようだ!2人にはクランに入ってもらえて本当に感謝する」


「いえいえ、こちらこそ。妻のために2人に力を貸してもらえて感謝している」


「俺はとにかく強くなりたいです。どんどん下層を攻略したいです。今までのクランは金儲けばかりで初心を忘れてるのが腹立たしい!」


「確かにマルスの言うとおりだ。グリムは知らないだろうが、最強のクランとか言っておきながら、ボスを避けながら魔獣を討伐してやがる。だから30階層のボスは必ず俺たちで狩る。そして名を刻むんだ」


「名を刻む?何のことだ?」


「階層の入り口に小さな標識がある。それに名前が残る。初めて討伐したクランと討伐者、それと最後に討伐したクランと討伐者が書かれる。だから初討伐は一生名が残るってことだ」


「冒険者にとっては名誉なことなのか?」


「ああっ、討伐者は運みたいなものだが、クランは実力の証だ。30階層を攻略したら、国王陛下が直々に褒美をくれると思う」


「国王陛下とお会いできるのか!俺はクランも拠点も国王陛下から賜った。だから必ず国王陛下の御前にお礼を言いに行きたい!」


「いいですね、グリム。それでこそ俺たちのクランです。攻略を続けていけば、金なんて後からついてくる。心配いらないです!」



 こうして明日の心配など全くしない大騒ぎの夜を過ごし拠点へ帰った。


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