外道の魔法少女ディルティネス抗菌記録
冗談抜きでヤバヤバなルナティックパロディローファンタジー世界、チック=ニ=チアサ。
みんな、インフルエンザは本気で怖いぞ!対策は万全にね!!
※現実でも投稿した時期で、既にインフルエンザが猛威を振るい始めています。健康にはご注意を。
※※今作はタグの通りにバトル?シーンだけでなく、人につらい気持ちを想起させる表現も微量ですが入っております。該当される方は無理せず、バックを行ってくださいませ。
20XX年。
日本は掛け値無しの危機に見舞われている。
~~~
冬真っ盛りの現在インフルエンザが日本で、全国的に特大流行中。常に人が溢れている東京すら、ゴーストタウンかと見間違う。
「ガーハッハッハ!!」
病気にかかっていない方がレアとか言う、非常に危険な事態である。
「さすがオレ様!アゴイチの頭脳派魔人!さすがオレ、インフルヘッツァー様よっ!!」
ほとんどが罹患……つまり社会機能がズタボロで、日常生活すら満足に送れていない大ピンチ。
「オレ様の魔力入りインフルエンザウィルスをばら蒔くチカラによって、この国は環境破壊する能力を失い、自然がチカラを取り戻すのだ!!」
頼みの綱である魔法少女達、地球の愛し子ピュアスターもインフルエンザにやられ、まともに動ける状態ではない。
「ガーハッハッハ!!オレ様は無敵だぁ!!」
こんな時に、誰か救世主は居ないのか?
真四角でしゃくれている、強烈なアゴを持つ球状の着ぐるみ男。変形した試される大地のテレビ局マスコットっぽい奴に、日本は潰されてしまうのだろうか?
「ガーハッハ……ンン?ようやく来たか?」
いや、来た。ひとりむなしく、どこぞの駅前広場で高笑いし続けたインフルヘッツァーが、何かに気付いた。
「…………」
静かに。ただ静かに魔人の視界へ入り込んだ、暗色衣装の魔法少女がひとり。
「ほう、強い魔力のオレ様が蒔いたウィルスも効かん魔法少女。面白い、相手になってやる!」
冬の強い風ではためくスカートに、チラチラとつい目が行ってしまうのをなんとか振り……切れない!
ふぉぉぉぉっ!!こんな、こんなぁ!!
はぁ!はぁ!
彼女のチカラで、見える度に次々変わる、とてもとても素敵な桃源郷ぉぉぉ!!
~~~
ふぅ。
……おや?ふたりがいつの間にか戦っています。
いつもの暗色魔法少女ならとっとと“変換”して勝負を決めるのに、今回は何故かまともです。
「ぐあっ!!こんなガキのどこに、こんなパワーが!?」
どうしてでしょう?
「へっ、コイツならどうだっ!」
……ん~~。
「ちっ。コレすらまともなダメージが通らねぇって、どんなズルだよ!即効性のウィルスをぶつけてやったのによおっ!」
もしかして、ピュアスターの代役をしているつもりなのでしょうか?
「…………」
あたしが頭を働かせている間にも続いていた、高速戦闘は終わらない。
しかし、少女は終始無言。
「オラオラオラ!……クソッ、なんで当たらないんだよ!」
ひらりひらりと高速機動で優雅に舞う少女の衣装には、埃すらついておらず汚れもない。
バトル漫画で言うところの、現在ノーダメージ。
高速だからこそ常人には見えないのだが、光速移動できて動体視力もあるあたしならバタつくスカートを…………っと!?
2度は駄目だ!やっちゃったら正気に戻れない!!
んっんん!(咳払い)
1度強力なウィルスアタックを受けているはずだが、彼女には何も影響が見られない。
「こんなに動いているのに、奴の呼吸器にもオレ様が魔力を思いっきり込めたウィルスをバンバン送っているはずなのに!なんでっ!!」
自身のあらゆる戦術を用いても、全く意味をなさない事で彼我の戦力差を理解してしまい、インフルヘッツァーは恐慌寸前。
「畜生っ!ここは逃げるしか無いか!」
なんて怯えて逃げ出す様子を見せる魔人だが、口の端をよく観察すると、少しつり上がっていて何かを企んでいると察せる。
これに気付いたのか何なのか、魔法少女はその場で動かなかった。
「へっ!これでオレ様を逃がしたらそのまま潜伏して、強力な魔力入りウィルスの海に日本が沈んじまうぜ?」
追ってくれば何かの策、逃げ切れればウィルス蔓延。
どうやら奴は2重の策を用意していたらしい。
戦っていた時の恐怖は既に無く、自信に満ちた顔で逃げている。
だが、少女が意味も無く見送る訳はない。
「……魔力入りウィルス全て、インフルヘッツァー前、ピュアスターマネキン、変換」
彼女は日本中に蒔かれたウィルスを1ヶ所に集め、今回欠席の魔法少女5人に似たマネキンをインフルヘッツァーの逃走方向、その眼前に作り出した。
マネキンであるために顔がのっぺりしているが、全員に何故か劇画調の太眉が描かれていて、何とも言えない違和感が感じられる。
……リクチスターだけ困り(太)眉なのは、一体どんな意図が有るのだろうか?
いきなり現れたカラフルなマネキンに驚き、足が止まってしまった魔人にはもうひとつ、追撃が入る。
「……ピュアスターマネキン、ピュアスター同一存在、変換」
魔法少女の言葉に合わせて、マネキンが滑らかに動き出す。
その動きはまるで本物のピュアスター。
数多の敵と戦い抜き、磨かれてきた連携で圧倒する、熟達したチームの動き。
『…………』
リクチやツムジが敵を翻弄し、ホムラやミナモが隙を狙い蹴りこむ。
そして大きなチャンスを今か今かと、強力な魔力塊を作って待ちわびるライカ。
いつもの戦い振りだが、みんな無言。同一存在ではあっても、マネキンはマネキンの様だ。
「ぐわっ、ヤメロ!放せ!!」
……おや?ミナモとリクチが、魔人の腕を左右で掴んで動きを封じている。あまり見ない戦い方だ。本物だったら、外道だと唾棄するかも知れない。
そこにホムラとツムジが頷き合い、連続バク転で距離を取り、着地でしゃがんだ体勢を利用し、息の合った前方大ジャンプ!
「ぬおぉぉぉ!!」
どうやらダブルキックをする様だ。
それを嫌がり暴れようとするインフルヘッツァーだが、魔法少女ふたりがかりの拘束には勝てない模様。
「おおぉぉぉぉおんっ!!」
~~~
暗色の魔法少女が、この間なにもしていなかったのか?と問われれば、否である。
なぜなら。
「ふんっ、ヤツに追撃していたら、ワレが貴様をヤっていたのにな。惜しいものだ!」
もうひとり、魔人がいたのだ。
姿はインフルヘッツァーとほぼ同じ。
と言うか、ほとんど色違い。
色以外の違いを挙げるなら、アゴ。
四角くてしゃくれていて、更に少しの歪み。
「ワレはアゴの片割れ!……では変な意味になるな。ごほん、今回インフルヘッツァーのサポート兼監視役で随行した、ハイエンド也!」
向こうがオレンジなら、こっちは黒。強そう。
「インフルエンザが駄目だった場合に、肺炎球菌を蒔く程度しか役目が無いと思っていたが、なかなか骨のありそうな小娘がやって来たではないか!」
その腹に響く重低音は威圧効果がバッチリなはずなのだが、少女には全く効いていない。
肺炎ドを前に、のんびり欠伸をする余裕まで見せる。
これを見せつけられた魔人。コメカミがぴくぴく動き、口は引きつり、体温が上昇する。
「ほう、いい度胸じゃないか。ワレの魔力入り球菌の恐怖を肺に詰めてやろう」
そう言って頬とアゴを膨らませ、膝を曲げてのけぞり、良くないものを噴き出す準備にかかった。
そんなタイミングである。
「……させない」
まるで瞬間移動!肺炎ドにはそう見えただろう高速ステップにて、少女が超近接戦闘を挑む。
「……っ!!?」
これにひどく驚いて技を中断する肺炎ドだが、もう遅い。
凹。
ハッキリと擬音でそう聞こえてしまう音を出し、遥か上空へ打ち上げた。
「NO~~~~~っ!!」
肺炎ドの悲鳴はさておいて、彼女がやったのはちっさいおててのボディーアッパー。
敵が出す初技お披露目で、技潰しなどと言う外道な行いを平然とこなす、わるーい魔法少女。
だがそれを抜きにして、それだけで気持ちいいほど打ち上がるとは、この幼い外見の子はどれだけ魔力で身体能力が向上しているのだろうか?
……なんて言うけど、あたしも同じ事出来るんですけどね?
こほん。そこで構えを解く彼女。
アレだけ強者ムーヴをした相手に、それだけでは倒せないだろう?なんて疑問はもっとも。
しかしこの子には魔法がある。
「……肺炎ド、対インフルヘッツァー抗生物質、変換」
空の彼方で1度強い光が発生したが、少し経つと光った辺りから小さな錠剤が一粒落ちてきた。
その錠剤を華麗にキャッチした少女は、未だ続く争いの場へ急ぐ。
急ぐ後ろ姿からチラチラと見えっ! 見えっ! ……無い、ちくせうっ!!
……ん~。なんかヒラヒラが足りません。動きが洗練されたのかな?
~~~
ピュアスター(偽)達は息を荒くして、煤、埃、髪型の乱れ、魔法少女服のほつれが目立つ。
最大のピンチである。
「ガーハッハッハ!あの黒い魔法少女とはまるで違う!数で勝っているのに、チカラで負けているではないか!!」
2人で拘束してダブルキック後にライカの魔力塊のコンボを食らい、インフルヘッツァーも中々に煤けているのだが、それでもまだ健在。
その後にもワチャワチャやっていたのだが、目立ったダメージを稼げず。ウィルスの癖に頑強な奴である。
「お前らはこのまま葬ってやろう!ガーハッハッハ!!」
とても気が大きくなっているが、コイツにとっての死神はもうそこまで来ている。
「まずはインフルエンザにして、それからじっくりと甚振ってやすだぁぁあっ!!?」
やはり来ていた。
セリフを切り捨てるが如く、勢いよく駆けてきた少女からドロップキックを食らい、景気よく吹き飛んで転がっていく魔人。
……ドロップキックしたのに、捲れないヒラヒラ。残念。
ボロくなったピュアスター(偽)はこのチャンスを逃がすまいとして、インフルヘッツァーへ飛び付く。
「待て!マテマテマテ!止めてくれ!こんな終わりはイヤだぁ!!」
5人の少女達から仰向けに寝そべった状態で取り押さえられるなんて、一部の紳士にはご褒美にしかならない光景がそこに有った。
「イヤだ!イヤなんだ!せめて死ぬなら、派手に散りたいんだ!」
こんな体勢で食らう必殺技など聞いたことがない。空中で張り付けられるなら、大技だと分かる。
でもこれで予想される攻撃なんて、ロクなモノでは無い。
まるでそのミジメさを煽る様に、ゆっくりと歩み寄る暗色の魔法少女。
その手で見せつけるように持っているのは、例の錠剤。
「ダメ!ダメなんです!お願い許して、反省するから!ダメなんです!」
なんということでしょう……冒頭で我が物顔をして高笑いキメていたウィルスが、今やこんなにしおらしく。
なんとか助かろうと喚き散らすが、断罪する少女は目の前に。
「……口を開けろ」
「ヒィッ!!」
可愛らしいが重さも感じる命令口調。
それで何をされるのか分からない。分からないからこその恐怖に襲われ、声が引きつる。
「……開けなきゃねじ込む」
「…………っ!!!」
悲鳴すらあげられないほどの恐怖に負け、おずおずと命令に従うインフルヘッツァー。
「うぼぉっ!!?」
少女の握り拳が入る程度の空間が出来た直後に、拳がねじ込まれた。
……泣いて反省を口にする敵を、何ともない素振りで処理する外道。と言うよりも、むしろ非道?な魔法少女。
命令に従ったのに理不尽だ!と悲鳴をあげる間もなく、ねじ込まれた拳から錠剤が口内へ落ちると、それは瞬時に効力を発揮した。
対インフルヘッツァー用抗生物質の効果を。
効果を体感し、ひどい攻撃を受けずに死ねると悟ったのだろう。ウィルスの死に顔はとても安らかな物で、そのまま一度強い光を放ってから、光の細かい粒へと変わって消えた。
~~~
「こうして外道な魔法少女の活躍で危機は去り、インフルエンザの猛威も落ち着きを見せるだろう」
「しかし見物人が居ない環境でのみ暴れて活躍すると言う、正義の味方らくしない行動はどこまでも外道であると言えよう。……っと、今回はこれで良し」
「ただいま、ねね姉さん。お使い行ってきたよ」
「お帰りなさい久秀。お疲れ様」
記録をつけ終わり、折よく帰って来たモブい男の子こそ、我が弟にして先ほど暴れていた暗色の外道な魔法少女・ディルティネスである。
「玄関を開ける前に、着ている物を撫でてウィルスを落とした?」
「それは花粉じゃなかったかな?」
「まあいいや。ちゃんとうがい手洗いはしてね?」
姉弟の仲は大変に良い。少し歳が離れているから良かったのか、両親が居ない家だからお互いの支え無しには生きていけないからこそなのか。
「もちろん。それと、少し気晴らしでスイートポテトの材料を買ってきたよ」
「それは楽しみ。あたしにも頂戴ね?」
「…………」
おや?今までこんな冷めた目を、もらった事は無かったはずだけど?
……ジト目はあった。うん、あれはとても可愛かった。
「ヒトの下着でハァハァしてる、ヘンタイから受けたストレスの気晴らしなんだけど」
!!!?
「どっち!?」
「……あぁ」
思わず口から出てしまった言葉に、弟は全てを理解したようだ。
あー、まずい。なんか変な汗が出てきた。
「僕が変身した後にまとわり付いてきた姉さんっぽい気配を、今回無人の町なのにハッキリと感じたから言ってみたけど…………男の状態でも僕にやってたのか」
まずいまずいまずいまずい!!
家庭内ストーキングもバレた!!
「あ……いや、その。ね?出来心なのよ、出来心。夫とは違う、弟だからこそ可愛がりたいというか……ね?」
なんとか切り抜けようと、わりと本音を可愛くオブラートで包んで伝えてみる。
けど、こんなメチャクチャ焦った頭では、どうにもしどろもどろな言葉にしかならない。
それを受けて、より冷たさが増す弟の視線。
「ヘンタイ」
ドス!
「うぐっ!」
「ロリコン」
ブスブスっ!
「ぐはっ!」
※弟だからこそ愛でている。と心で付けているけど、そんなのが伝わるわけもない。
「ブラコン」
「認めてくれて有難うございます!!」
わーい、弟公認だー!! 気持ちは伝わってたー♪ 思いっきり愛でるぞー!!
はしゃぐあたしをブリザードな目で眺め、とてもとても深いため息を吐いた弟が、ぼそりと呟いた。
「しばらく姉さんにおやつは作らない」
「えーーーーっ!!?」
この後たっぷり抗議したけど、本当にしばらくおやつを作ってくれませんでした。くすん。
久秀君、ついにヘンタイ(犯人)を見つける。
しかし罰(おやつ抜き)執行中でもこりずに犯行を繰り返すため、なんかふっ切れてヒト月位で罰を終了したそうです。
以下、設定Q&Aを少々。
読まない方は、読了有り難うございました。また別の作品を読んでいただけると嬉しいです。どうぞこのままブクマジャンプなりなんなりで次へ。
~~~
Q.ダメージ!ダメージ表現と言ったら、アーマーブレイクシステム!なんで採用してないの!?
A.チック=ニ=チアサ世界は健全な世界です。疲労+肌に汚れ+服に煤+髪型の乱れ+服のほつれ。それが最大のダメージ表現でございます。場合によっては小さい傷と血も追加される可能性も残っていますが、その可能性はほぼ無いと思っていて下さい。
Q.インフルヘッツァー?
A.インフルエンザ+ヘッツァー。ヘッツァーは狩りの勢子(追い込み役)と言う意味らしいので、2体1組の登場となりました。
Q.肺炎ド?
A.肺炎+ハイエンド。ハイエンドは最高性能や最上のサービス。つまり最強の肺炎球菌。勢子に追い立てられたエモノをドカン!
Q.今回の魔人コンビ。帽子とか被ってたり、大漁旗持ったり、変身して全身タイツと変なマスクの男になったりする?
A.どうでしょうね?分かりません。大漁旗がどうとかおっしゃるなら、釣りとかなさったらいかがですか?
Q.今回のオn……げふんげふん。魔人コンビのアゴ。モチーフあったりする?
A.検索したら出てきてしまった、理解不能のガチャ景品シリーズ。シャク○ル。あのシャクレの群によるインパクトがしゅごかった……。
Q.ピュアスターの出番が、偽物に盗られた……もう出番はないの?
A.作者の(ネタ)受信機次第です。今後どうなるかなんて、知ったこっちゃねぇ。こちとらノリと勢い、見きり発車の読み切り短編ばかりなのが、その証拠でい(謎のべらんめえ口調)
Q.ピュアスター(偽)は、あの後どうしたの?
A.いつかのプチサム達みたいに、用が済んだら光(魔力の残りカス)へ変換されて消えました。
Q.ディルティネス(久秀)とねね、こいつらなによ?
A.“抗菌”ではなく、同シリーズの“観察”をどうぞ。
Q.ディルティネス!インフルエンザウィルスを消せるなら、最初から(以下略)
A.彼は賢い子です。ウィルスも地球の一部。下手に消すと巡り巡って人間への悪影響が出る可能性を考えて、あのタイミングなのです。アゴ……魔人がばら蒔いた外来種だと分かったので、それのみを排除したのです。
Q.この姉弟、なんでインフルにかかってなかったの?
A.姉の執念。可愛い弟と娘を、インフルなんぞにかからせてなるものかと、ウィルス対策をゴッテゴテに仕込んで撃退していました。……ついでに敵は魔力入りウィルスだったから、保有魔力で抵抗も出来ていた。
Q.ヘンタイさん、どれくらいアレしてたの?
A.中2でディルティネスが変身してからだから……少なくとも3年以上アレしてます。奴は筋金入りのヘンタイです。
Q.そんなにしていたのに、バレたのはなぜ今だったのか。
A.今回無人の町でした。自分と魔人のみ。なのにそれ以外の、普段から感じている気配もある。いつもと違う動きをして、釣り出せないかとまともなバトルをしてみたら、ねっとりとディルティネスに絡み付く何とも言えない邪念。
変身前後から、なんかまとわり付いてくる。もしや?と確信が無くとも言ってみたらフィーーッシュ!ってなモンです。