プロローグ1
ここは、乙女ゲーム「恋の花咲く箱庭で」略して恋庭の舞台、リーファル大公国南西部、隣国トリハルト帝国との国境にほどちかい港町シエルト。
私は、とある女性を待っている。
エリシア・ローズウェル。
恋庭のライバル悪役令嬢である彼女が、昨日ゲームの終盤イベントである婚約者からの断罪イベントで婚約破棄を言い渡された。
その彼女が罪人としてこの港町からとある島へ移送されるのだ。
絶対逃してはならない。
彼女は、私たちに必要なのだから。
夕方近くになり、目立たないような暗色に塗られた馬車が一台、シエルトの領主館へと入っていった。
太陽が完全に沈み、辺りは暗闇にのまれる。
シエルトの領主館は、普段とは違い物々しい警備兵が囲っている。
全身黒の服に身を包んだ私は、同じ格好をした隣の男に目で合図を送る。
男はコクリとひとつだけうなずくと、すぐその場から離れていった。
10分後、港に停泊していた船が一隻、大きな音をたてて爆発した。
暗闇に炎のオレンジがよく映えて、辺りが一気に明るくなる。
何事かと、警備兵が慌てている間に、木の上からそっと領主館へ忍び込んだ。
領主館の西側、ゴミ焼却炉の近くの地面に鉄の扉があった。
開き戸に、がっちりと鎖が巻き付いているところをみると、ここでアタリだろう。
わぁわぁと爆発による騒ぎで、少しの物音などかき消してくれるが、なるべく音をたてないよう素早く鎖をほどくと、地下へ続く暗闇に身を滑り込ませた。
どんなに足音を忍ばせても、地下では響いてしまい、眉間にシワがよる。
左側の壁は石づくり、右側には鉄格子の嵌まった部屋が3つ。
その最奥に目的の人物がいた。
「誰?」
これから少しずつ頑張っていきます。
よろしくお願い致します。
8/29 ご指摘いただき、公国と大公国を勘違いしておりましたので、変更いたしました。
すみません><