夢が共有されるという話
白石美沙は大地と楓と同じ一年二組のクラスメイトで、転校してきた楓がこの伊丹野高校で初めての友達だ。
普段はとても明るく男女問わず誰とでも直ぐに仲良くなるため、違うクラスである学、悠理、優奈とも面識がある。
「美沙、突然どうしたの?」
明らかにいつもとは雰囲気の違う美沙に楓が心配そうに話しかけた。
「……美沙?あーなるほど、この人美沙って言うんだー」
美沙は誰にも視線を合わせる訳でもなく、遠くを見ながらまるで何かの台本を棒読みするように話し出した。
「……とりあえず、皆さん、多分既にお気付きかと思いますが、この五人の夢は現在共有されています」
五人は目の前の同級生が何を言っているのか、理解はしているものの、内容に整理が出来ない状態だった。
「白石……でいいのか、とにかく続けてくれ」
「……さすが新羅さんですね、この状況で冷静さを欠かない辺、普通の高校生とはやはり違う」
「御託はいいからさっさと続けろ」
「……そうですねでは続きを、夢が共有されますが、それは実際に現実で起こります、あるいは過去に現実で起こった事が夢に出てくることもあります」
理解に苦しむ事が美沙の口から淡々と告げられた。
夢が現実になる、要は正夢を見せられるという事だ。
「いくつか質問がある」
「……答えられる範囲ならお答えします、新羅さん、どうぞ」
「まず一つ目だが、お前は何者だ、そして目的はなんだ?俺たちに正夢だかなんだかを見せてなにがしたい?」
「……まず何者かという質問ですが、そうですねー、バクとでも呼んで頂けたらいいかと」
「バクってあれ?夢を食べるとか言われてるやつ?」
大地の質問の応えに優奈が割り込んだ。
「……そういえばこの世界ではバクとは夢を食べる動物とされているみたいでしたね、まあ、呼称なんてなんでもいいんですけど親しみやすいかなーと思いまして」
見た目が美沙であるバクと名乗ったソレは優奈の問に表情一つ変えずに淡々と応えた。
「まあいいや、それでバクとやら、目的を教えろ」
「……ああ、目的でしたね、そうですね、見てみたいんですよ、選択を」
「選択だと?」
「……そう選択です」
バクの選択を見たいという応えに大地は少し考える。
「選択っていうのは多分だが、夢を見てどうするかってのを見たいって事じゃないのか?」
大地が考えている間に学がバクに向かって問いかけた。
「……おや、狭間さん流石理解が早い、おっしゃる通り、そのどうするかという選択を見たいのです」
「で?そんなものを見て何がしたい」
「……別にどうこうする予定はありません」