ななし姫
僕の学校には本当にこの世の者か疑いたくなるくらいの超美人がいる。
でもその子の名前は
誰も知らないんだ
「名前?好きに呼べばいいわ。ただの記号なんだから」
「その記号を知りたいんだけど」
ここまで言えばさすがに教えるだろう。
そんな勝ち誇ったオーラを出して親友は“校舎裏の姫君”の答えをまつ。でもそれに対する姫君の答えはとても素っ気ないものだった。
「校舎裏の姫君」
「なっ」
そしてめんどくさそうに読んでいた本に目を戻してそこで会話終了。
なんとも言えない気まずい空気がただよう。
さて、どうしようか。
「・・・先に帰ってるから」
すると親友が踵を返した。しょうがないからすこしだけ時間を潰すことにする。
「変わってるわ」
と、突然姫君が言いだした。
親友と話していたときは無表情だった顔にうっすらと笑みがみえる。
「何が?」
そうたずねると姫君はますます笑みをこくした。
「貴方が」
失礼にも程がある。アイツに言うんならまだしもこの僕に言うだなんて。
「君に言われたくはないんだけど?」
「私は言いたいんだけど?」
それは困ったな。
「どうして追いかけないの?」
「先に帰りたいらしいからね」
だからこそここで時間を潰しているんじゃないか。
「ほら、変わり者」
「なら普通はどうするんだい?」
「追いかけて慰めるわ」
姫君は馬鹿馬鹿しいとでも言いように鼻をならした。
まあ、確かに・・・。少なくとも僕はしないね。
それよりも気になる発言がひとつ。
「前にも誰か泣かしたのか」
「あっちが勝手に帰るのよ。さっきの彼みたいにね」
・・・。ふむ。
なんてかえそうか迷うお言葉だな。
「さっきの彼はしぶといよ?」
とりあえず弁護をしておこうじゃないか。
「興味ないわね」
一刀両断とはこのことだろうか。
姫君はまた本に目を戻した。
「カネ」
「カツアゲですか?」
「鳴ったわよ。不良少年君」
それは大変だ。時間を潰しすぎた。
「帰るよ」
「それがいいわ」
姫君は教室へ行かないのだろうか。
まあ、僕が気にすることじゃないか。
僕も姫君に背を向けた。
「おっ、帰ってきたな」
教室に入ると親友に出迎えられる。教室内は明らかに休み時間モードだ。
「なるほど。未来完了形か」
「何言ってんだ?それよりも協力しろ!いや、してください!!」
何を?、とは聞かなくともわかる。伊達にこいつと親友をやってはいない。
「どうするんだい?」
「まずはお友だちからっ」
ほらね、姫君。僕の親友はしぶといよ。
それから毎日校舎裏に付き添いで行って親友に
「先に帰ってるから」と言われてその場で時間を潰すはめになるのはまた別のおはなし。・・・かなぁ
それでもジャンルは『恋愛』です