さ
「んー…。おはよー、目覚まし目覚まし…っと。」
ガサッ、ガサッ。ザザッ
あれ?布団の中でガサッ、ガサッ?そんな音することある?野原でお昼寝しちゃったのかな。
なんてね。まだ夢の中なのかな。
クルルルルー、クルルー、ルー………。
目覚まし目覚まし…、目覚ましは鳴ってるんだよねー。目覚まし持って野原でお昼寝…、そんな素敵なことしてたっけ。
んー、んー…あっ、あった。よいしょ。
もふ…。
あれ?すごいもふもふだ。ネコちゃんみたい…。私こんな素敵な目覚まし持ってたっけ?
もふもふ、もふもふ、もふ、もふ、もふ。
「あーなにこれ、天国。」
「クルフルルルーー………、シャァァーーー!」
「ふぇ?うわっ、えっ、ネコちゃん?ななんで?てか…ここどこ?」
「シャーーーー!」
「うへぇ、ちょちょちょ、ごめんね。いい子いい子、ほらー首元撫でてあげるからー、にゃんにゃん。」
「クルーン。ゴロゴロ。」
あれ、意外といい子。ごめんねー、さっきは。ナデナデ。
「ゴロゴロ…。」
かわいい…!何だこの天使!でも…、最初はテンパっててネコちゃんかと思ってたけど、よく見たらネコちゃんじゃないのかな?
鳴き方とか、もふもふ感とかはネコちゃんだけど、見た目はどっちかっていうと…、リスちゃん?かな。
あと羽が生えてる…。
こんな生き物、初めてみるなぁ。野原で目が覚めたり、変なネコちゃんがいたり、何かへんだよね。
「つまり君は異世界転生したんだよ」
「はふぇ?だっだ、誰?あれ、誰もいない…。」
「ここだよ。」
「………?もしかして、ネコちゃん喋ってる?しかも異世界転生って、どゆこと?」
「うんうん、びっくりするよね。さっきも言ったけど、君は異世界転生したんだ。なんで転生したかはめんどくさいからはぶくけど………、」
………省くんだ。
「まあでも何も心配する必要はないよ。」
「あっ、もしかしてネコちゃんが付いてきてくれるとか?」
「おっ、すごい!話がはや………くない!」
何そのフェイント…。
「ぼくは付いてかないよ。僕は自由に生きたいからね。それと、異世界はだいたいが、ご都合主義だから心配する必要はないよ。」
たしかに、よく聞くよね。ご都合受験。…?誤字っちゃった。
「じゃあ何でネコちゃんはここにいたの?生まれた場所ってよく重要キャラがいるんじゃないの?」
「そうだね。でもぼくはチュートリアルなんだよ。君がここで不自由なく過ごすためのね」
「へー、でもチュートリアルって実際何するの?ネコちゃんと戦うとか?」
「おっ、すごい!話がはや………」
へ?ほんとに?
「………いね。」
ふぇっ?ちょちょちょちょ、え、あ、あのー、って………どんどん大きくなってくよ、ネコちゃん。
「体も翼もおっきくなってくし、それと目がガチだよ。光ってる、光ってるよ、キラーンって。」
どど、どうしよ、チュートリアルって言ってたし、そんなに強くないのかも私でも勝て……ないよね、これは。
私の十倍くらいあるよ。あと目がガチだよ。もふもふで隠せないくらいガチだよ…。
「っていうのは冗談だよ。ハハハ、ごめんね。異世界ジョークってやつだね。」
「ほへぇ?ネ、ネコちゃん?」
どんどん元に戻ってく…、何そのフェイント……。さすがに○ザい。
「ぼくは君にあるものを授けに来たんだ。あるものっていうのはね……」
「もしかしてチート能力とか?くれたりするの?!」
「おっすごい!話がはや……」
………、あー、やっちゃったかも。
「話がはや………流行り物すぎだね!」
「うん?流行り物?そういうフェイント?」
でもちょっと、おおーってなっちゃった。悔しい…。
「じゃあさ、ネコちゃんは何をくれるの?」
「ぼくは君にね、目標…!この世界での君の目標を授けにきたんだ。」
へー、目標…。やっぱり目標とかあるんだね。どんなのだろ、まったり生活する!とかがいいなぁ。
「そうだね、君にはこの世界にいる魔王を倒して欲しいんだ。ちょっと大変かもだけど。」
農業とか、釣りとか、ウシさんのことお世話したりとか…、素敵だなぁ。………って、
「えぇ?まっ、魔王?倒す?私が?」
「そうだね、頑張って。」
いや、軽っ。魔王退治?………無理だよね。だってチート能力無いんだよ。できないできない。
………あ、そういうことか!
「もー、ネコちゃん。それは話が流行り物すぎ!」
「おー、いいねその返し。」
でしょ、でしょ。自分でもそう思うよ。
「でも今回は本当なんだよね。君は魔王を倒すために異世界転生したんだ。あー、落ち込まないで。大丈夫だから、君には勇者の素質があるんだよ。きっと。だから選ばれたんだ。」
今、きっとって言ったよね。
「まずは、ここから太陽のある方に歩いて行ったら村があるから、とりあえずそこに行ってね。それじゃ、タイトルコール行くね。」
「ようこそ『すばらしい新世界』!」
「ふへぇ?ちょ、ちょっとネコちゃん?せめてじゃあその村までついてきてよ。………ね?」
「ようこそ『すばらしい新世界』!」
ほへぇ?これ、もしかして………。
「おーい、ネコちゃーん?」
「ようこそ『すばらしい新世界』!」
………、ほんとに言ってる?○ザい
「ハッハッハ、冗談だよ。いいよ、そこまでついていってあげるよ。」
……………。
「あれ?固まってる?これも異世界ジョークだって」
「ウ○い」
「ハハハ、声に出てるよ。じゃ、もう一回言っとくね。『すばらしい新世界』にようこそ!名前はなんて言ったけ?」
「………咲玖」
「サクちゃんか、いい名前だね。『すばらしい新世界』にようこそ!サク!」
こうして私の冒険は始まりました。