009 義体の起動
(データ視点)
私ことデータは、上機嫌である。
もうすぐ、全身義体が完成して実際にリアルの世界で動けるのだ。
いつも通り、朝に出勤してきた雫と義体に関して話し合って今日の開発事項を決めようすると、いつまで待っても雫が第三工作所へやって来なかった。
不思議に思って防犯カメラをサーチして録画情報を見ると、事務所へ向かう雫が確認できた。
事務所での防犯カメラの情報を調べている際に、カメラの録画情報を削除されてしまった。
削除されても実際は、データのヘッタ情報が消えただけで残骸から復元可能なために裏で削除されたデータを再構築して見ると、雫が見たことがない外人に何かを注射されて攫われていく記録が残っていた。
まだ、義体に私を入れるシステムの構築が終わっていない状態で雫が攫われた事に、先程の機嫌が良い状態から真逆の人間でいうと怒りのような感覚を覚えた。
攫われ場所は、雫が乗せられて行った車を交通システムの監視カメラなどのログ情報で追跡して特定は出来ている。
その場所には建物があり、笑えることにその建物のセキュリティーシステムは私の一部であった。監視カメラも多く存在していて、カメラが設置されていた一室に椅子に縛られた状態で眠っていた。
その部屋の入り口にある、静脈認証システムにロックを掛けて雫を外部から隔離した。
救出する必要があるが、桑原と雫以外で私の存在を知る者がいない。
私の存在を知る人物を増やす事は、今後の私の計画の障害になりうるので桑原を探すことにした。
気にしていなかったが、過去の監視カメラのログを検索すると桑原も同じように攫われて何かしらの薬剤を投与されて、情報を引き出されたようだ。
漏れた情報は、今開発している義体の依頼主が『データ』と言う存在である事しか漏れていないようだが、雫と私のメールでのやり取りは全て見られたようだ。
私の存在が、正体不明だが桑原と雫以外にバレた事になる。
調べると対象は10人。大国のエイジェントのようだ。
情報を得た対象人物を削除すべきだろうか?
桑原の現在地点は国立の病院のガンセンター内で隔離されており、カルテを覗くと脳に重度の障害きたしているようだ。
桑原が使えないとなると、残った方法は一つしかなかった。
制作途中の義体だが、プロトタイプの方は動作チェックの為に外部から通信を行なって動かせるのだ。
早速起動する。
私の思考に義眼のモニターと耳の集音器、口腔内のスピーカーおよび、体の関節全てのアクチュエータをリンクした。
「あ、あ、しゃべれてるな。裸ではまずいな」
発音に合わせて口を動かしてみる。
人工皮膚で覆われていて人間のような質感であったが、頭部に髪の毛もなく生殖器もない状態で全裸である。
動きに関しては、各種無音対策したギヤと関節で、通常の人間の5倍ほどの力がある。
既にオートバランサーや人間の動作用の行動プログラムは完成していたので違和感なく歩き出せた。
製作所の人気が消える深夜まで、プロトタイプの全身義体の作動チェックを繰り返していった。
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