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003 工藤雫

(工藤視点)

 工藤雫は、人形が大好きである。

 普通の人間よりも、人形が大好きなのである。


 心配した両親が精神科に相談した際には、ピグマリオンコンプレックスと言われていた。

 彼女の場合は、心のない対象である人形を愛するディスコミュニケーション的なものではない。


 本当の肉体は朽ちていくが、人形を考えると永遠の美しさを保つ気がするからである。

 不老不死の欲望が人一倍強かったのかもしれない。


 実際は長い年月が経過すれば人形も朽ち果てていくのだが、それすらも回避することを考えていた。

 彼女の内に秘めた将来の夢は、【自分が人形になる事】であった。

 夢を追いかける22歳の女子である。


 密かに持っている現実味がない夢の延長線上で、日本最高峰の義肢に関しての技術力がある桑原義肢製作所へ就職をした。

 自分が作った義肢が多くの人々に使用されている事に誇りを持つなどではなく、自分の作った義肢がどれだけ美しく後世に残るかが現在の彼女の目的であった。

 そのため、彼女が製作する義肢は最高級の出来栄えであるが、コストに妥協を許さない上に実際に使用する人の事を考えない為に、良くトラブルを起こしていた。


「また、依頼かよ! 桑原所長の奴! 前の依頼がまだ終わってない上に、あんなコストで義肢を作れって現場をなめてるよな」


 愚痴を言いながら、雫専用の義肢製作室である第三工作室の情報端末にメールで来た依頼を読み始めた。


「なんだ、この依頼!」


 依頼書の内容が、ありえない程の好条件で驚いた。

 予算が過剰に割り振られていて追加要求もOKである点と期限が無期限である。

 製作部位も内臓以外の全身のあらゆる部位であった。


「義肢で人形を作る気か? 人形になるつもりか?」


 依頼主が自分と同じ思考である気配を感じとり、驚きと大変興味が湧いた。


 ネットに存在する意思体の『データ』の人間社会に出るための人間そっくりなロボット製作と、雫の願いである人形になりたいと言う願いは違うものだが手段が類似しているため入社始まって以来のテンション上昇に雫の鼻から鼻血が出た。


 現在受けている依頼を放棄して、すぐさま『データ』から来た依頼に取り掛かる。

 雫の口元は、意識せずににやけていた。


 その後に、桑原と同じ疑問に雫もたどり着く。

 製作物の詳しい希望ヒアリングを取る為に、依頼主の『データ』とメールでやり取りを開始したが、何処からのメールなのか全くわからない。

 だが、来たメールに返信すると『データ』へ届くのだった。


 しかも、桑原義肢製作所の義肢は、外見だけでなく最低限の生活を可能にする稼動システムが入っている。

 外見の技術力は、世界最高峰と言えるが作動に関しては技術力が足りなかった。

 ところが、『データ』から送られてくる作動用の設計図が信じられない程に精密で、なおかつ特許をすぐにでも取得できる内容だったのだ。

 何世代もの未来からの技術が舞い込んだ気がするほどだった。


 もはや、雫を止める障害はほぼなく、時間と技術と予算を全て使い切り雫は全身義体を製作していく。


 メールとのやり取りは業務的な内容であったが、データと雫の人間にいかに近づいた義肢を作るかの討論会の様だった。


 月日が経つに連れて、この機会を与えてくれた『データ』様に褒められる事が雫の目的になって行った。


※低い評価(5:5ではなく1:1)でも連載の力になります。

連載継続の為に、評価とブックマークをお願いします。


※作者多忙の為、誤字修正に力を避けません。誤字修正大歓迎!遠慮なく申し込んでください。

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