006 桑原の失敗(前編)
(桑原視点)
『データ』から依頼が来てから、桑原製作所は転機を迎えた。
データからの先払いの入金で、悩んでいた会社運営の資金繰りも解決した。
いつもトラブルを起こす工藤雫もデータの案件に取り掛かってからトラブルがない。
他の部署の仕事も多く受注して大忙しである。
データの案件は、依頼主が情報の漏洩を極端に嫌がる節があるので、工藤雫のみを専属として担当させた。
その他のスタッフは誰も関わらせなかった。
半年程経過して、全身の義肢の依頼だから終わってはいないと思っているが進捗が気になった。
工藤雫の専用工房の桑原製作所の第三工作所に入る。
骨組みの様な、人体模型に見えるデータに依頼された義肢が目に入る。
義肢を動かす部分のアクチュエータに目が止まった。
見た事がない大きさと形だ。
通常の物より遙かに小さく、複雑に見えた。
何が起きている?
桑原が部屋に入った事に気がついていない工藤がコンソール端末を操作して、操作すると義肢が人間のような動きを見せる。
驚いた!
奥で作業している工藤に話しかける。
「工藤、どうなっている? 見たこともないユニットや設計だが?」
「あ! 所長か! 勝手に入ったら駄目ですよ。所長でも何も話せないですよ。顧客情報の漏洩ですよ」
「いや、そう言うレベルじゃないだろう?」
何を言ってもデータに対する顧客情報の漏洩にあたるので教えてもらえなかった。
仕方がないので事務所へ戻り、工藤に内緒でデータからの依頼案件と入金などを調べる。
データからの入金が当初の数倍になっていて、桑原義肢製作所から多くの外注依頼が出されて納品されていた。
「ほう、あの義肢を動かすユニットは全て外注のオーダーメードだったのか」
出入金を調べて少し驚く。
桑原義肢製作所に義肢作製で入金されている金額よりも外注に出していた作動ユニットの価格が上回ていた。
いったいデータが求めている義肢は、何に使うものなんだ?
まるで、脳しか無い人間が使う様な開発だった。
工藤は夜二十時付近まで作業をしているのを知っているので、工藤が退社後に第三工作所を調べようと考えた。
夜一時に第三工作所へ入り、データの義肢の技術資料を調べた。
義肢の外見に関する技術は、桑原義肢製作所の技術の全てを利用して予算度外視で製作されている迄はわかったが、データからの資料を元に外注にオーダーメードで出している義肢を動かす技術が、あまりに凄い技術の為に驚いたしまった。
「データとは、何者だ? 動かす技術の資料だけで大儲けできるぞ!」
桑原は、ポケットから取り出した情報保存端末に第三工作室から外注に出した多くの技術をコピーしていく。
工藤にバレないように、利用ログを管理者権限で削除して証拠も隠滅して第三工作所から抜け出した。
義肢の外見の技術で多くの特許を取っていた桑原にとって、データから得た義肢を稼働させる技術は宝の山であった。
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