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俺は冴えない(没ver)  作者: 田舎乃 爺
第二部 第一章 ゆるふわな五日間
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02 アソコがデカい


「癒しなさい!」


「唐突だな」


「問答無用よ。疲れ果てた女王を見捨てる気はないでしょうね?」


「はいはい。随分元気なことで」




 ベッドに横になった状態のまま、レーナは思いっきり強く抱き着いてきた。健全に成長したその柔らかくて暖かい女体を前面で感じて、不覚ながらもムスコが少しずつ大きくなり始めてしまった。

 恐らく、というか間違いなくわざとやっている。こちらがそういった反応をするのが見ていて面白いという悪戯思考は5年前から何も変わっいない。

 実際元気の塊のような褐色少女が抱き着いてきてくれて、煩わしいと思う男性がいようか。いや、ない。そんな典型例ともいえる反語表現を思い浮かべて精神と体を静めようとしたが、レーナが胸からにやにやしながら顔を上げてきた。



「相変わらず、ハクたちとやることはやってるはずなのに弱いのね、サク」


「しょ、しょうがないだろう。どうしてもこういうのに弱いんだよ」


「そう。ふふっ、なら最後までしちゃう?」


「んなっ。冗談にも加減ってもんが――」



 焦るサクの口は途中で止まってしまう。というか、塞がれた。素早く後頭部に手が回されるとそのまま引っ張られ、勢いよくレーナと唇を重ねてしまったのだ。

 某奇妙な冒険の神父のように定番ともいえる素数数えを行おうと試みた直後、口の中に舌が入り込んでくる。ディープキスとかされたらもうまともに考えることなど不可能だった。

 体も密着しているため、高鳴る鼓動はもちろん丸聞こえなのだろう。それを楽しみながら、レーナは自分が満足するまで熱い接吻を続けた。これがまたカーラほどではないのだが、結構なテクニック持っているのにサクは驚くことしかできなかった。

 あなたは本当に一国の女王様なのですか? ぐっちゃぐちゃになった脳内で唯一思い浮かべることができたのはそんな素朴な疑問。こんな我が道を独走するような子が現在、スモークを統治する重要すぎる人物なのだ。

 呼吸を交えながら数分続いたディープキスはようやく終わりを告げ、レーナはそれはそれは満足した様子で唇を離す。そして、まっすぐとサクを見つめた。



「本当ならずっとこうしてたいわ。ああ、仕方がないから女王になったけど、会える機会が減りすぎて嫌になっちゃう」


「……前に会ったのは半年前か。こっちからも何度か連絡とったけど、ご遠慮くださいの一点張りだったよ」


「ニーアが厳しいのよ。糞真面目胸糞イケメンの同僚に感化されて、最近は特にあたしを仕事に貼り付け状態にするの」


「レーナが糞を2回つけるってことは、相当そのイケメンが嫌いなんだな」


「会えば『仕事してください』の連続口頭攻撃が飛んでくんのよ。中身は上にのし上がることを第一優先に考える野心家だから、尚更接したくない」


「大変だな」


「そうよ。だから今日は全力でニーア説き伏せて来たの。さ、2人だけの時間を堪能しましょ」



 そういって笑うレーナの手は迷うことなく元気になり始めている息子の方へと伸びていく。まだ昼間なのに始めようと言うのか。

 流石に度が過ぎるし、心臓がもちそうになったのでその手を途中で掴んで止める。するとレーナは悪戯っぽい笑顔を向けてきた。



「こんなに元気そうなのに、止めちゃうんだ~」


「昼間! しかもここだともしかしたら聞こえるかも!」


「安心して。盛大に喘いであげるわ」


「完全にアウトなんですがそれは……。ああ、もう。手の力を……!」


「ふっふっふ。か弱い女王を傷つけたら、流石の守護騎士でも危ないかもよ~」


「き、きたない、流石女王きたない!」


「何とでもいいなさ~い」



 身体強化魔法を駆使してでもその手をムスコへ向かわせるのを止めない。下手に強く押し返して傷つけるわけにはいかず、その手は十分に大きくなっているムスコの目と鼻の先に迫っていた。

 したいという欲望に満ちた思いがないわけではない。男だから仕方ない。それでも、守りたいムスコがあるんだ。

 自らの中で種が弾けてくれるのを願っていると、その助けを乞うとも解釈できる思いを受けて少し離れていたところで寝ていた相棒が目を覚ましたのが感じ取れた。

 すぐさま周囲の人物に状況を聞くと、制止を突破して一直線へとこの部屋へと向かってくる。その存在の接近をレーナはサクの目を通して察知し、名残惜しそうな表情を浮かべながらもベッドから立ち上がった。



「お預けね。でも、いつか、絶対に続きをしましょ」



 乱れた衣服を整えながら、レーナは強がったような笑顔を向けてくる。そんなスモークの女王に向け、サクも出来る限りの笑みを浮かべてみた。



「……ああ。でも、お手柔らかに頼むぞ」


「それは保証できないかも」


「マジか」



 笑いあう2人。レーナにとっての短く、それだとしても有意義だった時間は部屋の扉が勢いよく開かれたことで終わってしまった。

 開いた扉の向こうにいたのはハク。その爛爛とした黄金色の瞳を真っ直ぐにレーナの方へと向けていた。



「レーナ! サクは連れて行っちゃだめだよ!」


「あら、ハクさん。お目覚めになったんですね」


「サクは私の恋人で、アイリスやカーラとも……って、あれ? レーナ? ニーア?」


「私はニーアです。どうやら色々と早とちりして興奮したサクさんに影響されて起きたんですね。安心してください。もう用は済んだので帰り――」


「ニィィぃぃぃぃア様ぁぁぁぁぁぁああ!!」



 混乱した様子のハクにニーアへと完璧に成り済ましたレーナの声を、屋敷全体が振動していると錯覚するほどの大声が遮った。というか本当に振動した。

 大気を震わせるような叫び声は衰えることはなく、その主は凄まじい速度で駆け抜けてこちらへと向かってきている。一度聞いたら忘れることなどできないその声を発する男を、何度かスモークに行ったことのあるサクははっきりと覚えていた。

 確か1年前にその破格の戦闘力を買われ、王家の護衛を任されている色々な意味でインパクトが強すぎる男だ。まさかここに一緒に来ているとは予想外だ。

 接近してくるそれに驚いて部屋の中に飛び込んだハクは、ベッドから立ち上がったサクの目の前で身構える。動揺しつつも守ろうとしてくれるその小さな背中はとても頼もしい。

 


「他者からのほんの僅かな害意を感じて、この『カイア・デ・ソコ』ぉ! 参上しましたぁ! ご安心ください! 私が来たからにはどんな不定の輩でも一網打尽にしてみせましょぉぉう!!」



 そういって扉の向こうで自らの鍛え上げられた力強すぎる筋肉を惜しみなく見せびらかしながら、カイアは全力のマッスルポーズを決めていた。

 某伝説の超戦闘民族並みの体格。サマーソルトや銀色戦車の幽波紋使いのような整えられた銀色の頭髪。眩しいと思えるほどの眼光を放つ青い瞳。綺麗に割れているアゴ。

 パッと見の印象だけでも凄まじいが、何と言ってもアソコがデカい。体格だけでなく、圧倒的にムスコが大きいのだ。衣服の上からでもはっきりと分かる。

 名前だって並べ替えればそのままだ。修行の旅に出ている神器騎士と同じく、この世界には自分にとって特徴的な名前を持った奴が多く存在するのかもしれない。

 しばらくの沈黙が流れる間も、カイアの輝きは耐えることなく苦笑いするサクたちへと向けられていた。彼にとってはこれがいつものことであり、目の前の存在たちは恥ずかしがっているだけなのだとポジティブに解釈している。

 


「心配してくれてありがとう、カイア。でも大じょ――」


「それはよかったぁ! 女王の姫君であるニーア様に何かあったら一大事ですからなぁ!」


「ええ。だから帰りの準備を――」


「しかぁぁぁぁし、しかし、しかああぁぁぁし! よからぬことを企む不届き者が絶対にいないとは限りません! とりあえずこの屋敷の半径3キロ以内を我が相棒と走って確かめてきます!」


「いや、話を――」


「追い付きましたよ兄貴!」



 話を聞いてくれないカイアに苛立ちを通り越して呆れているレーナに追い打ちをかけるように、カイアほどではないが鍛え上げた肉体の美しい男が遅れてやってきた。

 身体的な特徴はほぼ同じで、違うのは黒髪であることと、身長が一回り小さいことだ。それでも、サクよりも十分に大きい



「おぉ! 来たか我が相棒にして弟ぉ、『フツーア』! さあ、今度は周辺警備だ! 行くぞぉぉぉぉ!」


「はい!」


「だからっ……、ああ、もう!」



 レーナの追及も空しく、カイアと『フツーア・ナ・ソコ』は雄たけびを上げながら走り去ってしまう。彼らがいなくなったそこは、まるで嵐が過ぎ去った後のように静かだった。

 このノリを前にも見たことのあるサク。しかしながら、どちらかといえばあの暑苦しい2人組は嫌いではなかった。ああいった存在はいるだけで面白い。ずっと一緒にいるとなれば話は別だが。

 大きくため息をつくレーナときょとんとして固まっているハク。先ほどまでの元気だったムスコもすっかり委縮したサクは、惨憺たる部屋の空気の中で素直に一言、つぶやいた。



「何だこれ」

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