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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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19話 初のクラン参加者

 今朝は珍しく、アスカに起こされた。



「お父様、訓練する」


「やる気満々だな。よし、一緒に訓練に行こう」



 2人で日課の朝の訓練をこなす。アスカも実戦を経験したことで、訓練の取り組みが変わったようだ。おかげで2人とも頑張り過ぎて、予定の時間をだいぶ過ぎた。急いで風呂に入り、身支度をしてリイサさんの店へ急ぐ。門を出て大通りに出ると顔見知りとばったり出会う。



「確かアグリさんの魔法学校の先輩のリサさんでしたね。お久しぶりです、グリムです」


「グリム様、ご無沙汰しております。声をかけていただき光栄です」


「よしてください、リサさん。私は近衛兵団を退団し、今は普通の庶民です。なのでグリムと呼んでください」


「はい、分かりました。ところでグリムさん、今日は魔法学校へ用事ですか?」


「いえいえ、今はここに住んでいます」


「あれ、学生寮のことですか?確か冒険者クランの拠点になると聞いていましたが……」


「はい、私のクランの拠点です。ただ、建物は今でも学生寮のままですけど(笑)」


「ええっ、建物がそのまま!それでは荷物もそのままですか?」


「はい、そのままです。アグリさんの教科書もそのまま置いてありましたよ」


「グリムさん、大変申し訳ないのですが、1度だけ学生寮に入れていただけませんか?」


「それは構いませんが、どうされました?」


「はい、とても大切な物を忘れて退去してしまって……」


「それはお困りでしたね。いつ来られます?」


「明後日のお休みの日でもいいですか?今くらいの時間に伺います」


「分かりました。門は通れるようにしておきますから、自由に入ってきてください」


「はい、では明後日よろしくお願いします」



 そしてリサさんは足早に魔法学校に入っていった。もう完全に遅刻でしょ。そして俺たちも食事へ急いで向かった。




 リサさんが来る日、俺とアスカは早めの訓練と早めの朝食を済ませ、拠点に戻っていた。特にやることもないので、庭で訓練の続きをしていた。しばらくすると、リサさんが歩いてくる。



「お待たせして、ごめんなさい」


「いいえ、アスカと剣の訓練をしていましたから。それで部屋へ行けばいいのですか?」


「はい、304号室でした」


「どうぞ、気にせずゆっくりしてきてください」


「はい、お言葉に甘えさせていただきます」



 そう言い残し、リサさんは小走りで階段を上がって行った。俺とアスカも食堂へ戻り、紅茶と昨日買ってきたケーキを用意して、リサさんが降りてくるのを待った。しかし、リサさんが降りてきたのはしばらく経った後だった。



「リサさん、紅茶を飲んでいってください」


「はい、ありがとうございます」



 俺は紅茶とケーキを準備して、皆の分を置いた。



「大事な忘れ物だったのですか?」


「はい、魔法学校に来るときに、母が作ってくれた服でした。ベッドの下にしまっていたのをすっかり忘れてまして」


「でも、無事に手元に戻って良かったですね」


「はい、今となっては母の形見になってしまったので」


「お母様が亡くなられたのですか?」


「はい、母と子の2人家族だったのですが、先月に亡くなったと連絡がありました。私もアグリさんと同様に天涯孤独になりました」


「それはお気の毒です」


「体調が悪いとは連絡を受けていたので、魔法学校を卒業したら村へ帰るつもりでしました。ですが、卒業までは待ってくれませんでした」


「卒業後はどうすることにしたのですか?」


「そうですね、もう村には戻れませんし、職を探すにしても時期が遅いですから。そもそも黒魔法士は戦争が終わり、地上の魔獣も減ったことで、働き口はとても少ないのです。他の学生さんはお貴族様なので、働かないことは問題にならないようですが……」


「どうしてもお困りなら、ここへ相談にきてください。娘と2人のクランで裕福にはしてあげられませんが、住み慣れた部屋と食べることくらいは提供できると思います。就職先を見つけるまでの一時しのぎに利用することも検討してみてください」


「お気持ち感謝します。グリムさん、実はもうものすごく困ってます。私にできることなら掃除でも洗濯でも黒魔法でも何でもしますので、ここへ置いていただけますか?」


「ええ、喜んで。きっとフィーネさんもアグリさんも、リサさんがここに居てくれれば安心されますよ」


「ありがとうございます。きっと冒険者としてもお役に立てるように努力しますので、今後ともよろしくお願いします」


「アスカ、リサさんがクランに入ってくれるよ。春からは3人でここに住むからな」


「リサさん、よろしくお願いします」


「はい、こちらこそ。よろしくお願いしますね、アスカさん」


「では、リサさんの加入を祝って、紅茶とケーキをいただきましょう」



 アスカが待ってましたとばかりにケーキを頬張る。うっとり幸せそうな顔になるのを見て、俺とリサさんは笑い出した。きっとアスカにも身近に女性がいてくれるだけで、プラスになることが多いだろう。そしてリサさんにとっても、ここが自分の家のようになったら良いのだが……




 こうして不思議な縁でリサさんがクランに加入した。後衛を頼めて、アスカを近くで見てくれるだけでも、俺は格段に戦いやすくなる!


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