家畜を婚約者にするなんて、いい趣味ですね
むかーーし習った、フランスの歴史学者フィリップ・アリエスが書いた、〈子供〉の誕生をヒントに記載しています。
子供の概念について触れてますが、習った時の解釈なので、勉強の参考にしないでください。
私、侯爵家の娘セシリアは、今、人生で一番無駄な時間を過ごしている。
「セシリア、今宵、君との婚約を破棄する!そして、姉のローラと婚約させて頂く!」
男爵家主催のパーティーで婚約していた伯爵家のご子息様、フェリッジ様がほざいた。
いくら身分が下とはいえ、他家主催のパーティーの場を台無しにする宣言をするとは、未熟な人間なだけあるわ。
私は、冷めた眼でフェリッジ様を見返す。
フェリッジの横には、嬉しそうに私を見る姉のローラがいた。
少し、昔話をしよう。
私は、前世がある。
日本人に生まれ、日本で育ち、一般的な大学を卒業し、公務員として働いた。
死亡理由は思い出せないが、定年退職した記憶はあるので、充分長生きしたんだろう。
再び生まれたときは、とても驚いたが、前世の知識のおかげで比較的ましな生活ができている。
中世ヨーロッパの様なこの世界。
そう、この世界に子供という概念はない。
そもそも、前世の世界でも、子供の概念が生まれたのは、近代に入ってからといわれている。子供の概念が生まれるまで、子供は体が未熟な小さな大人として考えられていた。
つまり、日本であれば保護対象のはずの子供も、大人と同様の重労働、責任能力、判断力が当たり前に求められていた。
この世界では、更にひどい。
まともに会話できる7~8才ごろから、人間(仮)として認められる。
それまでは、家畜と変わらない。
教会は非難しているが、親が玩具として子供を殺めることも、ままある。
また、成人とされる15才に達したにも拘らず、まともな教養がない人間は、(仮)扱いのままとなり、貴族の中では家畜と同様と考えられている。平民が家畜と同様とされているのは、このためだ。
私は、前世の知識から、幼い頃からすぐに話せるように努め、教養に力を入れた。
おかげで、4才頃から人間(仮)扱いされ、成人前に(仮)が外れている。
さて、話を戻そう。
フェリッジ様の横にいる、姉のローラは貴族令嬢ではあるが怠けぐせがあり、おつむが著しく悪いため、年齢は18才、とおに成人しているが未だに(仮)扱いだ。
貴族として最低限の教養が認められていない。
また、両親は家畜ではなく、愛玩動物扱いしており、姉は非常に愛されていると勘違いしている。
当たり前だが、どんなに可愛がっていても愛玩動物も所詮は動物扱い。
家督を継ぐのは私の夫で、姉の夫ではない。
そもそも、動物は人間と結婚できない。
姉はとても裕福な平民と結婚させる予定で、両親は話を進めている。
姉は、言葉は話せるから、フェリッジ様は、人間だと勘違いされているようね。
さあ、私はフェリッジ様に教えてあげなければならない。
姉は成人しているのに未熟な人間であること。
フェリッジ様は私をふって、その姉と婚約するマニアックな方であることを。
そして、私に恥を掻かせた罪を。
歴史に疎い癖に書きたくて書いちゃいました。
中世ヨーロッパの考え方って面白いですよね。
私の習った解釈では、家畜は神から人間に与えられたもの。そのため人間が、どの様に扱っても問題ないって考えが宗派によってあったらしいですよ。
最後に、婉曲された知識なので、受験生の皆さんは参考にしないでください。
歴史好きの皆さんは優しく、お目こぼしください。