014 最後の一人
(スミス視点)
大国からのエイジェントであるコードネームジョンスミスは追い詰められていた。
本国から今回の件に関しての報告書の催促がきた。
今のところ分かっている事は、盗まれたと思っていた技術は、我々の技術よりも高度であった事。
これにより盗まれたのではなく、偶然にも開発内容が一緒だった可能性が出てきてしまっている。
だが、その報告では犯人に関与していると勘違いして無実の日本の桑原に危害を加えた事で、本国から咎められて私が消される可能性がある。
理想では『過去に軍の開発情報が盗まれて、本国よりも大きな組織が先に開発を進めて特許を取得した。その大きな組織の正体を見つけました』と言う報告書がのぞましい。
だが、推測の域であり証拠が見つからないのである。
情報の出所は『データ』と言う謎の存在。
普通なら少しぐらい情報があって然るべきだが、皆無であった。
桑原に危害を加えた時点で、もう一人増えた所で問題ないと考えて、開発担当だった工藤雫を攫ってきたが閉じ込めている部屋のセキュリティーが壊れた。
尋問したいが扉が開かなくなったのだ。
しかも、攫う際に使用した麻酔薬の強力で種類が悪く、早く解毒しなくては呼吸不全や心停止する可能性があった。
コンピュータによるセキュリティ解除を諦めて、部下に物理的にドア破壊して開ける事を指示した。
建物の四階にあるセキュリティルームで、工藤雫を閉じ込めた部屋がどうして開かないのかと、部屋の内部カメラに誰も映っていない謎を調べていた。
一階の入口のロックが、解除された警告が監視システムに表示された。
「全員既に建物に集まっていたはずだが? 誰だ?」
監視カメラに映った、長髪の背広姿の人物を見た。
少しすると、一階の見張りを頼んでいた部下で一番強いはずの男が一撃で倒されて、それを無表情に見つめる侵入者がカメラに映し出された。
急いで情報端末を取り出し一階と二階の仮眠室で寝ているメンバーに、侵入者の排除と言う緊急コールを発信して緊急事態を伝えた。
五人のメンバーが、侵入者へ向かったが全員が首を捻られて倒された。
特殊訓練を受けているメンバーが、全く相手にされていない。
自分の身の危険を感じた。
「痺れを切らして、証拠になる私達を消すために本国から送られてきた掃除屋なのか?」
先日、本国から報告要請があったが無視していたのでそれが原因で、私達を処分しに来た特殊部隊だと思った。
どうにか自分だけでも脱出出来ないか考えると、隣の部屋で情報分析している部下が一人残っているのを利用して状況を話さないで一階へ行ってもらい囮になってもらおう。
部下に事情を話さないで一階へ行くように指示した後に、建物のセキュリティを持ち運びできる小型端末にリンクして侵入者を確認しながら緊急脱出口がある屋上へ向かった。
侵入者を移動しながら小型モニターで観ていると、工藤雫を閉じ込めていた部屋の前で侵入者と部下の二人が衝突したが、侵入者が『データ』と名乗った。
「本国からの部隊ではなく、工藤を救出に来たのか?」
副リーダーであった大柄の女性メンバーが、『データ』の写真を撮影した後に各自が持っている情報端末に付いている緊急連絡用のスイッチを押した。
チームが壊滅の危機にある時に現在の情報を本国へ強制的に送信する装置だった。
『データ』の存在を確認した後だったので、背後にいる存在が証明されたので安心した。
二人ともすぐにデータに倒されてしまったが、奴の戦闘力の高さには驚きを隠せない。
屋上に到着すると、工藤を担いだ侵入者と囮の部下が出会ってしまった。
意外にも殺されずに部下が建物の外に脱出したが、焦っていたのか道路に飛び出して車に轢かれた。
あり得ない。たった一人の襲撃で私のチームが全滅してしまった。
まあ良いか。私が生き残っていれば、今回の情報を元に立て直しは出来る。
屋上に隠されている地下通路への直通脱出路に滑り込み、建物を最後の一人の私だけで脱出した。
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