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第2章 「ユメノノコリガ」1

「なんてことをしてくれたんだ!」

 おもむろに雑誌のモザイクがかかった箇所を力いっぱい叩きつけ、支配人がどなりつける。

 狭い事務所に、二列に並ばされた数十人が緊張の面持ちで判決を待っている。



『SKBメンバー! 深夜の密会激写!!』



 スクープ! とデカデカと赤字で印字された見出し。

「これは一体どういうことなんだ!」

 事務机に拳を突きたてるたびに、腹の周りについた脂肪が揺れる。

 不明瞭な画像で、はっきりと顔は映っていないが、SKBの衣装を着た少年が派手な化粧をした女性と腕を組んで歩いている。

「あれほど口を酸っぱくして言っていただろ! 遊びだろうが、何だろうが、恋愛は禁止! もし、それを破った者がいたらそいつは即刻解雇だと! こいつは一体誰だ! 本人は分かってるだろ! そいつが、名乗り出るまで今日は帰さんぞ!」

 青筋を立てながら美少年たちに唾をまき散らす支配人。

「お前らはファンの、つまりは、バカな消費者――馬の前に吊り下げられたニンジンと同じ。幻想の夢なんだよ。そのニンジンが中古で、腐っていたら誰も見向きなんてしてくれないし、一本でもそのニンジンが腐っていたら袋で売っている全部の商品が駄目になっていると思われるだろうが!」

 訳の分からない言い回しに、ほとんどの人間がうんざりしていた。

「そんな簡単なことも分からないガキどもが! 別にお前たちじゃなくてもな、代わりなんて腐るほどいるんだよ。お前たちはただの商品なんだ。だから、恋愛なんてバカなことしてないで、何も考えずに馬鹿どもに笑顔を振りまいて、金を落とさせりゃいいんだよ」

「ちっ、うるせーな」

 凍りついた空気の中、ポツリと漏れ聞こえた声。

「おいっ! 今の誰が言った?」

 メガホンのように丸めた雑誌を手に、支配人がこちらへすっ飛んで来る。

「お前か!」

 SKB番号1の青井颯太を雑誌で小突きながら、恫喝する。当然ながら、それに対して首を横に振る青井。

「お前か! お前か!」と、番号順に問い詰めていく。だが、誰もがかぶりを振る。それはそうだ。奴らはそうするに足る根拠があるのを俺は知っていた。

 あいうえお順ということは、支配人が気まぐれを起こさない限り、奴よりも先に俺に当たる。

 次第に眉間に皺が寄って行くのを感じる。俺は、裏切られた気持ちでいっぱいだった。

 ――うるさい。

「お前か!」

 ――うるさい。

「お前か!」

 ――うるさい。うるさい。うるさい。


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