017 掃除屋
(ロイ視点)
私はジェームズロイ。
勿論、コードネームであって実名は既に捨てている。
大国の上部機関に所属する掃除屋だ。
極秘裏に動いているエイジェントが失敗した際の後始末を主に行う。
我が国の極秘情報が漏れていた疑いがあった。
その案件を調査したコードネームでジョンスミスと言われる男が目の前にいる。
「それで、データと言う人物に襲われて優秀なエイジェントを九人失って、無関係な民間人を自白剤で廃人にして、更に拉致した民間人を病院送りにしたと言うことであっているか?」
「違う! 桑原と言う民間人は、データの手先だ。データが助けに来たと言うことは、工藤と言う民間人も無関係ではない!」
「本部の結論から言うと、民間人とデータの接点は無いに等しい。データから提供された資料を元に開発していた民間人であって無関係と言う事になった。データは助けに来たわけではなく、自分を調べている君達を始末しに来ただけで、偶然工藤がいただけと言う判断だ」
「ば、馬鹿な! 私達が送った調査内容は見ていただけたのですか?」
「読ませてもらったが、サブリーダーが倒される直前に撮影したと思われるデータという人物の写真と、桑原の自白、桑原義肢製作所で制作されていた全身義体の資料だったな。順を追って説明しよう」
「ならば、何故そんな判断になるのですか?」
「桑原の自白だが、普通の民間会社なら普通にやっている情報の活用であって、その情報に我が国の開発内容が含まれていなかった」
「何を言っている! 我が国で開発中の技術が七個もあっただろ!」
「開発中だっただ。桑原が流した資料は完成した資料だ」
「開発中に盗んで、完成させたに違いないんだ! 七個も重なる訳がない!」
「それは、君が技術者ではないからその結論になっているだけだ。その時点で本国に相談すべきだったのだよ。
技術者サイドからの回答だと、開発中に技術を漏洩したとしても完成させるには、我が国でも数十年のシュミレーションが必要であり、この短期間で開発するには世界中のコンピュータを全て利用しない限りできない。よって我が国よりも先に開発したものであり情報漏洩は無かったと言う事だ」
「は!? じゃあ、世界中のコンピュータを利用し……」
「そんな事が出来る組織がある思うか?」
「……。」
「次に、桑原義肢製作所の全身義体の話だが大変な技術力で制作された素晴らしいものだが、実用化は不可能だ。いわゆる空想の産物だな」
「え? 工作室で工藤が動かしているのを見たぞ?」
「ハード的には素晴らしいが、実用とコストが全く合わない。この素晴らしい人間と全く変わらない腕の制御装置だけで車ぐらいの大きさになってしまう。全身を動かすとなると家程の大きさの制御装置が必要だ。制御を外部に出すとしても通信を遮断されたらゴミ同然で軍用には全く使えない。しかも製作にかかるコストが腕の一本で数億円で医療用としても実用性が全くない」
「は? ならばデータは何故?」
「金をドブに捨てる趣味の様な物だったのかもしれん。既にこの技術は色々な企業が特許を取得している。君達が持ってきた全身義体の資料は素晴らしい情報だったが使い物にならない。人類としては進歩したと言えるが、我が国にとっては今までの開発に費やした費用はゴミとなった訳だ」
「な……」
「最後にデータと言う人物の存在だが、上層部で判断が揉めている。理由は、存在しない人物だからだ」
「存在しない?」
「我が国の情報取得は、表でも裏でも世界の全てを知り尽くしている。現在、顔認証システムによって世界中の人物のデータを秘密裏に全て保管してあるが『データ』と言う人物の存在は皆無だ。世界中のカメラに推定20歳以上の人物が日本で一度も映っていなかった事になる。よってサブリーダーから送られてきた画像は君の捏造であり、部下は君が全て殺した自作自演だと本部は判断している。データが襲撃した時の建物のセキュリティデータにもそれらしい証拠もなく故意に消された形跡も見つかっている」
「は!? 馬鹿な!?」
「否定してもらって結構。桑原と同じ自白剤を使用して全てを喋ってもらうよ」
「し、知らないぞ! 嵌められた! 誰か裏にいるはずだ」
叫ぶスミスを無視して自白剤を投与した。
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