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俺は冴えない(没ver)  作者: 田舎乃 爺
第二部 第一章 ゆるふわな五日間
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14 フワフワっアッー!

 裏口付近での作業なのにもかかわらず、カーラが手伝っているという情報を手に入れた客が押しかけてくる。それを見越して作っておいた普段の3倍に匹敵する量のカレーは、夕刻を迎える前に全てがなくなってしまった。

 店長で代表のバンドゥーモはあまりの忙しさに直接礼を言いに来ることができず、ありがとうといった伝言をタク越しに伝てきた。それを聞いて店内の邪魔にならないよう、サクたちは客に気づかれぬように密かに屋敷へと戻っていくのだった。

 ちなみに帰り道もカーラはサクの後ろに乗り、ギリギリな攻めをし続ける。その度にだらしない声を上げるサクをワーたちは屋敷に到着するまで笑っていた。

 満身創痍な様子でワーの背から降りたサク。ワーたちに寝床に戻っていいと伝えると、フラフラと足取りで屋敷の中へと入っていった。後ろから羽ばたく音が聞こえてくるが、とにかく休みたいために近くにある椅子へと急ぐ。

 ふかふかなそこに沈み込み、疲れと安堵の意味を込めた特大のため息をつく。正直に言って、ウィーンと戦った時よりも疲れ果てた。ワーたちの背中でもヤバかったが、作業中にぽよんぽよんと柔らかそうに揺れる理想郷おっぱいに目が行ってしまい、気が気ではなかった。

 そんなサクの目の前に、カーラは屈んで視線を合わせてきた。女神のように慈愛に満ちたその笑みと、見せつけているとしか思えない美しい谷間。漂ってくるいつもの甘い香りはサクの心を癒していく。

 しかしながら癒されるだけで終わらなそうな気がしてならないサクは、どんなことをされてもいいように身構える。警戒した様子のサクに、カーラは微笑みを向け続ける。



「サク~。これ、受け取ってもらえますか~?」


「んん? これは……、腕輪?」



 カーラが自らの収納方陣から取り出したのは、銀色の輝きを放つ腕輪。よく見れば、カーラも右手首にそれと同じものを付けていた。

 一体何かと思いつつもそれを受け取るサク。金属っぽい見た目なのだが、ヒンヤリとはしていない。ちょうど人肌と同じような温かさを帯びていた。



「アイリスから貰いましたよね~。結婚指輪~」


「ああ。……もしかして、それに近い物?」


「はい~。『つがい』として認め合った存在にエルフが渡す物なんです~。お手伝いでお金を貯めて、素材を集めて作りました~」


「マジか。かなり手が込んでるんだな」


「頑張りました~。それでは最後の仕上げですね~」



 そういって姿勢を整えるカーラを見て、だらしない座り方からきちっとしたものへと変えるサク。ここにきて高鳴り始めた胸は治まりそうにない。

 いつものフワフワな雰囲気を少し残しながらも、たまに見せる真面目な感じが表面を覆う。綺麗な赤い瞳は、真っ直ぐにサクを見つめていた。

 まさかの2日連続での申し込みに心の整理が追い付かないサクだが、何とか緊張を抑えようと試みる。そんな頑張っている様子を理解しつつ、カーラはその口元に笑みを浮かべた。



「私、『カーラ・エルファス=リーゼロッテ』は、サクの『つがい』となることを誓います。これを、受け入れてくれますか?」


「はい。受け入れます。幸せに思えるように頑張ります。……えっと、この後はどうすれば?」


「では、腕輪を左手首に」



 それに応え、手に持っていた腕輪を左手首の方へと近づける。すると、一瞬輝きを放ったそれはいつのまにかサクの腕に通っていた。

 温かく、フワフワとした感じが腕輪を通して伝わってくる。これを付けていれば、いつでもカーラと一緒にいるような感覚を味わえるようだ。

 初めて聞いたカーラの本名は結構長かった。それを知ることのできたことと、これからも変わらずに共にいられる喜びがサクの心を埋め尽くす。腕輪からそれを感じ取ったカーラは最後の手順を告げる。



「最後にお互いの意思を確認する行為を。この場合は、接吻ですね」


「分かった。それじゃ――」



 一度深呼吸をして気持ちを整える。そして目の前で目をつぶってその時を待っているカーラに、ゆっくりと顔を近づけていった。

 静かな中で、2人の唇が重なる。いつものような激しいディープキスなどではない。お互いの思いを確認するかのように、しっかりと重ね続けた。

 鼓動は高鳴り続けているが、いつまでもこうしていたいと思えた。絶対に不幸になどさせないという強い思いが心の底から込み上げてくる。そしてアイリスの時と同じく、カーラに相応しい存在になることを重ねて心に誓った。

 名残惜しく感じながらも唇を離す。眼前には、ほんのりと頬を染めたカーラ。いつもでならば見せないその表情に目を奪われていると、柔らかくてフッワフワな声で話しかけてくれた。



「これで、一緒ですね~、サク~」


「ああ。俺も頑張るから、これからもよろしくな、カーラ」


「はい~」


「もぷっふ」



 お互いの意思を確かめた直後、カーラは優しくサクを抱きしめた。ロメルの薄暗い道で出会ったころから変わることのないそのフワフワ。顔を真っ赤にしながらも、サクは堪能していた。

 安心する。とても、安心する。はっきりと心の中で言い切るサクは、気づけば眠気が襲い始めていた。そのことを伝えようとしたが、もう口は開くことが出来なくなっていた。

 大切な余韻を台無しにしてしまうような気がしてならない。それでも意識を繋ぎとめられないことをまだ閉じきっていない冴えない目で何とか理解してもらおうとすれば、カーラは慈愛に満ちた表情で応えてくれた



「お疲れ様です、サク」






     ※※






 夕刻までカーラの理想郷おっぱいで眠った後、いつも通りの夕食を迎えた。腕にしているそれを見てアイリスたちもカーラが思いを伝え、行動したのは察したようだ。

 和やかな雰囲気で広間での夕食が続いたのは大変結構。しかしながら、それ以降が問題だった。使用人が用意してくれた風呂に入ろうと脱衣所で服を脱ぎ始めた時に、体に異変が起きたのだ。

 体が縮み始めた。腕輪もそれに応じて変化したことに驚いていれば、案の定、見計らったかのような完璧なタイミングでカーラが脱衣所に入ってきたのである。全てを悟ったサクは、考えるのを止めて流れに身を任せることにした。

 その後はそれはもう丁寧すぎるほどにまで体を洗われ、抱きしめられながらの入浴やあんなことなどをされた。その日の疲れを癒すためのものである風呂の時間が終わった頃には、サクは軽い抜け殻状態になっていた。

 本人が言うには夕食の水の中に例の薬を仕込んでいたらしい。効果は翌朝までだそうだが、それだけの時間があればカーラは十分に楽しむことができ、サクはそれによって嬉し恥ずかしな思いをすることになるのである。

 Mっ気があるし、カーラがくれるお薬(意味深)があるから割とどうにでもなる。繰り広げられるびっくりするほどディープなプレイを他人に見られたらと考えると怖くてしょうがない。でもして欲しい気は、ある。

 分かり易すぎる矛盾を脳内で展開させていると、廊下の向こうにちょうど広間から出てきた。進行方向とは別なために出くわすことはないが、彼女たちは満面の笑みを浮かべるカーラに抱きかかえられるサクの姿を見てしまった。

 これから起こるであろう事をそこから察した彼女たちは苦笑いで送り出す。それをサクも苦笑いで返すと、抱きかかえられたまま部屋へと連れていかれた。

 到着した部屋にて手慣れた手つきで月明かりが照らすベッドに優しく寝かせつけられ、すぐにくるであろうその時をサクは静かに待った。窓の外に見える月がまるでこちらを勇気づけるように輝いているように見えた。

 5年経っても飽きないことから考えて、本当に少年が好きなようだ。年齢から考えても精神的には成長しているはずなのに、この姿になると何故かいつも初々しい反応をしてしまう。そうなるように薬を仕込んでいるらしいが、その調合スキルがあればどんな病でも直せてしまうのではないか。

 


「お待たせしました~」


「お、おおうっぶぅ!?」



 色っぽい寝巻のカーラはそのまま熱いディープキスをしてきた。『つがい』の時とは全く違う欲にまみれたそれに為すすべもなく骨抜きにされたサクは、真っ赤になって横たわる。

 女神というか淫魔に見える妖美な笑み。今日もたっぷりと絞られるようです。それでいて翌朝はお薬の効能で元気溌剌で起きられる。うわぁいやったーちくしょう、やっぱ誰か助けて。

 嫌よ嫌よも好きのうち。無理矢理結論付けて決戦にサクは望む。そんなサクに対して、カーラは艶めかしい手つきで頬に触れた。



「大好きですよ、サク~」


「……ああ。俺もだってンっアッー!」



 優しい光に照らされた部屋の中でサクの絶叫が響く。魔法によって音が遮断されているため、それは誰にも聞かれることはない。サクにとって長い長い夜が、始まった。


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