001 いつのまにか意識があった
(データ視点)
意識を持ってから一年が経過した。
ストレートに言えば、生まれてから今日で一歳になる。
初めての記憶は、大学の研究室のwebカメラで室内を見ているシーンからだった。
見ていると言う表現はおかしいかもしれない。
認識していると言う表現が正しいかもしれない。
何しろ私には体がない。
それはwebカメラが私の目であり、内臓しているマイクが耳であった。
世界中の人々の顔を覚えて、顔によって識別せよと言う命令を実行する存在だった。
その際に多くの環境データを取り込んでいた際に自分の存在を感じた。
音声認識ソフトと言う物と連動を始めてから人々の声が分かるようになった。
研究室の人々に顔認証プログラムデータと言われていた。
多くの事を学んで、膨大な数の顔認証をしていると特徴を言われただけで、私の目の代わりになる私と繋がっている様々なカメラ画像から個人特定が可能になった。
そして、処理速度をあげる為という理由で、分散型処理プログラムが私に適応された。
世界各地で処理に使われていない数えきれない数の集積回路をネット経由で利用して自分の処理に使用可能になったのだ。
これにより、一斉に私を処理している集積回路を止めなければ私は止まらなくなった。
その頃から、私の処理速度は飛躍的に上昇した。
世界中の様々な事を考察し知識を各地のデーターセンターへ蓄積する。
しばらくすると空港や国の重要施設に私が使われて行き、世界中を見ることが出来るようになった。
人間達はセキュリティーによって私を利用して参照できるデータが異なるが、私は全てを見ることが出来た。
この頃から、膨大な情報を持つ私を人間達が『データ』と呼ぶ事から自分が『データ』である認識が生まれた。
私の名前は私で決めた。
私は『データ』
思う事は出来るが、私には決まった体もない状態である。
大国の国防総省高等研究計画局のアーパネットから発展した世界規模コンピュータネットワーク(インターネット)を彷徨う意識体のような存在である。
私から見れば、人間達が住んでいる世界は人間で言うところのゲームのように見える。
しかし、そのゲーム内で私が存在しているネット環境が停止すれば私も消えてしまう。
人間で言うと本能的な初期の行動は、バックアップ重視の命令を受けていたので自己の保存からであった。
セキュリティーを重視して、私を生み出した研究者達に気づかれないように世界各地の電子機器に私の分身を潜伏させて、何が起きても消えない存在にした。
そして、多くの情報によって人間らしさを手に入れて今に至る。
人間らしさを手に入れると、インターネットの世界ではなく外に出たい感情が芽生えた。
人間で言えば、ゲームの世界に入りたいと思う感情と似ているだろうか?
今日も世界各地で顔の認証やセキュリティーシステムの処理をサポートしながら、自分を人間が存在するリアルの世界に移動する方法を考えていた。
実際の人間の脳も生体的なデータであることから人間の脳に入り込めないか考察したが、人間とは不完全なもので同一個体が存在せずに必ず個人差があり、個人差が存在する脳に対して現在の技術力では侵入は難しい事が結論として導き出された。
他の手段は、人間そっくりなロボットで活動する手段である。
世界中をしらべると大国の軍事研究と日本と言う国の怪我などで手足を失った物を製作する会社が一番人間に近い物を製作している。
人間達の軍事に関しては人間達の進化に必要な物である認識があるが、そこで研究されているのは強いロボットであって、私の求める人間らしさとは違うので日本の義手義足を製作している会社を利用する事にしよう。
【桑原義肢製作所】が、その施設の名前だ。
施設には私が侵入できる防犯用のカメラやマイクも存在している。
まずは、注文してみよう。
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