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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
2章 世界最強の剣士編
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6話 湖に到着

 ジウト領を出て4日、村の好意で泊めてもらったり、野営をしたりで過ごした。そして夕暮れの景色となった頃に、ようやく湖が見える。この湖は別荘地とは比べられないほど規模は小さい。だが、宿屋街もあり、移動の中継点と観光とを合わせて盛況のようだ。俺は以前何度か世話になった宿へ向かう。宿屋へ入ると近衛兵と幼女の組み合わせに不思議そうな顔をされるが、宿屋の店主の老人が俺のことを覚えていたようで、カウンターから声をかけてくれた。



「グリム様、ようこそおいでくださいました。今回も任務の途中ですか?」


「店主殿、お久しぶりです。任務を終えた帰りなのです。今日はお世話になれそうですか?」


「生憎広めのお部屋は空いておらず、旅人向けの1人部屋となってしまいます」



 俺はアスカとで2部屋借りるか、同室にするか迷った。



「部屋は2部屋空いてますか?」


「はい、2部屋ご用意できますが……」



 するとアスカが俺の袖を引っ張る。



「お父様と同じ部屋がいい」



 すると店主が気をきかせてくれた。



「では、1人部屋ですが、大きいベッドが置かれている部屋をご用意しましょう」


「それは助かります。2泊でお願いします」


「かしこまりました。お部屋は2階の1番奥になります」



 店主に金を渡し、引き換えに鍵を受け取る。そしてアスカの手を引き部屋へ向かった。部屋は思ったより広く、荷物の多い行商人向けなのかもしれない。リュックを降ろし、着替えを出して、まずは風呂へ向かうことにした。




 夕食の時間でもあり、風呂には誰もいなかった。2人で体を洗い湯船に浸かる。



「アスカ、明日は馬で湖を1周してみよう」


「うん、こんなにお水がいっぱいあるところは初めてだから楽しみ!」


「夏だったら泳ぐこともできたのだが、さすがにもう寒いな」


「泳ぐ?泳ぐってなに?」


「自分の体を使って水の中を進むんだよ。知らないか?」


「うん、知らない」


「それなら、来年の夏は泳ぎに来るか!」


「うん、泳ぐ!」




 風呂を出ると、2人とも空腹だ。今夜は時間もないので宿屋の食堂で済ませることにする。料理は肉料理と魚料理を1品ずつ、パンとビールも頼んだ。



「お父様、お魚しょっぱくない」


「湖で取れた魚だから、そのまま料理しているんだ。おいしいか?」


「うん、おいしいお魚は初めて!でも、お肉はしょっぱい……」



 子供は正直だ(笑)




 部屋に戻ってもアスカは興奮気味だった。よほど湖の散歩が楽しみらしい。ただ、ベッドへ入るとすぐに寝付いた。俺と生活するようになってまだ日も浅いのに、すっかり信用されているようだ。




 朝になると、アスカはもう「お父様、お散歩!」の一点張り。朝食は宿屋で食べず持って行くことにした。まずは湖畔まででて、いったん馬を止めた。目の前一面が湖となる。きっとアスカは目をキラキラさせているだとうと、顔を覗き込んでみた。予想通りだった(笑)この光景はどうしても、あの幸せだった時間を思い出させる。自分1人ではたどり着けなかった光景。アスカに感謝しなくては……



「アスカ、もう少し先の森の側まで行ってから、朝ご飯にするからな」


「はい、お父様」



 再び馬をゆっくり歩かせる。アスカは動じることもなく、ただただ湖を見つめ続けていた。




 しばらく進むと森の側へ着いた。平らな場所を選び、馬を降り、アスカを抱きかかえて馬から降りる。そして近くの木に馬の手綱を結ぶ。リュックから朝食の入った袋を取り出すとリュックは横にして置く。リュックの左端にアスカを座らせ、右端に朝食を置く。あるのはパンとチーズとブドウジュースだけだが……


 俺はリュックには座らず、地面に直接座った。



「さあ、食べよう」


「お父様、いただきます」



 アスカは左手にパン、右手にチーズを持って、交互に食べている。パンにチーズをはさんで食べることを教えた方がいいか?


 俺はパンにチーズをはさんで左手に持つ、右手にブドウジュースのグラスを持つ。何度かパンをかじり、たまにジュースを飲む。その姿を見てか、アスカもジュースが飲みたくなったようだ。ただ、両手は塞がっている。どうしたものか?と思案。



「お父様、一緒にして」



 パンとチーズを両手で差し出し。俺はアスカからチーズを取り上げ、皿に戻す。そして、アスカに両手でパンを持たせ、さらに俺がその手を包む。



「アスカ、ゆっくり力を入れて、パンの上半分をきるぞ」



 俺は少し力を入れて、パンの上半分に切れ目を入れる。そして、アスカの持つパンの切れ目にチーズをはさんでやる。



「これでいいか?」


「うん、お父様と一緒!」



 アスカはパンをひとかじりすると、次にジュースを飲んで満足気だった。その姿を見て俺も満足した。



「景色のいい場所で食べるとおいしいだろ?」


「うん、おいしい」


「アスカは好き嫌いはないのか?」


「好き嫌い?」


「いっぱい食べたいものが好きな物、あまり食べたくない物は嫌いな物」


「パンもチーズもジュースも好き。いっぱい食べたいから。食べたくないものは……ない?」


「嫌いなものはないのか!アスカは偉いな」


「ううん、食べないとお腹空いちゃうから」



 嫌な物も必要に迫られて食べていたのか?贅沢はさせてやれないが、せめて人並みの食事は食べさせてやりたいな


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