【コント】回転寿司
ゲラゲラコンテスト3参加作品です。
場所……回転寿司店 変な客は最初からテーブル席についている
男、入店。
男「いやあ、回転寿司も久しぶりだなぁ。俺の席はあそこか」
男が変な客の横を通ったところで。
変な客「お客さん」
男「え、俺?」
男、自分を指さす。
変な客「熊、いるよ」
男「あ、はい」
男、変な客の隣のテーブル席につく。
男「……変な人だな。お客さん、って、自分も客だろ。いやぁ、変な人と隣の席になっちゃったなぁ」
男「まあ気にしない! よぉし、何頼もうかな! 俺結構サーモン好きなんだよな。サーモン四皿頼んじゃうか! タブレットで注文出来るんだな」
男「注文っと。来たら音で知らせてくれるんだよな……あれ?」
レーンを指さし確認。
男「もう来た? いや、でも音鳴ってないから別の人のか。俺以外にもサーモン四皿頼むやつ、いるんだなぁ」
男「っと、ああ、来た来た。サーモン四皿」
指さし確認。
男「こっちが俺のか。……って、鳴らないな」
男「……サーモンサーモン」
指さし確認。
男「鳴らない……」
神妙な顔をしてうつむく男。すこし間を開けてから顔を上げて。
男「熊がいるな」
男「……サーモンサーモンサーモンサーモン」
指さし確認。
男「熊だな、熊がいるな! この量のサーモンは熊だな!」
立ち上がりキョロキョロする男。
男「熊見つからないな。ちょっとトイレ行くふりして探すか」
歩き出した男が変な客の横を通ったところで。
変な客「熊、いるでしょ」
男「……はい」
トイレに向かって歩きながら、自然体を装って不審にキョロキョロする男。しかし、熊は見つからず首をかしげる。戻ってきた男が変な客の横を通ったところで。
変な客「お客さん」
男「……はい」
変な客「お客さんのサーモン、いっちゃたよ」
男「あっ、はい。……ありがとうございます」
席に戻る男。
男「熊見つからなかったな。……サーモンサーモンサーモンサーモン」
指さし確認。
男「でも熊いるなぁ。……サーモンサーモンサーモンマヨコーン」
指さし確認。
男「マヨコーン!? 熊がマヨコーン!? サーモンサーモンサーモンハンバーグ。サーモンサーモンサーモンからあげ」
指さし確認。神妙な顔をしてうつむく男。すこし間を開けてから顔を上げて。
男「子連れだな! 子連れの熊がいるなぁ!」
立ち上がり、変な客の方へ行く男。
変な客「お客さん」
男「はい」
変な客「子連れの母熊は、怖いよ」
男「……はい」
神妙に頷き、真剣な表情で席に戻る男。レーンを指さし確認して。
男「子連れだ、子連れの母熊がいるな。子連れの母熊怖いなぁ!」
怯えだす男。
男「子連れは怖いなぁ! 熊だけでも怖いけど、子連れの母熊は怖いなぁ!」
男「怖いなぁ。怖いなぁ。あぁ! サーモンサーモンサーモンプリン」
指さし確認。
男「プリン!? サーモンサーモンプリンプリン。プリンプリンプリンプリン」
指さし確認し、神妙な顔をしてうつむく男。すこし間を開けてから顔を上げ、満面の笑みで。
男「締めに入ってるなぁ! 子連れの母熊が締めに入ってるなぁ! プリン食べた後にサーモン食べられないもんなぁ! プリン食べたらサーモン食べられないもんなぁ!」
男「帰るなぁ、熊が帰るなぁ」
立ち上がり、変な客の方へ行く男。
変な客「お客さん」
男「……はい!」
変な客「熊が締めに入ったね」
男「はぁい!」
席に戻ろうとする男を、変な客が止める。
変な客「お客さん」
男「はい?」
変な客「俺も、帰るよ」
男「……はい!」
席に戻る男。立ち上がり、店から出ていく変な客。
男「帰るなぁ。熊が帰るなぁ。プリンプリンプリンプリン。プリンプリンプリン……」
満面の笑みで指さし確認する男の顔が、驚愕に変わる。
男「……サーモン。プリンプリンサーモンサーモン! サーモンサーモンサーモンサーモン!」
怯えた表情で指さし確認。
男「帰らないなぁ! 熊が帰らないなぁ! プリンの後にサーモンが食えるなぁ! 熊だからプリンの後にサーモンが食えるなぁ!」
立ちあがり、頭を抱えながら怯える男。
男「どうしよう! どうしよう! あっ!?」
顔を上げ、何かに気づく。
男「やばい! 新しいお客さんだ! 新しいお客さんが入店してきちゃう!」
少し悩んでから、覚悟を決めた表情で走り出す男。舞台からはけながら。
男「お客さん! 熊がいるよ!」