019 電脳化
(工藤視点)
工藤雫はデータと開発できなくなったが、自分の夢は継続中であった。
工藤雫は、普通の人間よりも人形が大好きなのである。
隠された夢は、ピグマリオンコンプレックスをこじらせてしまった為に発生した狂った欲求。
自分自身の人形化である。
夢から本気になったのは、データとの一件で人形の体となる義体の構築が可能になったためだ。
あとは、自分を人形に移す技術のみになる。
自分の脳をそのまま移植したとしても、脳の生命活動を維持する装置や脳からの電気信号の入出力が必要で現在の科学では不可能に近い。
残る方法は自分の脳を電脳化して、外部に自分をデータとして出力しそれを義体に組み込む方法である。
電脳化とは、膨大な数のマイクロマシンを直接脳に注入することで、脳の神経細胞とマイクロマシンを結合させ、そこから発生する電気信号を利用して脳から外部の世界と直接接続できるシステムである。
雫が退院後に、元桑原義肢製作所を買収して合併した大国のSE(ScienceElectro)社が声をかけてきた。
今回の件に関して、黙秘を条件にSE社の親会社であるPH(Human power)社の入社が決まった。
PH社は、日本の会社ではなく大国の軍事開発の会社であった。しかも雫が望むマイクロマシンの研究している部署があり渡に船ですぐに就職した。
そして、研究室で大国の犯罪者に対して極秘裏に非合法な人体実験をしている最中であった。
「弁護士を呼べ! こんな話聞いてないぞ!」
全身を拘束具で抑えられた全裸の男が、体の様々な部位に電極をつけられてモニターさせられていた。
「工藤研究員、実験で作成したベータ021のマイクロマシンを血液に注入してくれ」
「わかりました。所長は、データの変化がプラス二以上になったら教えてください」
「プラス一ではなくニか? 被験者が保たないだろ?」
「殺人や強盗など多くの犯罪を犯してきて、先日死刑になったはずの人間ですから構わないでしょう」
「素晴らしい考えだな工藤研究員。大変な苦痛を伴うが発狂しないでくれよ」
「ぎゃあああああああぁぁ」
被験者の血液に流されたマイクロマシンが、脳に達して脳の神経細胞と結合する際の苦痛で叫び出す。
全身を痙攣させて暴れる姿を見ながら、雫は更に血液中にマイクロマシンを流していく。
「早く追いつかないと」
病室で最後に見たデータによって動いていた義体を思い出しながら実験を継続していく。
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