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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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22話 目指せ金儲け!

 10時の鐘に貴族街の門の近くでアスカを肩車して待っていた。



「お父様、ガンズさん!」



 アスカはガンズの姿を見つけて、手を振り、足をバタバタさせる。俺の側へ歩いてきたガンズは、足元のおぼつかない奥方を抱きかかえるように支えていた。俺は取り急ぎ、ガンズが肩に担いでる荷物を預かり、奥方に挨拶する。



「奥方、初めまして、グリムと申します。上にいるのが娘のアスカです」


「グリムさん、初めまして。ガンズの妻のエイミと申します。今回は私などへ過分なご配慮をいただきありがとうございます。夫が話していたとおり、娘さんを肩車されているのですね(笑)」


「初めてのご挨拶なのにすみません。ほら、アスカもご挨拶」


「初めまして、アスカです。よろしくお願いします」


「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」



 挨拶を済ませたところで門へ向かう。今日も守衛は顔見知りなので気軽に声をかける。



「昨日、伯爵家の方で登録しておくと言われたのですが、全員通れそうですか?」



 守衛は念のためと魔道具で確認してくれる。



「はい、皆さんお通りいただいて結構ですよ」


「ありがとうございます」



 そして皆で門を通過する。ガンズも奥方もおっかなびっくりだった。



「どうした、ガンズ?」


「はい、何分私も妻も貴族街に入るのは初めてで……」


「おいおい、ダンジョンの30階層に行ったことのある男の方がよほど珍しいぞ。奥方もご安心ください。貴族と言えど普通に人ですから」



 そして屋敷に着き、執務室に案内された。兄上は奥方を抱きかかえるガンズの姿を見て、まず奥方を部屋へ案内するよう指示する。ガンズと奥方、それと俺から荷物を預かってくれたマチスが2人を伴い部屋を出て行った。



「兄上、いろいろご配慮をありがとうございます。また、娘のアスカをお預かりいただき感謝します」


「伯父様、よろしくお願いします」


「よいよい、グリムのクランの者なら他人でもあるまい。奥方には午後にも医者に診察してもらうが、必要があれば貴族街の病院へしばらく入院してもらうことになるかもしれん」


「はい、よろしくお願いいたします」



 兄上と挨拶をしていると、マチスとガンズが戻ってきた。ガンズは兄上の前で臣下の礼をとる。



「ガルム伯爵様、この度は妻のために過分なご配慮をいただき感謝いたします」


「ガンズ、気にするな。グリムもアスカも世話になっておるのだ。奥方にはできるだけのことはする。安心しなさい」


「はい、よろしくお願いいたします」



 それから、ソファーに掛けるように言われ、皆でソファーに座りお茶がだされる。



「ガンズはダンジョンの30階層まで行ったそうだな。この国では30階層が最下層か?」


「はい、30階層のボスがかなりの強敵で、王国の冒険者では、今のところ討伐が失敗しております。他国では31階層に降りておりますので、口惜しい限りでございます」


「確かに口惜しい、グリムと共に励み、ぜひ討伐を頼む。それとグリムからも聞いておると思うが、ダンジョン討伐の話しは聞かせて欲しい。最近、強い魔獣が地上で目撃されたとの情報が増えた。何かの関係があるのかや、魔獣との効果的な対峙方法も検討したい」


「かしこまりました。知りえる限りのすべてを伯爵様へお伝えいたします」


「ガンズ、今回にかかわらず、末永く付き合ってくれると助かる」


「はい、こちらこそ、よろしくお願いいたします」


「兄上、明日より1カ月の予定でダンジョンへ向かいます。奥方とアスカのことをお願いいたします」



 こうして、屋敷を後にした。ガンズも貴族に奥方を預けてホッとしたようで、やる気に満ちた顔をしている。貴族街の門を抜けたところで、ガンズと打ち合わせをする。



「昼にリイサさんの店でマルスと合流です。そして買い出しに出て、夜はまたリイサさんの店ですか。今夜は俺とマルスも拠点に泊まり、明朝出発です」


「了解、俺もリュックを担いでリイサさんの店に向かうとする」




 3人がリイサさんの店に揃った。ランチを3つ頼んで。とりあえずビールを飲む。



「ガンズ、貴族街はどうでした?」


「マルスも行ったことないだろ?俺は正直ビビりまくった。伯爵様はグリムよりも貴族っぽかった」


「当たり前だ、兄上は貴族で、俺は庶民だ。そうだ、兄上が専属のダンジョン情報提供クランとして提携してくださった。お前らも貴族街に出入り可能になっているぞ」


「ええっ、俺たちが貴族街に入る……俺は遠慮します。行ったところでいいことないです」


「ああ、俺も妻をお預かりいただかなければ、あまり行きたいところではなかった。庶民にはあそこは無理だ」


「まあ、確かに今の俺たちでは貴族街で食事をしただけで破産するからな」



 3人は苦笑いをする。そして真顔になって意識合わせ。



「今回はガンズの奥方の治療代稼ぎが目的だ。下層を目指すより金になる魔獣を討伐するがいいな?」


「2人には本当に申し訳なく思う。次回は死に物狂いで働くので、今回は協力を頼む」


「ええ、どうせ最下層に挑むなら、万全の体勢がいいですから、今回は連携の確認と金儲け目的でいきましょう!」



 しばらくしてキキさんが料理を運んできてくれた。



「そんなに稼がれるなら、ぜひ当店へも落としていってくださいね」



 だそうだ。



「キキさん、冗談抜きで、クランのメンバーはここでの飲食はクラン持ちにしたいんだ。前金を預けておけばいいかな?」


「リイサさんにお伝えしておきます。お3方がお金をいっぱいお持ちなことも合わせて!」




 こうして陽気な昼食をとった、腹も膨らんで買い出しに向かうことになった。


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