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害児の佐藤くんは人が嫌いだ

作者: 花園倉

とっていただきありがとうございます!


あまりいいものではありませんが、最後まで読んでいただければ嬉しいです!

 ある日の小学校の出来事。校長先生が頼みごとあると言ってきた。


「お願いだ!演劇やってくれ!」


 俺は校長先生に頼まれた。


「だれがそんなことするか。どう考えても笑われるだけだろ。」


 俺はこの学校始まって以来の問題児だった。すぐにキレるわ、授業中は外でぶらぶらして遊んでいるか。喧嘩しているかのどっちかだった。周りからは問題を起こす、障害者という事で『害児』とバカにされてはキレて、言った生徒を殴っていた。ちょっとしたガキ大将だった。そんな俺が演劇なんて、あきらかにバカにされ、笑われることが安易に予測できていた。


「頼む!お願いだ!」


 校長先生は土下座して頼んできた。


「校長先生。俺がどれだけの問題児かしっているよね?舞台の上に立って、演技なんて…あきらかにバカにされて笑われるだけでしょうが?わかるでしょ?」


「それでも頼む!やってくれ!」


 校長先生は一歩も引かなかった。何故そこまでして演劇をやらせたいのかわからなかった。


「わかったわかった。やるから頭を上げてくれ…。カッコ悪いし。」


 あまりにも見てられなかったから承諾してしまった。障害者学級に通う、小学2年に対してここまでしてくる先生も、また珍しい光景だった。たしかに…俺の過去を話してから待遇も扱いも俺に合わせてくれた。そんな先生の恩に対して、恩を仇で返すよなことはしたくなかったのも本当だった。


「本当に!?本当にやってくれるのか!?」


「やってもいいけど、絶対に(見る生徒達)笑わせないでくれ」


「わかったわかった!約束するよ!中山先生!後はよろしく!」そう言うと校長先生は機嫌よく教室から出て行った。


『約束』って、いまいちピンっと来なかった。本当に守ってもらえるのだろうかと不安になった。が、やると決めたら全力でやることにした。貴重な昼休み時間を利用して、体育館の舞台で練習した。何度も練習して、失敗しては頑張って、演技をした。たまに群れている小学生が笑いに来るのが『イラ』っとした。


 それから2ヶ月後。全校生徒を体育館に集めて演劇をする日が決まった。今回のシナリオは絵本にあったやつを採用した内容だった。そしてこの演技の主演は俺一人と障害者学級の俺の担任の先生の二人だった。二人と言っても、演技するのは俺一人で先生はサポートだった。


「佐藤くん!日にちが決まったよ!」


「はぁ…やりたくねぇー!やりたくねぇーよ!!」頭をかきむしった。緊張でハゲそうだった。

「でもやるって決めたの佐藤くんだよね?」先生はニッコリ笑いながら言った。


「そうだけどー!そうなんだけどー!嫌だー!!!」


「練習もしたんだし、大丈夫よ!」


「なんの確信があるの?絶対笑われる……………」ガクッと跪いた。


 ここまで来てしまったらもう後には引けなかったけど、ものすごくやりたくなかった。

 そんなこんなで日にちが過ぎ、演劇をする日になった。校長先生はわざわざ、授業をやめてまで全校生徒を体育館に集め、演劇鑑賞会(えんげきかんしょうかい)を開いた。

 生徒達がどんどん体育館に集まり、生徒の何人かは俺を見て、笑い始めていた。


「先生!笑っている人いるじゃん!話が違うよ!」


「大丈夫、気のせいだから気にしんとき」と担任は言った。


 スタンバイにはいってからすでに泣きそうだった。やっぱり約束なんて嘘だったじゃないか。これだから人を信じるなんて嫌だったんだ。でも校長先生との約束だし、もうやだなー。全校生徒とも集まり、嫌々ながら魚の絵が描かれた衣装を見にまとい、舞台の上に立った。その瞬間…


「ギャハハハ!カッコわりー!ダッセー!ギャハハハ!」


 一人の生徒が言った瞬間に周りの全校生徒までも笑い始めた。


「アハハ!変なのー!」

「あいつ、いじめている雑魚じゃん!ダッセーな!アハハ!」


 その笑い声で俺は舞台の上でキレた。


「うっさい!黙れーーーーーーーーー!!!!」涙目で全力で叫んだ。


 すると一人の生徒が「うるさいのお前じゃん!」その瞬間また全校生徒は大笑いしだした。


 舞台の真ん中で俺は全校生徒に笑われ、一気に惨めになって涙が止まらなくなった。そして俺は思った。演劇なんてやるんじゃなかった。こんなのわかっていたはずなのに、信じた俺がバカだった。何が「約束を守る」だよ。嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき。人間なんて大っ嫌いだ。


 その時だった…


「何がおかしい!!!!お前らできんのか?!やってみろよ!ほらやれー!!!」と

 校長先生がキレた。キレながら俺が投げ捨てた衣装を全校生徒の前に投げつけた。その瞬間、全校生徒の笑いが止まり、一気に静かになった。


 校長先生の怒りの矛先が「教師全員」向いた。

「なんでお前らも止めないで笑ってとんじゃー!!」校長先生の怒りの叫びが体育館に響く。


 俺はわかった。先生は、普通止めないといけないのに誰一人自分の担当するクラスの生徒を止めようとしなかったことに。俺はさらにイラついて涙から怒りへと変わった。この瞬間だった。この瞬間、この学校の全貌が明らかになった瞬間だったのかも知れない。


「まて!佐藤!」

「黙れ!嘘つき!」


 校長先生のそう言い、校長先生の声を無視して、体育館の外にダッシュで逃げた。しばらく校内の外で歩いていると、俺の担任の先生が追っかけてきた。そして怒鳴って言ってきた。


「佐藤!体育館に戻りなさい!」

 俺は担任に言った。

「お前も(笑っていた)あいつらと同じだろうが!ついてくんなやボケー!」

 どうせまた切れてくるんだろと思っていたが…。


「ごめんなさい。私が悪かったです。お願い…だから体育館の側まで戻ろう…?」

「スーッハァ…。わかった。次なんかあったらお前の言うこと一切聞かないからな?」


 そう言い、体育館の側まで戻って体育館の様子を覗くと、校長先生が俺の過去について語っていた。半分泣きながら怒っていた俺にはもうどうでもいい話だった。やはり人間なんて大っ嫌いだ。

 この日は、校長先生が俺の過去を生徒に話すと言うことで演劇鑑賞会は終わった。



 数日後。


 また校長先生が俺に演劇をするように頼みに来た。


「佐藤くん!またやってくれないか?」

「嫌です。もうあんなのはごめんだ。話は終わりだ」

「まあまあ、今度こそ大丈夫だからやってくれないか?せっかく練習もしたんだし」

「たしかに…練習したけど、もう忘れた」


 あの日の出来事で演技の内容が完全に飛んでいた。


「わかった!時間を作るからまたやってくれないか?」

「何でそこまでして演劇をやらせたいの?明らかに授業したほうがいいだろう?どう考えても!」

「それはなぁ…。演劇を生徒に見せたいんだよ」

「それは俺がやらなくてもいい話だろうが!完全にわがままだろ!」


 俺は死んでもやりたくなかった。


「わかった。どうしたらまたしてくれる?」

「どうあがいてもしない」

「土下座してでもダメか?」

「あ〜もう!しつこい!」


 そんな会話が1限目まるまる続いた。


「わかった!土下座する!たのむ!やってくれ!」


 校長先生はまた土下座をした。


「あ〜もう!わかった。ただし1ヶ月は時間をちょうだい…。それならやる」


 結局、俺は校長先生のワガママを受け入れることにした。


「本当か!いや〜ありがとう!1ヶ月だな?わかった!練習時間をあげよう!」

「今度こそ一人でも笑ってたら2度としないからな。」

「大丈夫!今度は誰も笑わないから!」

「ふん、そうかよ」


 校長先生は俺の担任に練習するように指示をして、教室から出て行った。


 そして1ヶ月後、授業を()いて生徒を体育館に集めて演劇鑑賞会をまたすることになった。

 俺は内心、(また笑われるんだろうな)と考えていた。今度は笑われても続けようとも考えていた。これで最後、これさえしのげば自由だとも考えた。

 スタンバイにはいって、生徒を見たら誰も笑っている様子はなかった。俺は少し安心したのち舞台に立ち、演技を始めた。演技中もチラチラ生徒達を見て、笑ってないか確認しながら演技をした。


 担任の先生のナレーションを聞き、セリフをはき、演技を的確にこなしていった。

 そして演技が終わり、生徒達から拍手が鳴り響いた。俺は担任の先生と舞台の真ん中に立ち、頭を下げ、演劇鑑賞会は無事に何も起こらず終わったのであった。


 俺は終わった後、教室に戻って、衣装を片付けていたら校長先生がお礼を言いに来た。


「ありがとう!佐藤くん!よかったよー!」

「そうですか。それはよかったですね」

「また次も期待しているよ!」

「は?する訳ないじゃん!これで最後でしょが!!」


 俺はちょっと何言ってるかわからなかった。校長先生は笑顔で言った。


「誰も最後とは言ってないぞ?」

「汚ねぇ!絶対しないからな!!」

「まあまあ、約束は守ったんだし、次も期待しているよ!」

「たしかに誰も笑っていなかった。けどそれはそれでしょ?!」


「いやいや〜ちゃんと守ったんだし、今度も大丈夫だからやってね!」

「うっ…ぐぬぐぬぐぬ…。気が向いたらね」

「じゃまた」


 そう言って、満足そうに校長先生は出て行った。やはり人は嫌いだな。

読んでいただければありがとうございます!


演劇は、プライドがある人はあまりやらないほうがいいかもですね(^_^;)


1評価オナシャス!

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